病弱聖女の病が酷く悪化する

 それから数日後私は再び吐血する

 大量の血を吐く


「すぐに呼んできます」


 すぐにエルリカが医者を呼んでくる


 ……治るどころか悪化してる


 ずっと身体にヒールを掛けていたのに一切の効果が無い

 医者が来て色々と検査をする、現在の状況の確認だろうか

 検査の結果が分かり深刻な表情をしている


「……アナスタシアさん、貴女の病は急激に進行しています。このままでは……」


 途中で言葉が止まる

 本人に言うのを躊躇する内容なのだろう


「言って」


 私はその情報を知る必要がある

 物によってはこの後の行動を決める事になる


「……このままでは薬で抑えれたとしても後4ヶ月持ちません。状況によってはもっと短いかと、急激に進行した原因は調べても分かりませんでした」


 今まではしてなかったような精密検査をしていた

 それでも原因は分からないと言う


「そう……」


 余命宣告

 前の時は後2年は生きられると聞いていたのに半分以上も減っている

 4ヶ月、なら特効薬は間に合わない

 これで私の死は確定した

 明確な死の宣告

 別に余命宣告通りとは限らないが私の身体は自分で理解している

 そう長くは無いと


「これはあくまで安静にしていればの話です。もし聖女の役目を果たすのなら短くなると考えた方が良いです」

「成程……少し考えます」

「私は貴女の選択を尊重します」


 医者が立ち去る

 すぐに机に移動してペンを持つ

 聖女の魔法について私が分かる限りで書き記す


「何を?」


 入れ替わりで入ってきたエルリカは隣で私に聞いてくる


「聖女の魔法について私が分かってる範囲で書いてる」

「成程……何か必要な物があれば言ってください」

「……それなら準備して欲しい物がある」


 エルダーグリフォン討伐に向かう為に必要な荷物の用意をし始める

 エルリカは何も言わずに用意してくれる


「私も貴女の選択を尊重します」

「ありがと」


 時間を掛けて準備を整える

 数日分の食料などを用意する

 南の山の頂上まで時間が掛かる、移動中の分の食料を用意しないと挑む前に詰む

 レオナルドさんや王様が時々様子を見に来る


「そう言えば研究には高濃度魔素の魔物が必要だったな?」

「アカリさんがそう言ってました」

「そうか……」


 レオナルドさんは何かを考えているようだ

 レオナルドさんは国の戦力の要、高濃度魔素を持つ魔物の討伐に向かうのは難しいだろう


「どうかしました?」

「いや、ちょっと考えがあってな」

「そうですか」


 それから1日後の真夜中

 私は魔導具を装着して大荷物を持つ

 大荷物だが無重の腕輪の効果で全く重くない


 ……この魔導具、凄い便利、手に入って良かった


「私も同行します」

「危険だよ?」

「承知の上です」

「隠匿のマント1つだけだし……」

「私隠れるの得意です」


 エルリカに引く気がないのが分かり連れていく

 私としても戦力が多いのは助かる。今回は強い魔物との戦闘、本当ならもっと人数が欲しい

 夜中にバレないように城を抜け出して南の山に向かう

 エルリカは本人の言う通り隠れるのが上手かった

 音や匂い、気配、声などで聞いて人が接近しているのに気付くとすぐに隠れる


「音がします」

「わかった」


 隠匿のマントの効果を使って自分の姿を隠す


 ……暗殺者??


 動きがメイドじゃない

 暗殺者とかそっち系の人の動きをしている

 素早く移動して建物や木の上に静かに登って遠くを確認して安全を確保する


「周囲に魔物は居ません」

「凄い動きだね」

「私戦闘技術を仕込まれていますので」

「そうなんだ」


 山に向かう、一先ず視界が遮れる場所に移動する

 ここからは他の人にバレないように動かないとならない

 まぁかなり問題になるがこれは私が後世に残せる数少ない物

 そのチャンスを逃したら私は後悔して死ぬ


「エルダーグリフォンは頂上に居るんですよね?」

「そうだよ」

「となると時間かかりますね」

「そうだね。国から頂上まで急げば2日、慎重に行くと5日って書いてあった」


 今回は4日間掛けて向かう

 急ぎたいが焦ってはならない、だから少し慎重に行く


 ……アカリさんの言う通り焦らない


「荷物は1人で2週間分なら用意出来ましたが2人なのでギリギリですね」

「ギリギリだね。少し山登ってから休む?」

「そうしましょう。体力が無い状態で魔物との接敵が恐ろしいですから」

「そうだね」


 魔物に遭遇してもすぐに倒せる

 支援系魔法で強化されたエルリカは強く並の魔物では相手にならない

 戦闘音で集まってきた魔物をジャッジメントソードで殲滅する


「作戦終了です」

「強いね」

「聖女様の支援魔法が優秀なので」

「元のスペックが影響するから凄い動きが出来るのは元が凄いから」

「お褒めに預かり光栄です」


 魔物が少ないところで休憩を取る

 私が仮眠を取る間にエルリカが警戒をする

 優秀なのはこの旅で分かっている、だから安心して眠りにつく


「交代」


 仮眠から目覚めて警戒しているエルリカの元へ行く


「いえ、大丈夫です」

「私は十分休んだから休んで……この先は何があるか分からないから」


 この山は頂上に近付くほど危険になっていく

 休めるうちに休まないと必要な時に力を出し切れない


「何かあればすぐに言ってください」


 交代する

 魔物避けの道具を使っている事もあって魔物が近付いてこない


 ……今日は吐血無し、体調も悪くなってる感覚は無い


「暇だし本読も」


 持ってきていた本を読む

 聖女の伝説について書いてある本

 私が昔からずっと読んでいた物だ

 聖女の伝説は多くある

 1人ではなく歴代聖女様方の伝説だ

 中には真実か分からない作り話のような物もある

 災いの主と呼ばれた存在を聖女と護衛騎士が死闘の末に撃破したという伝説

 魔王と呼ばれる存在を打ち倒した伝説

 国を飲み込みそうなほどの土砂崩れを防御魔法で防いだという伝説

 未知の伝染病が民を襲った時、突然現れた聖女様が天に手を翳すと民を苦しめていた伝染病が消えた伝説

 など

 沢山ある

 真実かは分からないし全てが真実とは思わないが聖女様は凄いのだ


「アナスタシア様、食事の準備が出来ました」


 エルリカが作った食事を取る


「美味しい」

「料理は工夫です」


 材料が限られているはずなのに上手くエルリカは調理をする

 メイドとしても優秀なのだ

 食事を終えて移動を開始する

 道中で遭遇した魔物を倒して進む

 頂上はまだ遠い


「騒ぎになってるよね?」

「一大事ですから総出で捜索しているかと」

「怒られるよね?」

「間違いなく、正直私は首が飛ぶと思います」

「それは自業自得」

「見逃しても首が飛んだと思いますよ」

「う……ま、まぁエルリカは仕事出来るし」


 メイドの仕事も料理も戦闘も出来る

 万能、ここまで技術の高い人なら職には困らないだろう


「仕事ではなくこの世からの退職です」

「この世から……わ、私が何とかそれは止めるから」


 そんな犠牲を払うつもりは無い

 戻った後、必死に言えば阻止出来るかもしれない

 2人で進んでいく

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