病弱聖女は研究機関に行く

 城から出る

 研究機関は城から離れた位置にある

 これまた大きな建物で病以外の研究もしている


「ここです」


 大きな建物の前に着く

 大きいだけで特別違う雰囲気等は無い

 ただ物凄く静か、人の声1つしない


「ここが」

「はい、ここで様々な研究が行われています」


 建物の中に入る

 中に入ると人の声がする

 扉が開いている部屋を軽く見ると白衣を着た人々が様々な道具を使って色々やっている

 多分実験だろう


「これもダメだ」

「あれはどうだ? まだやってないよな」

「この組み合わせもやってねぇな」

「だが成分的にこの組み合わせと似た結果になると思うぞ」

「あぁそうだな、クッソやり直しか」


 数人で話しながら文字を書いている

 通路には大量の道具を運んでいる人やメモをガン見しながら歩いている人が居る


 ……ここが研究機関


 壁には壁紙が貼られ走っては行けない、器具は壊れやすいから乱暴に扱わない破ったら吹き飛ばすと書かれている


 ……吹き飛ばす??


 最後の一文が物凄く気になる

 階段を登り2階に行き一番奥の部屋の前に着く

 病研究第6と書いてある


 ……第6って事は他にもあるのかな


 別の近くの扉を見ると第5と書いてあった

 それぞれが別の病気の研究をしているのだろうか


「ここです」


 エルリカが扉をノックする

 すると中から声がする


「どうぞ」


 扉を開いて中に入る

 足を踏み入れてくちゃと言う音がする

 地面を見ると紙の床だった

 床と見紛うほどに紙が地面に散らばっている


 ……何これ


 この紙1枚1枚に尋常ではない程文字が書き込まれている

 廊下から差し込む光で文字の一部が見える

 この成分では毒を消しきれない、これもダメだった、経過の途中で悪化したこれも駄目、粗方試したこれもダメ、現在の薬では太刀打ち出来ない、新たな成分が必要、これもあれもぜんぶダメ

 無数に書き込まれている


「あぁ、そこら辺の紙見ても面白い物は無いよ。ようこそ聖女様」


 女性が奥にある椅子に座っていた

 薄暗いが結構大きい部屋だと分かる

 机が幾つか置かれ実験の器具が置かれている


「私は失礼します」

「メイドの君も居ていいけど?」

「いえ、部外者が居ると話せない事もあるでしょう」

「……確かに」


 エルリカは部屋を出て扉を閉める

 暗い、部屋の電気が付いていないのだ


 ……暗い


「あぁ悪い、考え事をしていてな。そちらの壁に電源あるから付けてくれ」


 壁に触れて電源ボタンを探して着ける

 パッと電気が着く、一気に明るくなる

 薄暗い所がいきなり明るくなった事で眩しく感じて目を閉じる


「王様から話は聞いてるよ。君先天性細胞脆弱症の患者なんだろ」

「先天性細胞?」

「あぁ君の病の名前だよ。名前無いと判別の時に不便だからね。簡単に言えば衰弱して死ぬ病気」


 淡々と女性は語る

 最初は薄暗くて見えなかったが白衣が良く似合う美人な女性だ

 目に酷いクマがあり不健康な印象を受ける


「その研究の手伝いを」

「知っている。構わないよ。それで1つ聞きたいんだけど」

「なんですか?」

「何かいい案は持っているかい?」

「いい案ですか?」

「そう、この成分ならとかそういうの何でもいい」

「いえ、無いです」

「まぁそうか、無理を言って済まないな」

「ただ症状を抑える薬の成分は使えるんじゃ」

「着眼点は良い。確かにあの薬の成分は人工の物で症状を抑えられる。けれど特効薬になるほどの効果は見込めない」


 素人の私が考える程度の話はとっくに試しているだろう


「そうですよね」

「一応、今のところの研究結果はぜんぶ見せてあげよう。自由にやっていい」


 束ねられた紙を近くにある机の引き出しから抜き取って立ち上がり手渡してくる

 かなりの枚数の紙が束ねられているようで少し重い


「まぁ進行を遅らせる事は出来ても完治は出来ない。思いつく限りの材料は全て使ったけど成果は無かった」


 戻って椅子に座り直す


「成果が無かった?」

「そう、ここ数年一切の進展が無い。そのせいでここは私1人になったのだし」

「1人?」


 確かにここにはこの女性以外は誰も居ない

 他にも研究者が居てもおかしくないのに


「余りにも進展が無さすぎて予算はこの研究所で一番少ない。その上共に研究していた研究者は他の病気の研究に行ったよ。正直絶望的だ。病気の当事者の君に言うのも酷な話だが」

「そんな……」


 成果が出ていないとは王様から聞いていたがここまでとは思っていなかった

 これじゃ私が生きている間に特効薬を作るどころかほぼ何も進める事が出来ない

 いや、進めたとして私の死後この研究が停止する恐れもある


「まぁ実験器具とかあるから好きに使って良いから」

「貴方は?」

「……私は別で研究を続ける。ここで辞めたら私がここにいる意味が無くなるから」


 最後の言葉は聞き取れなかった


 ……使っていいなら


 彼女に何があったかは分からない

 だけど使っていいという許可を得た


「道具の説明書はありますか?」

「……あぁ、あるよ」


 1人でも見つけてやる

 彼女の話からして成果を出せばいい

 一歩でも進めれば予算が多く落ちる、そして研究者も増える

 数年成果が出ていない、だからと言って諦めるのはまだ早い

 貰った紙に書かれた文字を全部読む

 難しい単語もある、全部理解出来ない

 時間をかけて読む、分からない物は教えて貰う

 聞くと答えてくれる


「聖女様の仕事もあるのだろう?」

「1ヶ月謹慎なので」

「何をしたんだいそれ?」

「殴り込みに行きました」

「見た目に依らず過激だな」


 途中、昼食をエルリカが持ってきてくれて休憩中にも部屋にある別の資料を読み漁る


「成程、この成分とこの成分は毒、この組み合わせだと遅効性になると」

「毒について調べてるか?」

「はい、薬と毒は関係があるので」

「確かにそうだな。確かまだ調べていない成分があったな」


 自然と研究についての会話をして研究をする

 最初は失敗だらけで器具を破壊したがやり続けるうちに慣れてきた

 その過程で世間話をする事もあり名前も聞いた

 名前はアカリ・アルスーレトス

 研究者とは全く関係の無い貴族の家系だが訳があって研究者になったらしい

 詳しい理由ははぐらかされた

 一日中研究所で本を読み漁り研究を続ける

 時には泊まり込んで研究をする


「アナスタシア、連日の泊まり込みはするなと言った筈だ」

「すみません。もう少しで試したい事が終わるので」

「アナスタシア、臭うぞ」

「え……」

「研究に熱心なのは良いが行ってこい」

「は、はい」

「お預かりします」


 偶にエルリカに預けられ返される

 そんなこんなで2週間研究所で研究をしていた

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