第30話 日本初の総理大臣

(1871年)7月14日、長州の木戸孝允、薩摩の西郷隆盛、土佐の板垣退助、肥前の大隈重信の4人による薩長土肥1人ずつの参議内閣をつくり、このとき初めて、廃藩置県の断行も可能そうな、内閣らしい内閣を実現することに成功した。そして、これ以降、太政官の議政官(立法府員)である参議がしばしば各省庁の長官である卿(行政府員)を兼務しつつ参議内閣を構成し、ほぼ毎朝皇居に集まって議論や決裁を行いつつ統治を行ない続けていた。ところが、欧米諸国の制度を視察・調査した影響および明治政府内外の諸事情から、参議たち自身が内閣(行政府)の主宰者が明白な内閣、いわば、リーダーがいて強力そうに見える内閣を志向するようになり、1885年(明治18年)12月22日の太政官達第69号「太政大臣左右大臣等ヲ廢シ内閣總理大臣等ヲ置ク」および内閣職権の制定により、首班指名された内閣総理大臣およびその者が任命した各国務大臣によって構成される首班指名制内閣に移行することとなった。その最初の内閣がこの第1次伊藤博文内閣である。


 伊藤博文は、この内閣発足直前まで参議内閣の参議かつ宮内卿であり、そのため、宮内大臣を兼任している。


 井上馨、山縣有朋、松方正義、大山巌、山田顕義ら5名も同様に直前の参議内閣の「卿」から「大臣」になっている。


 なお、この第1次伊藤博文内閣から逓信省が発足している。

 

**場面:ベルリン大学の教室**


 1882年3月、伊藤博文(柳葉敏郎)はヨーロッパの地で近代憲法の知識を吸収しようとしていた。彼の目は鋭く、任務の重さを感じながらも、目的意識が彼を突き動かしていた。教室には彼の随員たちが集まり、教授の話に耳を傾けている。


**ルドルフ・フォン・グナイストが講義を始める。**

「ドイツの法律は、国家の構造と国民の権利を明確に分けています。日本の国にとって、これがどれほど重要かを考えてください」


**伊藤は手元のノートにメモを取りながら、思考を巡らせる。**

(この知識が日本の近代化に繋がる。国の未来を担うためには、必ず実現しなければならない)


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**場面:ウィーン大学の廊下**


 数ヶ月後、伊藤はローレンツ・フォン・シュタイン教授のもとで、歴史法学や行政についての講義を受けていた。教授の言葉が彼の心に響く。


**フォン・シュタインが言う。**

「法律は単なる規則ではありません。それは国民の生活を形作るものです。国家の形は、国民の意志によって作られるべきです」


**伊藤は冷徹な表情で頷く。**

「我々の国も、時代の流れに逆らうことはできません。国民の意志を反映した憲法が必要です」


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### 帰国と決断


 帰国後、伊藤は新たな使命を背負い、内閣制度の創設と大日本帝国憲法の起草に取り組む。彼は冷静かつ理知的に、時には冷徹に事を進めていく。


**場面:内閣の会議室**


 会議室には政府の重鎮たちが集まっている。伊藤は議題を示し、冷静に状況を分析する。


**伊藤が口を開く。**

「我々は新しい憲法を必要としている。しかし、国内の反発や不安を無視することはできない。慎重に進めるべきです」


**井上馨が異論を唱える。**

「しかし、時間がありません。外圧も増しています。迅速に行動すべきです」


**伊藤は鋭い視線を向ける。**

「焦りは禁物です。急がば回れ。成功するためには、国民の理解を得ることが何より重要です」


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### 甲申政変の対応


1885年、朝鮮で甲申政変が発生。伊藤はすぐに清に派遣され、事後処理にあたる。


**場面:清の交渉テーブル**


李鴻章との交渉が始まる。伊藤は冷徹な態度で臨む。


**李鴻章が話し始める。**

「今回の事件は、我々にとっても痛手です。日本の影響をどう考えるつもりですか?」


**伊藤は冷静に返す。**

「日本は安定した体制を築くために関与しますが、決して干渉するつもりはありません。互いに協力することが国益につながると信じています。」


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### 未来を見据えて


 伊藤博文は、国内外の複雑な情勢を冷静に見極め、強い意志で進んでいく。彼の冷徹な判断は、日本の未来を切り開く力となる。


**場面:帰路の汽車内**


 彼は静かに窓の外を見つめながら、これからの道のりを考えていた。近代国家としての道を進むために、冷静さを保ち、決断を下す覚悟を固めていた。


**伊藤の内心の声。**

(我々の国が真の近代国家として立ち上がるために、私は何を成すべきか。冷徹さが時に必要なことを、痛感している)


 こうして、伊藤博文は新たな歴史の一ページを刻んでいく。

### 伊藤博文と初代内閣総理大臣就任の舞台裏


**場面:宮中の会議室**


木の温もりが感じられる広い会議室で、明治政府の重鎮たちが静まり返り、次の内閣総理大臣についての話し合いが続いていた。緊張感が漂う中、伊藤博文は自身の運命が決まる瞬間を待っていた。


**登場人物:**

- 伊藤博文

- 三条実美

- 井上馨

- 山縣有朋


---


**井上馨(小木茂光)が声を上げる。**

「これからの総理は、赤電報が読めなくては駄目だ。国際情勢を把握し、適切に対処するためには英語力が不可欠だと思う」


**山縣有朋(金子賢)が頷き、周囲を見回す。**

「その通りだ。そう考えると、伊藤君より他にはいないではないか」


 会議室の空気が一変する。三条実美(石原良純)は高貴な身分を持つが、英語が堪能でないことを知る者たちが多かった。沈黙が支配する中、伊藤は内心の緊張を感じながらも冷静さを保っていた。


**伊藤が静かに口を開く。**

「皆様の信頼に応えられるよう、尽力いたします。内閣の組織を整え、国の進むべき道を示していきたいと考えております」


**三条が不安を抱えながらも頷く。**

「我々は、今後の日本を背負う者を選ぶ責任がある。伊藤君がその役割を果たせると信じている」


**周囲の議員たちが頷き合う。**

「伊藤の手腕に期待する」


---


### 新しい時代の幕開け


こうして、伊藤博文は初代内閣総理大臣に就任することとなった。彼の英語力が決定的な要因であったことは、時代の変化を象徴する出来事でもあった。


伊藤はその後の内閣で数々の改革を推進し、日本の近代化を一手に担っていく。彼の選出は、国際社会との接触を強める一方、国内政治においても大きな影響を与えることになる。


**数ヶ月後、伊藤の執務室にて**


**伊藤が書類を整理しながら、随員に向かって言う。**

「我々はこれから新しい憲法を制定し、国民の権利を守る体制を作らねばならない。国外から学び、国内の意見を取り入れ、真に日本に合ったものを。」


**随員が頷きながら、疑問を口にする。**

「しかし、外国の制度をそのまま取り入れることにはリスクもあります。どのように適応させるつもりですか?」


**伊藤が微笑みながら応じる。**

「それこそが我々の課題だ。外国の良いところを学び、私たちの国に根付かせる。それが、真の近代化だと思う。」


### 結び


こうして、伊藤博文の指導のもと、日本は近代国家としての道を歩み始めた。彼の理念と行動は、新たな日本を築く礎となり、その影響は長い間残ることになる。伊藤の物語は、単なる個人の成功にとどまらず、国家の変革の象徴でもあった。

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