病弱聖女は実験を任せて戦いの準備を手伝う

 モルモットに薬を打ってから数時間後、初期効果が現れる


「効果あり、症状を抑え込めてる。ここから経過を確認する」

「経過はどのくらいですか?」

「一先ず1週間くらいかな。抑え込んだ症状が薬が効果が切れた後にどうなるか。ここからは私が担当しよう。君にはやる事がある」


 アカリさんの言う通り私にはやる事がある

 魔物の襲撃の迎撃の協力と援護

 聖女の魔法が使える私なら力になれる

 研究はアカリさんに任せられる


「お願いします」

「行ってらっしゃい」

「エルリカ行くよ」

「はい」


 部屋を出てエルリカと一緒に城に戻る

 実験中に仮眠はしたから動ける

 アルトは迎撃の準備に出ているから居るとしたらレオナルドさん

 城の中でレオナルドさんを探す


 ……居ない


 レオナルドさんは見つからない

 護衛なしで外に出るのは辞めた方がいいだろう

 だから困る、勝手に行くのもありだが怒られるのは目に見えている

 アルトの方も探しているが見つからないのでアルトは恐らく今日も準備に取り掛かっている


「レオナルドさんから何か聞いてる?」

「いえ、何も聞いておりません」

「だよね……どうしよう」

「護衛なら私が居れば一応は大丈夫だと思います。すぐに合流するならですが」

「どっちかとは合流する予定」

「では向かいましょう」


 支度をしてから城門付近に向かう

 街中で忙しそうに人々が動いている


「命を捧ぐ者に聖女は力を貸す戦聖女の声ベル・フェルース


 彼等に支援系魔法を掛ける

 昨日は戦闘に参加する予定だった為、魔力温存で使わなかった

 帰りは戦闘でかなり魔力を使っていたから

 魔力は回復している、だから遠慮無く使う

 一度使えば長時間強化出来る


「うおっ、なんだなんだ」

「力が増した」

「支援魔法? 誰が」

「この人数に掛けたんですか?」

「ふふん、聖女の支援系魔法は対象指定の範囲魔法だから人数は関係無いよ」

「範囲魔法ですか」


 支援系の魔法は本来対象とした何人かに掛ける魔法

 この魔法は発動時一定範囲に居る人物の中で味方か対象とした人物に掛けられる

 今回は味方、その為全員に魔法が掛かった

 取り敢えず掛かっぱしから支援系魔法を掛けながらアルトかレオナルドさんを探す

 疲れている人々にはヒールを掛ける


「おぉなんかすげぇ動ける」

「すげぇ速い」

「これならもっと動けるぞ!」

「おぉ体力が回復したぁ!」

「休憩は終わりだぁ! 行くぞ!」


 ドタバタと走り回っている

 先程よりも早い速度で皆が動き作業をしていく


「これはやり過ぎでは?」

「そうかな? これなら昨日も使えばよかったかな」

「大騒ぎになると思います」

「まぁ今は急ぐべきだから」


 支援系魔法を掛けているとアルトを見つける


「アナスタシア様」


 支援系魔法を掛けられた事で私が来たのが分かったのか作業を止めて近付いてくる

 騎士団長達が言っていたが感覚からして普通のとは違うのだろう


「どうしたんですか?」

「手伝いに、まぁ魔物が出てこないなら魔法を掛けるだけだけど、力仕事は出来なくて」

「充分ですよ。これなら作業が捗ります。護衛は……」


 私の隣のエルリカを見て頷く


「作業を辞めて護衛をします。聖女様の魔法があれば1人抜けても大丈夫でしょうし」

「いや、邪魔にならない近くに居るから作業してていいよ。作業者にヒール掛ける」

「いやでも」

「合流するならという話でしたよね?」

「忙しいとはいえ騎士や兵士が居る前で襲ってくる人は居ないと思う。それに騎士団長も居る」


 ちらっと見るとルスティ騎士団長が居た

 指示を出している

 騎士団長は実力者、他の騎士達も支援系魔法で強化されている

 何かあっても問題は無い


「そうですかね」

「警戒はしておきます」


 そう言って作業に戻っていく

 作業の邪魔にならない場所へ行き座る

 エルリカは隣に立ち周囲の警戒をしている

 疲れている人にはヒールを掛け順調に準備は整っていっている

 これなら間に合う


「対空兵器用意完了しました」


 兵士の1人が報告をしていた

 その声が聞こえる


「対空兵器?」

「魔物には飛行する存在が居ます」

「居るね」


 昨日倒した魔物の中に飛行する魔物が居た

 あれらの事だろう

 厄介だった、聖女の魔法が無ければもっと時間掛かっていただろう


「並の魔法では届かない距離を飛行して攻撃をしてくる厄介な魔物です。ですから設置型の大型のボウガンで狙うんです」

「なるほど、確かに必要、今までは無かったの?」

「いえ、元々ありました。ただ今回は規模を考えて増やしているのでしょう」

「そう言えば準備って何をしてるの?」


 作業を見ているが何をしているか分からない

 何かを作る材料を運んでいるの見えるが何が出来上がるか予想が出来ない


 ……あれは木、あれは鉄? あれはなんだろ。あれはボウガンの矢かな、大きいなぁ


「外の準備は罠と柵と壁ですね、地面に刺して固定する簡易的な木の柵です。先端を鋭くする事で突っ込んできた魔物に突き刺さるようにしています」


 エルリカの説明を聞きながら作業を見ていると両先端が鋭い木も運ばれている

 刺さりそうなほど鋭利


「壁は土や木で作られた物で頑丈で並の突進であればある程度抑え込めます」

「成程、抑えられるのは強いかも」

「特に今回は数ですからね」


 一部の魔物を抑え込めればその分戦いが有利に動く

 強い魔物一体なら小細工はほぼ役に立たない

 でも強さバラバラ、数で来るならこう言った準備が役立つ


「罠は魔法で作られた罠、道具を使った罠の2つがあります。どちらも1度切りですが魔法で作られた罠は強力、道具は足止めくらいです」

「成程、罠魔法かぁ」


 ……魔法の罠、聖女の魔法には無いなぁ。こう言う戦闘だと強そう。ただ味方が巻き込まれないか心配だなぁ


 戦闘に入れば魔物と人が入り乱れる

 ヒールで作業員を回復しながら作業を見る

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