第25話 西南戦争


 **熊本城強襲と植木・木葉の戦い**


 1887年2月19日、熊本鎮台が守る熊本城内で突如火災が発生した。烈風に煽られ、櫓は炎に包まれ、やがて天守閣も焼失してしまった。火の原因は今もって不明だが、城内には籠城1か月分の兵糧や薪炭が備蓄されていたため、甚大な被害が出た。何とか運び出せた弾薬を除き、全てが灰になったのだ。さらに、火は城下町にも飛び火し、東側、東南側の町を焼き尽くした。


 この混乱の中、独立大隊の先鋒が小川に達していた。学校党の首領、池辺吉十郎(羽生結弦)は、先鋒に訪れ、別府晋介(的場浩司)と面会し、熊本城攻略への協力を申し出た。しかし、別府の「鎮台兵がもし我々の行路を遮ろうとしたら、一蹴するのみ。特に方略はない」という言葉を聞いた池辺は、薩摩軍の気風に失望を覚えた。


 2月20日、独立大隊は川尻に到着し、その夜深く、鎮台の偵察隊が誤って独立大隊に発砲したことで、西南戦争の実戦が始まった。捕虜となった伍長の証言から、薩軍は熊本鎮台が籠城の態勢を整えていることを知る。


 21日の夜、薩軍の幹部が集まり、軍議を開いた。池上の提案する「熊本に抑えを置き、主力を東上する」策と、篠原国幹(滝藤賢一)が主張する「全軍による熊本城強襲」策が対立したが、最終的に強襲策が採用されることになった。


 2月21日夜半から22日の早暁にかけて、薩軍の大隊は熊本城を包囲するため、順次発進した。桐野の第四大隊と池上の第五大隊が正面攻撃を担当し、篠原の第一大隊、村田新八(山中崇『相棒』の芹沢刑事)の第二大隊、別府の加治木の大隊、永山弥一郎の第三大隊の一部が背面攻撃に向かった。さらに、熊本士族の池辺吉十郎率いる熊本隊が薩軍の各隊に合流し、教導役として参加した。


鎮台側は熊本城を中心に防備を固め、司令官の谷干城少将、参謀長の樺山資紀中佐をはじめ、後の大物軍人や政治家たちが名を連ねていた。戦力比は薩軍約14,000人に対し、鎮台軍は約4,000人という圧倒的な数であった。


強襲が始まると、両軍は激しくぶつかり合った。薩軍は高揚した士気で攻め込むが、鎮台側も持ち場を守るため必死の抵抗を見せた。火器の音が響き渡り、弾丸が飛び交う中、両軍の戦士たちは勇敢に戦った。


昼過ぎ、遅れて西郷隆盛が川尻から代継宮に到着し、戦局に変化をもたらすべく指揮を取る。彼の登場により、薩軍の士気はさらに高まり、熊本城の攻略が一層現実味を帯びてきた。


戦いは続き、激しい攻防が繰り広げられる中、薩軍は徐々に城の防備を崩していった。しかし、鎮台側も負けじと奮闘し、戦場は混沌と化していた。両軍の戦士たちはそれぞれの信念を胸に、運命を賭けた戦いを続けるのだった。


 **熊本城強襲と植木・木葉の戦い**


戦場の空気は緊張に満ちていた。銃声と爆音が響く中、薩軍の隊士たちは攻撃の合間に短い休息を取っていた。桐野の第四大隊の陣地で、隊士の一人、若い武士、田中(水上恒司『ブルーモーメント』『ブギウギ』)が息を整えながら仲間に言った。


「このまま進めば、城は必ず落とせるはずだ!」


「だが、鎮台の抵抗は熾烈だ」隣にいた古田(馬場徹『新宿野戦病院』『下町ロケット』)が冷静に答えた。「彼らもまた、誇り高い武士だ。甘く見てはならん」


そのとき、篠原国幹が彼らの元に駆け寄ってきた。「田中、古田!前線の状況が悪化している。後方から援護が必要だ。特に西側の砲台を抑えないと、我々の進撃は止まってしまう」


 田中は頷き、「分かった!すぐに行こう。仲間たちと共に力を合わせるんだ!」と声を張り上げる。


 その瞬間、激しい銃撃音が響き渡り、彼らの目の前に弾丸が土を掘り起こした。田中は驚いて身を屈め、「くそ!奴らの狙いが分かりやがった!」と叫んだ。


「気を付けろ!敵がこちらに近づいている!」古田が警戒の声を上げる。


その時、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。「田中、古田、ここにいたのか!」振り向くと、西郷隆盛(小栗旬)が現れた。彼の顔には決意が宿っていた。


「西郷殿!」田中が驚きつつも敬意を表し、駆け寄る。「このまま進めば、城を落とせると思いますが…」


「それを見極めるのが我々の仕事だ」西郷は険しい表情で答えた。「鎮台の兵力は侮れん。だが、我々は一つに団結しなければならん」


「どうやって?敵の数は多いし、資源も限られている!」古田が不安を隠せずに尋ねる。


「全軍一丸となり、最後の突撃をかけるのだ」西郷は力強く言った。「これが我々の未来を築くための戦いなのだ。恐れるな、仲間たちよ!」


 その言葉に、田中と古田の心に再び火が灯る。「よし、我々の力を信じよう!」田中が叫び、仲間たちの士気を高める。


 西郷は周囲の隊士たちに目を向け、「聞け、我々はただの兵士ではない。未来を築く者たちだ。今こそ立ち上がれ!熊本のために、我々の信念を示せ!」


 その声が響くと、隊士たちは一斉に応えた。「おお、我らが西郷殿のもとに!」士気が高まり、彼らは一つの大きな力となって突撃の準備を始めた。


「行くぞ、熊本城へ!」田中が叫び、全員が勇気を振り絞り、一歩を踏み出した。城の攻防は続くが、彼らの心には希望の光が見えていた。戦士たちが一つになり、運命を共にする瞬間が迫っていた。


### 熊本城攻撃


 22日夜明け前、熊本城攻撃の号砲が鳴り響いた。池上隊の2000名は千葉城の堡塁や京町口の埋門を攻撃するも、鎮台側の激しい砲撃に押し戻されてしまう。


「前に出ろ!我々の進撃を止めさせるな!」池上が叫ぶと、隊士たちは気を引き締めて前進する。しかし、堡塁の一塁も抜けぬまま、県庁付近に肉薄した桐野隊800名も撃退されてしまった。


「このままでは埒が明かない!」桐野(北村有起哉)は苛立ちを隠せず、仲間たちを振り返る。「篠原、村田、別府、全隊を集合させよう!」


 その時、城の西端藤崎台に目を向けると、薩軍の各隊が段山に集結している姿が見えた。「あそこが我々の橋頭保となる!」桐野は指示を出し、3000名が段山へ向かう。


### 段山の戦い


 薩軍は殺到したが、鎮台側も精鋭の歩兵第13連隊第三大隊(大隊長:小川又次大尉)が待ち構えていた。双方の緊張が高まる中、10時ごろに戦闘が始まった。


「火力を集中せよ!」小川(東根作寿英『金田一少年の事件簿』の『異人館村殺人事件』の犯人、神崎竜一役)は隊士たちに命じる。薩軍の猛攻に対し、鎮台側は持ちこたえたが、段山での戦闘は熾烈を極めた。


「突撃だ!」篠原が叫び、薩軍は前進する。しかし、弾雨の中で多くの隊士が倒れる。やがて、薩軍は段山を占拠し、そこから猛射を浴びせた。


「与倉中佐が狙撃された!」仲間の声が響き、兵士たちは動揺する。しかし、鎮台側は懸命に防御を続け、熊本城攻撃の初日は終息を迎える。


「皆、耐えろ!この日は必ず我々の勝利となる!」小川は気丈に叫ぶが、薩軍の攻撃は続いていた。


### 植木の遭遇戦


一方、乃木希典(大沢たかお)少佐は熊本籠城の命令を受け、17日に先発し、19日には熊本城に到着していた。22日、乃木は高瀬に到着し、白煙が上がるのを見て、60名の兵を率いて植木に向かう。


「何かが起きている。急げ!」乃木は進軍の合図を送り、植木の方向へ進んだ。


 午後3時、薩軍は村田三介・伊東直二(利重剛『金田一少年の事件簿』のいつき陽介役、『海のはじまり』のおじいちゃん役)の小隊を派遣した。しかし、午後7時に乃木隊と交戦が始まり、村田隊は撃退される。


「退路が危うい。後退するぞ!」乃木は指揮を取り、隊士たちに撤退を命じる。しかし、混乱が生じ、撤退戦は思うように進まなかった。


「岩切、軍旗を奪え!」伊東の指示に従い、兵士たちは必死に戦った。混乱の中、伊東隊は軍旗を分捕る。


「成功だ!だが、我々も疲弊している」村田は苦しみながらも勝利を実感する。


こうして、薩軍は勝利を収めたが、村田隊・伊東隊は追撃することなく撤収し、静寂が再び植木の地に訪れるのだった。


 この日、熊本城攻撃の初日は薩軍の思い描いていた戦いとは裏腹に、鎮台側の奮闘に苦しむ形となった。しかし、戦いはまだ終わっていなかった。次の日、さらなる激闘が待ち受けていることを彼らは知っていた。


 ### 西南戦争の伊藤博文


 西南戦争が激化する中、伊藤博文は内閣の会議室に集まった閣僚たちを前に、厳しい表情で発言した。


「我々の政権が今、脅威にさらされています。薩摩藩出身の士族たちが反乱を起こし、新政府に対する信頼を揺るがしています。これに対処するためには、強硬な手段も必要です」


閣僚たちの間にざわめきが広がった。中には、対話を重視すべきだと主張する者もいた。


「確かに、戦は避けられないかもしれません。しかし、敵との対話の余地を残しておくべきではありませんか?」と一人の大臣が口を挟む。


伊藤はその意見に鋭く反応した。「対話の余地があると考えるのは甘い。彼らは武装し、我々の権威を脅かしている。ここでの躊躇は、国の未来に暗い影を落とすことになる」


 会議が続く中、彼は今後の戦略を練ることに注力した。情報を集め、薩軍の動向を分析し、戦闘準備を整える必要があった。


### 戦場の報告


 数日後、戦況の報告が伊藤のもとに届いた。薩軍は熊本城を攻撃し、鎮台側の抵抗を強めているという。


「これは我々にとって重大な局面です」伊藤は周囲の目を引き締めた。「我々の防衛ラインを強化し、士族たちの士気を挫く必要があります」


彼はさらに、軍の指揮官たちに直接指示を出すことを決意した。戦略の見直しと指揮系統の整備が求められたからだ。


### 未来への展望


 戦争が長引く中、伊藤は戦後の国づくりについても考えを巡らせていた。もしこの戦争に勝利すれば、彼は新しい日本の基盤を築くための政策を進める準備ができていた。


「この戦争が終わったとき、我々はただ勝利を手にするだけではない」伊藤は静かに言った。「新たな国を作り、真の近代国家として立ち上がるのです」


彼の心には、未来への希望が燃えていた。混乱の中にあっても、国のために尽力する決意は揺るがなかった。


 伊藤博文は、この戦争の最中においても、冷静な判断力と明確なビジョンを持って国家を導くことに尽力した。彼の活動は、混乱した時代における政府の重要な支えとなり、明治維新の理想を実現するための礎を築いていくのであった。


 ### 西南戦争の中心である西郷隆盛


 西郷隆盛は、反乱の指導者として薩摩藩の士族たちをまとめ上げ、熊本城攻撃の計画を練っていた。彼の目には、未来を変える強い意志が宿っていた。


「皆の者、我々の戦はただの武力の衝突ではない。これは、新しい日本を築くための戦いである」彼は、集まった兵士たちを前に力強く訴えた。


「私たちは、自分たちの理想を実現するために戦っている。決して恐れることなく、我々の信じる道を進もう!」


### 薩軍の士気


 薩摩藩の士族たちは、西郷の言葉に心を打たれ、士気を高めた。彼らは、ただの反乱者ではなく、新しい国を作るための戦士であるという自覚を持ち始めていた。


「西郷様、我々はあなたについて行きます!」一人の若者が叫ぶと、周囲からも賛同の声が上がった。


西郷は微笑み、彼らの情熱を受け止めた。「その気持ちを大切にしてくれ。明日の戦いが、我々の未来を決めるのだ」


 ### 高瀬の戦い


**2月26日、早朝。**


 薩軍は高瀬での戦闘準備を整えていた。越山休蔵(加藤浩次)は自らの指揮の下、3個小隊を動員し、征討軍の進撃を阻止するために山部田と城の下に邀線を敷いた。彼の目は鋭く、敵の動きを見逃すまいと集中していた。


 一方、熊本隊の佐々友房(近藤芳正『踊る大捜査線』の第1話犯人役)は、岩切喜次郎と児玉強之助の指揮の下、寺田と立山の間に陣を構えて高瀬前進を阻止するために準備を整えた。彼らは敵が攻め入るその瞬間を待っていた。


**朝の静けさが破られる。**


 突如、薩軍の銃声が高瀬の空に響き渡った。越山の部隊は熊本隊の動きを捕捉し、瞬時に反応する。「前進せよ!敵を押し返すのだ!」越山の指揮のもと、薩軍は一斉に攻撃を開始した。


### 激闘の始まり


 熊本隊の部隊は、山鹿の野村忍介からの支援を受けつつ、必死に抵抗した。「耐えろ!我々の守りを崩させるな!」佐々は声を張り上げ、部隊を鼓舞した。激しい火線が交錯し、両軍は互いに譲らず、数時間にわたる戦闘が続いた。


 薩軍は越山の指揮のもと、巧妙な戦術で熊本隊の flankを狙った。丘陵を利用して敵の側面に回り込もうとしたが、熊本隊もまた冷静にそれを予見し、準備を整えていた。


「くそっ、意外と手強い相手だ」越山は歯噛みし、指揮を続けた。


### 戦局の変化


 昼過ぎ、戦闘が進む中で、薩軍の増援が到着する。高瀬川の橋梁を渡り、熊本隊に対する攻撃を強化する。これに対し、熊本隊は守備陣地を固め、持ちこたえる姿勢を崩さなかった。


 一方、征討軍の中では、三好重臣(志村東吾『はみだし刑事情熱系』工藤刑事役)が戦況を見極める。「敵がここまで持ちこたえるとは思わなかった。増援が必要だ。長谷川隊を送り込む」


### 終息と撤退


 午後遅く、戦闘が激化する中、両軍は激しい損害を被っていた。佐々と越山の間での小競り合いが続く中、時間が経過するにつれ、熊本隊は次第に劣勢に追い込まれていく。疲弊した兵士たちが、耐えきれない悲鳴を上げる。


 夜が迫り、ついに熊本隊は退却を決意する。「撤退するぞ!後退し、次の戦いに備えよう!」佐々は指揮を取り、部隊を整えた。


 薩軍はその撤退を追撃するが、敵が巧妙に山を利用し、混乱の中で脱出に成功した。


### 戦いの余韻


 高瀬の戦いは激闘の末に終わり、両軍は多くの犠牲を払った。敗北した熊本隊は、後方に引き揚げる中で、新たな戦略を練ることを誓った。越山は、敵が退却した後、傷ついた部隊を慰めながら勝利を喜んだ。


 しかし、薩軍の前途にはまだ多くの試練が待ち受けていた。熊本城の強固な防衛と、政府軍の増援が迫る中で、薩軍は次なる一手を考えなければならなかった。歴史の流れは、再び彼らの選択にかかっていた。

 

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