病弱聖女はやりたい事をやる

 城に帰り王様に報告をする

 時間的にもう夜になっている

 王様にも騒動の一部は伝わっていたようで想定よりは反応が薄い

 それでもかなり驚き怒り呆れため息を付いていた


「まさか教会が繋がっていたとはな。にしても殴り込むかぁ」

「聖女の魔法を見せても尚異端者などと呼んだからな。仕方あるまい」

「一先ずレオ、アルト、アナスタシアは1ヶ月謹慎だ。犠牲無く化け物を討伐した事を加味してこれくらいで許そう。罰を与えねば間違いなく教会が口出してくるからな」

「教会へは?」

「彼等には説明を求める。重要な問題だからな」

「なら良い」

「分かりました」


 怒られてやり過ぎたと反省する

 途中で止まる訳にも行かず教会前を血の海にしていた


「アルトはもう下がれ」

「はい! 失礼します」


 アルトは部屋を出る

 私とレオナルドさんは残る

 そしてレオナルドさんに促されて椅子に座る


「丁度良い機会だ。アナスタシア何かやりたい事は無いか?」

「やりたい事? ……聖女の役目ですね」


 パッと思い付くのはそれくらい


「それ以外で」

「……特に思い付きませんね」


 やりたい事など無くただ役目を果たせればいいと思っていた

 聖女の本を読む以外の趣味も無い

 魔法を使えるようになる為の訓練ばかりしていて別の趣味を作る時間も無かった


 ……普通に外に出たいとかかな?


 今日外に出たがそうではなく適当にぶらついて見て回りたいと思う

 ただ聖女である以上護衛は連れて行く事になるだろう

 そうなると自由に歩けるか怪しい


「……なんでもいい。多少無理を言っても良いんだぞ」

「なんでもいい……あっ」


 1つ思いつく

 全く趣味とかそういう話では無いがやりたい事がある

 それも私に関する重要な物

 個人でやるには限界が早い

 ただ王様に頼み込めば出来るかもしれない

 これは成功すれば私以外にも利益がある物


「何か思い付いたか」

「趣味とかでは無いんですが」

「構わないぞ」

「なら研究をしたいです」

「研究?」

「何のだ? 聖女か?」

「確かにそれも気になります」


 ……そ、それも良いなぁ……って違う違う


 一瞬揺らぐが首を横に振る


「……私の病についてです」


 治っていない病、これの完治を目指す

 正直長生きする事に興味は無いが完治出来れば他の同じ症状の人々を救える

 そして長生き出来ればその分聖女の役目を果たせる

 もし私が生きている間に結果が出なくとも力を貸す事で研究が進むかもしれない


「病についてか」

「治る兆しの無い病、これの研究をしたいです」


 私の身体を使い研究を行う

 病に蝕まれている私の身体なら良い研究対象になれる


「ならば研究機関と協力するか?」

「良いんですか?」

「あぁ、その病は厄介だ。今動いてる研究者の力が必要だろう」

「ならお願いします」


 研究機関の協力があれば出来る事が増える


「分かった。レオ研究室の場所は知っているな」

「あぁ明日私が案内しよう」

「今日は疲れたろ。もう休むと良い」

「は、はい、失礼します」


 王の部屋を出て自室へ向かう

 すると部屋が綺麗にされていて掃除を終えたのか掃除道具を片付けているエルリカに遭遇する


「お帰りなさいませ」

「あっうん、ただいま」

「治療以外にも何かを?」

「あぁうん、ちょっとね……」


 目を泳がせる

 他人に言うのは少し遠慮したい内容


「お転婆ですね」

「あはは……そうかも?」


 お転婆どころでは済まない事をしている

 私の反応に首を傾げるが特に触れずに話題を変える


「お風呂に入りますか?」

「あっ、そうだね。結構動いたから汗をかいたかな」


 ……あっでも昼に入ってる……


 身体拭きは1日に一度あるかどうか程度であった


「では案内致します」


 浴室へ行き入る

 湯船に浸かりボーとする


 ……気持ち良い


「本来は1日に一度ですがこういう時は2度などもあります」

「そうなんだ」


 滅多に無いだろうがこういう時に入れるのは助かる


「明日はどのような用事が? 外出なさいますか?」

「明日は研究機関に行く予定」

「研究機関ですか。聖女様のお仕事で?」

「……聖女の役目は1ヶ月謹慎なので……」

「何をしたんですかそれ……まぁ私が何か言う話では無いのでスルーしますが研究機関にどのような用事で」

「病の研究」

「病ですか。そういえば聖女様は持病がありましたね」

「そう、その病の研究、私が生きている間に特効薬を作るのは無理だろうけど少しでも進められれば良いかなって」

「そうですか……」


 湯船から出て服を着て部屋に戻り部屋で軽く食事を取る

 疲れからか眠気が来る


 ……眠い


「明かりを消します」


 私が眠たそうにしているのに気付いて提案してくる

 コクコクと頷く


「おやすみなさいませ」


 明かりを消してそう言い残してエルリカは部屋を出る


「おやすみ~」


 私はベットの中で眠りにつく

 疲れていたがぐっすり寝た事で朝に起きれた

 朝起きるとコンコンと扉をノックする音がする


「どうぞ」

「失礼します。朝食の時間です」

「昨日の昼と同じ?」

「いえ、今日からは一緒に取るか個人で取るか選べます」

「うーん、どうしよ」


 王様達との食事は緊張する

 だけど今日はレオナルドさんに案内をして貰う事になってる


 ……レオナルドさんも居るだろうし行くべきかな


 行く時間などの擦り合わせが必要だろう


「あっ、レオナルド様から伝言を預かっています」

「伝言?」

「はい、昨日の件で呼ばれて案内が出来なそうだからメイドに任せると言っておりました」

「成程、ありがとう……なら個人で」

「わかりました。大量に食べますか?」

「私朝は特にそんなに食べれないから軽くで」

「分かりました」


 エルリカが部屋を出て暫くすると美味しそうな匂いと共に部屋に入ってくる

 そして机に置く

 軽食、あっさりとしていて食べやすい

 すぐに食べ切る


「美味しかった」

「それは良かったです」


 着替えなどの支度を済ませてエルリカの案内の元、研究機関へ向かう

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