病弱聖女は護衛騎士を選択する

 悩む

 10人の中から2人

 やっぱり護衛となれば強い人が良いと思うが騎士団長達を選ぶのは無いなと思う

 彼等はこの国の主力、護衛で置いておくのはいざと言う時に動けない


 ……3人を除いた7人だとして……どう決めよう


 実力や性格を知らない

 そもそも彼らの名前すら知らない


 ……一度名前聞いた方がいいかな?


「うーん」


 後で治療があると言っていたので早く決めたかったがこれは悩む


 悩んでいる間に騎士団長達が3人で話している


「そう悩む事か?」

「悩むだろ」

「悩みますよ。我々が居なければもっとスムーズだったと思います」

「今のアナスタシアは重要護衛対象だ。騎士団長クラスが必要だ」

「どういう事だ? あぁいや聖女様は護衛するべきだって話なのは分かっているが力で言えばヒナ様より低く不治の病を患って戦場には出られないんだろ? 騎士団長クラスが必要ってのが分からねぇ」

「そう聞いていますが」

「その情報は古いぞ。まぁ選ぶのは彼奴だ」


 ……本当にどうすれば……


 悩んでいると横から小声でエルリカが話しかけてくる


「本当に誰でも良いのですよ」

「……良いと言われても」

「提案ですが騎士団長1人、もう1人は7人から選ぶならレオナルド様の考えも汲み取りつつ丁度良い選びになるのではないでしょうか?」


 エルリカの提案を聞く

 騎士団長2人選ぶ、7人から選ぶよりも良い提案だとは思う

 1人でもかなりだが2人分となれば補え切れるか分からない大きな穴となる

 7人から選んだ場合その懸念は無いが騎士団長達に比べると護衛の実力が劣る

 私が考え続けていても答えが出なそうなのを勘づいて提案してきたのだろう


 ……確かにそれが一番かな、なら最初は騎士団長から選ぼう


「確かにそうかも」

「あくまで提案ですので参考程度で」


 3人の騎士団長を見る

 実力1つで言えば圧倒的にレオナルドさん

 関わった事がある為、性格も多少なり分かっている、一番の候補と言えるが一番抜けたら不味い人物

 他の騎士団長は決して弱くは無いがレオナルドさんと比べてしまうと見劣りしてしまう

 別に実力に疑いは持っていないから実力の面では問題は無いが私自身彼らと関わった事が無いのが心配の要素

 性格等は噂程度でしか聞いた事がない


 ……うーん……疑う気は無いけどやっぱり……


 選ぼうとすると嫌な記憶が脳裏に過ぎる

 レオナルドさん以外の騎士だと抵抗があるようだ

 騎士や兵士に悪態をつかれる、悪口を言われる、陰口を言われる、小突かれるなど今までされた事が色々と嫌な記憶が頭を駆け巡る

 騎士団長にはルスティ騎士団長のような人も居る

 それを考えると……


 ……騎士団長の中からだとレオナルドさんかな。もう1人は……どうしよう


 7人の顔を一度確認する

 ちゃんと見て判断しないと失礼だと思った

 騎士達は様々な表情をしている

 その中で唯一真っ直ぐ私を見ている騎士が居た

 選ばれないと思っているのに希望を捨てきれていないそんな目をしている


「貴方は」


 気になり近付いて声を掛ける

 まさか話しかけられるとは思っていなかったのか反応が無い

 周りの騎士が慌て始める

 聖女の問いを無視するのはとんでもない事


 ……聞こえてない? 無視じゃないよね?


「アルト」


 レオナルドさんに言われてアルトと呼ばれた騎士はハッとする

 気づいていなかったようで急いで名乗る


「……あっ、はい、お、俺はアルト・メゼス、24歳、所属は第3騎士団です」


 真面目そうな騎士

 直感だが良さそうだと思う、この人物は多分裏表が無い

 今判断材料は少ない、だから自分の直感を信じる


「……決めました」

「ほう、誰だ?」

「レオナルドさんとアルトさんでお願いします」

「私を選ぶとは良い選択だ」

「お、俺ですか?」


 アルトは信じられないと言った表情をしている

 騎士団長3人居て尚且つ他にも騎士が居る中で選ばれるとは思っていなかったのだろう


「はい」

「わ、分かりました! これより俺アルト・メゼスはアナスタシア様に忠誠を誓います!」

「私も忠誠を誓おう」


 2人は片膝をつく

 私はどうすればいいか分からず慌てる


「こういう時は一言掛ければ大丈夫ですよ」

「な、ならこれからお願いします」


 頭を下げる

 これで私に護衛騎士2人付く事になった

 片方は最強の騎士、もう片方も決して弱くは無い騎士、護衛として優秀過ぎる


「お前ら仕事に戻っていいぞ」


 レオナルドさんに言われ騎士達はゾロゾロと部屋を出ていく


「騎士団長1人に騎士1人まぁあの中では妥当ですか」

「そうだな。そんじゃ俺達も帰るか」

「仕事がありますからね」

「時間をかけてすみません」

「聖女様の為ならこの程度問題有りません」

「これも騎士の役目だしな」


 騎士団長2人はそう言い残して帰っていく

 そしてこの部屋には私と護衛騎士2人、エルリカだけが残る


「あっ、レオナルドさん治療する人達と言うのは」

「あぁ、これから案内する」

「治療ですか?」


 疑問に思ったアルトが話し始める


「確か今日は魔物との戦闘はなく負傷した騎士は居ませんが」


 ……え? 居ない? なら昨日? 城門前の戦闘で怪我人がいたとか……いやそれならヒナが治してるか


 基本傷というのは時間が経つと治っていく

 その為、聖女の魔法で治療するなら早い段階で治療を行う


「今日負傷した者達では無い。半月前に欠損の負傷をした者達の事だ」

「半月前に?」

「アナスタシアは知らないのか」

「半月前に魔物の大群との戦闘がありました。その際複数の騎士団や多くの兵士が投入され死傷者も出て腕や足の欠損の重傷を負っている人々もいました」


 ヒナでは欠損は治せない

 正確には再生まではできない、切断された手足が無事なら可能だが戦場でそれは難しいだろう


「成程、彼等の治療をと」

「そうだ、出来るな」

「出来ます」

「欠損を治せるんですか?」


アルトは聞いてくる

信じられないのだろう

優秀と言われるヒナが出来ない事を私が出来ると言っても信じられないのは分かる


「時間が経ち過ぎてるのは無理ですが私のヒールは特殊らしいので」

「ヒールの技術一つなら歴代の聖女の中でも飛び抜けている」

「そ、そうなんですね」

「行くぞ、メイドは戻っていいぞ」

「分かりました」


 レオナルドさんの案内で治療する兵士が居る部屋に向かう

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