病弱聖女と護衛騎士とメイドは危険度A、エルダーグリフォンに挑む

「前衛3、後衛1ですか?」

「いや、エルリカはアナスタシアの所に居ろ。何があっても対応出来るように」


 私が狙われた時、私1人では対応出来るか分からない

 エルリカが近くに待機してくれるなら助かる


「わかりました。御守りします」

「基本私達が削る。状況次第ではエルリカは個人の判断で動け」

「お任せを」

「私もジャッジメントソードで援護します」


 多用しなければ魔力消費が少ない便利な攻撃魔法

 この2人は優秀で攻撃はヒール頼りでは行かずしっかり躱すだろう

 そう考えたらヒールは多分そんなに使う事は無いので魔力を別に回せる


「良いが魔力を使い過ぎるなよ」

「この魔法なら魔力消費は少ないので大丈夫です」

「空中に飛ばれたらどうしますか?」


 エルダーグリフォンの一番の問題点

 奴は自慢の翼で飛行する

 私の計画では飛んだら光の罪剣で追い込んで炎聖女の弓で翼を撃ち抜くか早めに弓で撃ち抜いて飛ばさない予定だった


「その前に叩く予定だが飛ばれたらアルト、お前が落とせ」

「分かりました」

「空中の魔物に攻撃出来るんですか?」


 距離のある魔法は詠唱が必要になると化け物戦で言っていた

 だから空中の魔物に対して攻撃が出来るの?と思う

 ただ言うのだから何か方法があるのだろう


「それが最近出来るようになりました」


 ふふんとアルトが自慢げに言う

 アルト達も日々鍛えている

 彼らもまた前と同じとは限らないのだ


「先程の岩を砕いた風魔法、風蹄はアルトの魔法だ」

「あの魔法が……」


 大きな岩を砕く程の威力の風魔法

 確かにあれならエルダーグリフォンに通じる可能性は充分にある


「凄いですね」

「しっかりずっと鍛えてましたから」

「それで初手はどうしますか? 初手は不意打ちを仕掛けますか?」

「その件、先程少し考えたがアナスタシアの策を真似しようと思う」

「私の策ですか? となると隠匿のマントで接近ですね」


 私の策は不意打ちで仕留める為の隠匿のマントで隠れての聖女の洗礼


「それを私が行って翼を切り落とす。落とせずとも片翼に傷があれば飛びづらくなるだろう」


 エルダーグリフォンの翼は一対、片方でもどうにか出来れば飛ばせずに行ける可能性が高い

 盗賊団のリーダーの大男でも隠せたのだからレオナルドさんも問題無く行けるだろう

 隠匿のマントは効果の使用時に魔力を使う、私は不意打ちをしないなら戦闘中に使う予定は無い

 便利だが魔力を使うのが痛い


「成程、それなら確かに」

「その後に俺が突っ込んで戦闘開始と」

「そうだ」

「分かりました」

「それまでは少し離れた岩辺りで隠れていろ。気取られたら失敗する」

「はい」

「わかりました」


 作戦会議を終えて食事を終える

 男女別れて支度を済ませて警戒をする

 警戒は1人ずつ行う、そのお陰で多くの睡眠時間が取れる


「交代です」

「分かった」


 私の次はアルトの番だった


「明日頑張りましょう」

「頑張ろう」


 それだけ言って私は朝まで眠りにつく

 朝に目を覚ますと3人は起きていて既に準備運動をしていた


「起きたか」

「食事も出来ています」


 食事を取って準備を終えて頂上に向かう

 私とエルリカ、アルトは頂上より少し手前の岩に隠れる

 予め支援系魔法を掛けておく

 レオナルドさんが隠匿のマントの効果を使い姿を消してエルダーグリフォンに接近する

 固唾を呑んで見守る

 この行動で大きく変わる


「大丈夫です」


 心配そうに見ている私をアルトが落ち着かせる


「レオナルドさんは最強の騎士ですから」

「……そうだね」


 ……私は私に集中しないと、私が失敗する訳には行かない


 レオナルドさんを心配するよりも私が動けるかの方が問題

 深呼吸をして緊張を解す


「キィィィィ!」


 甲高い声、エルダーグリフォンの声だ

 叫んでいる

 この声は戦闘に入った事を意味する


「行きます」


 アルトが岩から飛び出して突っ込んでいく

 今の声が戦闘の合図だ、私達も岩から出て姿を確認する

 グリフォンは猛禽類の上半身、獅子の下半身を持つ

 巨大な魔物、片目に古傷を負っている

 そして翼に大きな切り傷が出来ている、この傷は新しい傷、鮮血が溢れている


 ……作戦成功!


 状況からしてレオナルドさんが切り裂いたのだろう

 切り落とせなかったようだが傷は浅くない

 これなら飛ぶ事は難しい


「吹き荒れろ風蹄!」


 アルトが風魔法を使う

 剣に風を纏い突きを繰り出す事で斬撃のように風が飛ぶ


 ……成程、そういう魔法なんだ


 恐らく突きで繰り出す以外の扱い方も出来る汎用性の高い魔法

 エルダーグリフォンは風蹄を避ける

 2人は左右から攻める、前足や翼による攻撃は素早く回避して反撃を繰り出す

 彼らは上手い連携を繰り広げる


「攻撃しない方がいいかな」

「そうですね。最悪邪魔になる可能性があります」


 連携慣れしていない私が出しゃばって邪魔をしたら意味が無い

 私が倒す為に来ていたが2人が合流した今は勝つ為の最善を取る


 ……魔力温存しておこう


「私は拒絶する、悪しき者を、恐ろしき敵を、私は守護する、正しき者を、勇敢なる仲間を」


 詠唱していつでも使えるように魔法を止めておく


「聖女たる私が希う、かの者達に癒しを、かの者達に祈りを、かの者達に希望を! 癒しは降り注ぐ」


 治癒と防御魔法を詠唱しておく

 そして状況を伺う、何があってもすぐに対応出来るように用意する

 優勢な状況で戦いが進んでいく

 攻撃は上手く躱して攻撃をしっかり入れる


「下手に食らうなよ」

「分かってます。来ます!」


 回避が難しく危なければしっかりと剣で受けて凌ぐ


「くっ」


 一撃が重いようでアルトは少し体勢を崩す

 すぐにレオナルドさんがエルダーグリフォンに攻撃を入れてその隙をカバーする


「助かります」


 互いの邪魔にならないように互いをカバーし合えるように注意しながら連携をしている

 私は偶に2人に余裕を持ってヒールを掛けて距離を保ちながら様子を見る

 少しずつエルダーグリフォンに傷が増えていく

 身体の周りに纏っている高濃度魔素が頑丈な鎧のように攻撃を阻み削ろうにも削れていないようだ

 今のところ飛ぶ様子は無い

 これなら時間は掛かるが安定して削り切れるだろう


 ……まだ気は抜けない


 飛行と同じくらい厄介な物がある

 魔法だ、エルダーグリフォンも強力な魔法を使えるのだ

 戦い続けていると魔力の流れが変わるのが分かる

 これは魔法の発動の予兆だ


 ……魔法! 不味い


 防御魔法が使えるように構えておく


「魔法か下がるぞ!」

「はい!」


 前衛2人も気付いたようで大きく距離を取り魔法に備える

 エルダーグリフォンは風魔法を操る魔物

 魔法は風魔法なのは分かったが調べた限りじゃ使う魔法の種類までは分からなかった

 竜巻を起こすだとか全てを薙ぎ払う突風を起こすとか色々と書いてあったが正確な事が分からない


 ……何が来る


「キィィィィ!」


 エルダーグリフォンが叫ぶ

 叫んだ瞬間、周囲に風が発生しエルダーグリフォンを中心に竜巻が巻き起こる

 周囲の石や岩を巻き込み切り刻む


 ……強い魔法、これが危険度A


 下手に突っ込めば身体が切り刻まれるのは容易に想像がつく


「あの竜巻は攻防備えてますね。どう攻めれば……」


 レオナルドさんが竜巻に突っ込み大きく剣を振り上げる

 あれは化け物を切り裂いた一撃だ

 斬撃が荒々しい竜巻を断ち切る


 ……わぁお


 化け物戦で見た事があるとは言え相変わらずとんでもない威力の一撃

 これが魔法では無いのだから驚き

 斬撃で切られた事で竜巻が消える


「吹き荒れろ風蹄!」


 消えた瞬間に待っていたかのようにアルトが風蹄を叩き込む

 竜巻で視界が遮られていたからか命中し蹌踉めく

 再び魔法を発動する前にレオナルドさんが一撃を叩き込む

 大きく切り傷が出来る

 翼を広げて後ろに飛び退き風を巻き起こす


 ……本気を出してきた


 魔法を使って2人に襲いかかる

 エルダーグリフォンが全力で攻撃を仕掛けてくる

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