病弱聖女達は怒られる

 落下するエルダーグリフォンの下には2人が居る


「風蹄鎌鼬」

「はぁぁぁ!」


 剣に纏った状態で放つ風の斬撃

 全力の一振り

 2人のそれぞれの攻撃がタイミングと位置が噛み合いエルダーグリフォンを左右から両断する


「キィィィィ!!」


 落ちたエルダーグリフォンは大量の血を流し動かなくなる

 魔法を使っていた事で魔力が削れて纏う魔力の量も減っていたのだろう


「倒した!」


 2人が戦闘体勢を解いている

 2人も倒したという判断だろう

 急いで駆け寄る


「倒しましたね」

「あぁ、アルト、強くなったな」

「ちゃんと鍛えてますから」

「本当に助かりました」

「あぁ、アナスタシア最後助かった。あれは良い判断だ」

「正直俺じゃ落とせなかったですからね」

「今がチャンスだと思ったので、落とせて良かったです」

「あとは回収ですね」

「解体します」


 必要な素材を解体して回収してバックに詰め込む

 食料を入れていた分が空いているのでそこに詰める


「私達が持っていたバックも使うか」


 レオナルドさんはそう言ってバックに残りを詰め込んで持ち上げる


「他にやる事は?」

「後は帰って渡すだけです」

「ならすぐに帰るか。魔力の様子は?」

「まだ余裕あります」


 戦闘の時間は想定より短く済んだ

 これなら予定より早く帰れる

 アカリさんに素材を渡せれば大きく研究が進むだろう

 そうなれば早めに特効薬は作れる


 ……後は聖女の魔法について少し試して記すかな


 2日掛けて国に戻る

 道中の戦闘は2人が行い私とエルリカは荷物運びをしている

 楽々倒していく


「そういえば行きの時、木々吹っ飛ばしてましたがあれは一体?」

「あぁ、魔物が沢山居て面倒になって一撃で仕留めてた」

「……あれ風蹄では無いんですね」


 風蹄の威力を見てからアルトがやっているのかと思っていたが違ったようだ


「俺のじゃあそこまでの芸当は出来ません」

「そうなんだ……」

「急いでたしな」


 私達も遅くは無いペースで進んでいたがあの岩の時に追い付かれている事から早いペースであった


「にしても病の研究に魔物の素材ですか」

「魔素が使えるかもって言ってた」

「魔素ですか。確かに魔素は魔物からしか取れませんね」

「それで高濃度魔素なら可能性があるって言ってたから」

「その研究が成功すれば薬が?」

「あくまで可能性だけどね。それに魔素をマナに近づける実験がまだ時間かかるらしいし」

「そうですか。他にも何かあれば手伝います」


 道中問題無く国に戻れる

 そして私達は王の部屋に集められた

 集められる前に研究室に素材を送れた

 後は待つだけだ


「全員、説明を」

「研究に必要な高濃度魔素を持つエルダーグリフォンの討伐に行きました。私が動ける間に挑まないと研究が止まる可能性があったので」

「大体似たような理由だ」

「俺は事情を聞いた上でレオナルドさんについて行きました。処罰は受けます」

「メイドとして付き従いました」

「言い訳の1つも無しか、潔いな。高濃度魔素の話は聞いていたし研究が止まらないようにこちらで動いていた。事情が事情だ。こちらに話をして貰えれば協力はした」


 ……そうなんだ。それは安心、ただ急ぐ必要があったから聞いたとしても動いたかな


 どれだけ時間が掛かるか分からない研究だ

 なら早いうちから取り掛からないと助けられる命も助けられない


「危険度Aとなると編成を組む場合、時間がかかる。だから勝てる可能性のある少数メンバーで挑んだ。最も予定は2人で、アナスタシアとエルリカとは道中で遭遇したんだがな」

「私が動くのは止められると思い隠れて支度して向かいました」

「レオの言う通り危険度A編成となると騎士団長を含めた大規模編成になる。だがそれは必要だから行う事だ」


 危険度Aは難易度が高く当然敗北のリスクもある

 死者も出る、だからこそ大規模編成で挑む相手


「無論分かっている。我々には私情ではなく非情な程の冷静さが必要だ。普段なら私もそうした。だがそれでは間に合わないと踏んだのだ」

「気持ちは分かるがお前は騎士団長だ」

「いつでも辞める覚悟はある」

「お前なぁ」


 レオナルドさんは代わりが居ないと言われるほどの実力と実績がある

 問題行動を起こしてもそれでも今までの実績の方が多い


「そしてアナスタシア、お前は病人だ。当然止める。病人が動き回るのを良しとする程、俺の精神は図太くない」

「なので動きました。私がやれる数少ない事なので」


 王様は言葉を返さない

 返す言葉が無いのかもしれない


「……お前達暫く謹慎だ。エルリカ以外は2度目だな。お前らはやんちゃなのか」

「そうかもな」

「そうかもなじゃねぇ、アナスタシアは絶対に安静にしろお前は病人なんだから聖女の役目も暫く休め」

「緊急時は?」

「それはこちらで判断する。話は終わりだ」


 自室に戻る

 ベットに倒れ込む

 数日間の旅、疲労が溜まっている


 ……安静かぁ


 やりたい事はまだあるがまぁ2度目の謹慎だから徹底されるだろう


「謹慎でも私はメイドとして仕事は出来ます」

「出来るんだ」

「ここに来れるメイドは数が少ないので」

「成程」


 王様が信用するメイドの1人

 聖女、騎士団長、メイド、今回ばかりは頭を抱えているかもしれない

 私のせいだけど


「人の上に立つって大変なんだね」

「ここまで大変なのは案外珍しいかもしれません。レオナルドさんも今まではしっかり騎士団長としての役目を果たしてましたし勝手な行動も余りしませんでした」

「そうなんだ」


 それから暫く安静にする

 魔力の操作も辞めて休む

 病が出来る限り悪化しないように安静にする

 謹慎が解けた後、聖女の役目を果たせるように

 ただ謹慎が解ける前に病は私を蝕んだ

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