病弱聖女は総力戦に参加する

 それから2日後の朝、魔物が動き出した報告があった

 一般人は既に避難している

 戦えるメンバーは既に待機している

 兵士や騎士、中にはシスター、聖騎士も居る

 総力戦

 私は後方で魔法の準備をしている人達の中に紛れる

 城壁の上で待機する


「命を捧ぐ者に聖女は力を貸す戦聖女の声ベル・フェルース


 東側に待機している部隊に支援系魔法を掛けた後、西側に行き待機していた部隊に支援系魔法を使い全員を強化する


「来るぞ!」


 前線に居た1人が叫ぶ

 こちらまでは声は聞こえていないが前衛部隊が動き気付く


「魔法準備!」


 後衛部隊が魔法を詠唱して準備をする

 魔物が走ってきている

 東の森と西の平原の2方向から

 だが迎え撃つ準備は整っている、東の森に行った時にベルラン騎士団長が別働隊が居ると怪しんでいた

 その後の調査で西側にも居ると判明していた

 そして西側の方が多いと考えられている、レオナルドさんも西側担当

 西は私が担当、東はヒナが担当している

 ヒナは優秀、心配は無い


 魔物が走ってきてそして罠が設置されているところを踏む

 炎が巻き上がり魔物を焼き尽くす、魔法で作られた罠

 他の罠も起動して魔物に襲い掛かる


 ……少しは数を減らせた


 罠で数十体は倒せているように見える

 道具で作った罠も足止めが出来ている

 だが魔物はどんどん後ろから突っ込んで来ている


「魔法部隊放て!」


 魔法部隊を率いる人から指示が来る

 私も混じって魔法を放つ

 これで前衛部隊が戦う前に更に削る

 倒せずとも負傷させれば前衛部隊が楽になる


「光よ聖女の名を持って命じる、剣となりて悪しき者を打て! 光の罪剣ジャッジメントソード


 様々な魔法が魔物目掛けて飛んでいく

 強化された魔法が魔物を消し飛ばす

 光の剣で魔物を削る

 数を減らしているとレオナルドさんが剣を全力で振るう

 数体纏めて胴体を両断する


「行くぞ!」

「うぉぉぉぉ!!」


 前衛部隊がレオナルドさんに続いて魔物の群れに突っ込んでいく


 ……始まった


 真正面戦闘が始まった

 後衛部隊がやるのは後方の魔物の殲滅

 乱戦になっているところに魔法を打てば味方を巻き込みかねない

 前衛部隊にヒールを掛け無数の光の剣を飛ばす


「でけぇのが来るぞ」

「なんだあれ」

「ゴーレムだ! どこに潜んでやがった」

「ただのゴーレムじゃねぇな」


 ……アレ強いよね


「遠いが魔法部隊」

「私がやります」

「何?」

「私ならあれを撃ち抜ける」


 指示を遮る

 魔法部隊には他の魔物を倒して貰う

 1体に集中したら前衛部隊の援護が出来ない

 ゴーレムと呼ばれていた魔物はこちらに向かってきている

 前衛部隊が戦っている地点とはまだ距離がある、今のうちに仕留める


「あの距離だぞ!?」

「何をする気だ」

「聖女たる私が魔の者を撃つ」


 詠唱をする

 私の居る城壁から距離はある、だけどこの矢は届く


「一矢よ駆け抜けろ炎聖女の弓リリス・フルールド


 現れた光の弓を引く

 矢が現れる、前回の飛行する魔物と違いこちらに向かって真っ直ぐ突っ込んで来ていて尚且つ的が大きい


 ……的が大きければ狙いやすい


 光の矢が高速で飛ぶ

 真っ直ぐゴーレムに向かう

 ゴーレムは気付き手を前に出す

 光の矢はゴーレムの手を貫通して中心を貫く


 ……よし


 大きな穴が空いた中心部から亀裂が入る

 ゴーレムはまだ動いている、足元の魔物を蹴散らしながら進む

 どんどん亀裂が広がっていき動きが鈍くなっていき身体が崩壊する


「おぉ! 一撃」

「マジかよ」

「おぉ!」


 ゴーレムが倒された事で士気が上がる

 ゴーレムが蹴散らした分、魔物が減り崩壊した身体に巻き込まれる魔物も居る

 もう少し引きつければもっと魔物を倒してくれただろうがただ突っ込んでくるだけとは限らない

 近付いてきたら巨石を投げてくるなんて事も考えられるから近付く前に仕留めた


 後衛部隊に紛れて魔法を放つ

 ヒールも掛けて援護をする

 順調に削れているようだ

 レオナルドさんが全力で剣を振るい切り裂いていく

 はっきりとは姿が見えないがレオナルドさんの隣で素早く魔物を切り裂いている騎士が居る

 聖騎士だ

 その近くで魔物を蹴り飛ばしてる人も居る

 他の人は剣や槍などの武器を使っているのに1人だけ格闘してる


 ……あの2人もしかして


 味方としてかなり頼もしい2人

 この調子なら削り切れる、有利に動けている

 負傷者もヒールで治療している為戦力の減りも少ない

 数の差はあるがそれを質で補え切れている


 ……東側が分からない


 東側の戦線がどうなっているか分からない

 こちらは有利に動いているがあちらが崩れたら不味い


 ……気になるけどこっちに集中


 無数の光の剣を魔物に飛ばして刺し貫く

 魔物の数が減ってきた

 西側はもう増えないようだ


「あと少しだ!」

「とっとと終わらせるぞ!」

「打て打て!」


 士気が上がりテンションも上がり後衛部隊が魔法を撃ちまくり削っていく

 あと少しで倒し切れるとなったタイミングで後ろから爆発音がする

 振り返る


「爆発!?」

「後ろ、東側か」

「なんの音だ?」


 この音は東側の戦線からだ

 1度だけじゃない、2度、3度と爆発音がする


 ……魔法?


「魔法じゃねぇのか?」

「とんでもない魔法だが誰が……」


 それから10分後、西側の魔物を倒し切る

 前衛部隊が残党が居ないか確認している間に私は走って移動する

 東側で何かあったと考えられる

 杞憂で済めばいいが戦線が崩壊すれば城壁を破壊され侵入される


 ~~~


 丁度移動を開始したタイミングで前衛部隊にも動きがあった


「残党はいないな」


 魔物の残党を確認するが居ない

 しっかり倒し切ったようだ


「そのようだな」

「終わりかぁ?」

「いや、まだ東側の戦線がある。あちらは終わってないようだ」

「あぁ、爆発音が聞こえていたな。遠い……戦線か」


 前衛部隊にも聞こえた程の轟音

 後ろ側、城壁内か東側の戦線

 城壁内だとしたら侵入されたかこのタイミングでのテロ


「ちっ、何、手こずっているんだ?」

「……嫌な予感がする。余裕ある者は付いてこい!」


 レオナルドさんの指示の元、前衛部隊の一部も東側に向かう

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