病弱聖女は王様と最強の騎士と食事を取る

 静かに待つ

 緊張が取れない、ソワソワする

 誰かと食事共にするのは懐かしい

 それも相手は王様とこの国最強の騎士、心の準備以外も足りていない


 ……粗相がないように……ないように……


 取り敢えずやらかさないようにと気を付けるよう自己暗示する


「もう来ていたか。おはよう」

「は、はい、おはようございます!」


 立ち上がって挨拶をする

 先に来たのはレオナルドさんだった

 レオナルドさんは私と対面するように前の席に座る

 隊服を身に付けている


「何か不自由はあるか?」

「いえ、寧ろ充分過ぎる程で」

「ならば良い」

「先に来ていたか」


 王様が遅れて来る


「遅いぞ」

「話が長引いてな。しっかり休めたようだな」

「はい、充分に睡眠を取れました」


 王様が席に座る

 すると使用人が食事を運んでくる

 豪華な料理を沢山並ぶ

 肉、野菜、魚など様々な物が使われた料理が並んでいる


 ……あっ、マナーどうなんだろう


 私は食事のマナーも教えられていない

 だから分からない

 マナーがあると言うのは聞いた事がある


「どうした?」

「嫌いな食べ物でもあったか?」

「えっと……食事のマナーを私は知りません」


 恐る恐る私は食べる前に伝えておく

 流石に晒す前に確認くらいしておかないとと


「気にしなくていい。自由に食べると良い」

「レオの言う通り気にしなくて良い」

「分かりました」


 許可を貰ったのでいつものように食べ始める

 一つ一つ取って食べてみるがかなり美味しい


 ……凄い美味しい


 私の反応を見て王様は笑う


「貴族教育は親の役目なのだがな」

「他の兄弟には身に付けさせていた。わざとだな」

「あぁ、それとアナスタシア、食べながらで良いが話を聞いてくれ。君に護衛を付ける事にした」


 口に含んだ食べ物を一旦食べ切る


「護衛ですか?」

「あぁ、聖女には本来護衛が付く。外に出ない君には不要だと考えていたが昨日の出来事を考えて付ける事にした」

「なるほど……」


 ……護衛騎士


 聖女について記されている本に聖女には優秀な護衛騎士が傍に付き従っていたと書かれていた

 確かにヒナに2人の護衛が付いていた

 私には無縁の物だと思っていた


「これからは外に出る事も有るだろうからな」

「候補者が何人か居る。食事の後、彼らを集める。その中から2人選ぶと良い」

「全員私達が認めた人物だ」


 ……騎士は余り面識ない。良い人なら良いけど


 護衛は恐らく騎士

 騎士も治療する事があるが覚えている顔は余り無い

 知らない人となると心配に思うが王様とレオナルドさんが選んだ人物達なら信用して大丈夫だろう


「分かりました」

「護衛を決めた後に治療をして貰いたい。魔物との戦闘で負傷した者達が居る」

「急がなくて大丈夫ですか?」

「問題無い。先に護衛の件は済ませておきたい」

「分かりました」


 ……治療、急がないなら酷い負傷では無いのかな。でも出来るだけ急いで選ぼう


 急がなくていいとは言われたが負傷している人々が居るのなら少しでも早く苦しみから解放したい

 その後軽い雑談を交えて食事を終える


「俺は仕事に戻る」

「私も行く場所がある。アナスタシアまた後で」

「は、はい」


 部屋に一旦戻り支度を終えてエルリカの案内の元騎士達が待つ場所へ向かう

 護衛騎士にワクワクするが心配や不安も無いとは言えずそして恐らく知らない人なので緊張もする

 色々な感情が忙しく落ち着かない

 騎士達が待つ部屋の前に着く


「準備出来ましたか?」

「もう少し待って」

「分かりました。時間はあります」


 深呼吸をする

 部屋の前で緊張が最大になる


 ……聖女らしく……は無理、せめて私らしく


 覚悟を決める


「もう大丈夫」

「では入ります」


 エルリカが扉をノックして扉を開き私に中に入るように促す

 ゆっくりとしっかりと床を踏みしめ中に入る


 部屋の中には10人の騎士が立っていた

 その中の数人は見覚えがあった

 第2騎士団と第6騎士団の団長

 そして第1騎士団団長、レオナルドが立っていた


 ……騎士団長が3人!?


 騎士団長は確かに全員が実力者

 でも護衛騎士に選ばれる事は無い

 何故なら彼等には国の防衛と言う役目があるから


「さぁアナスタシアこの中から2人選ぶんだ。自分の護衛騎士を」

「いや待て待て、護衛騎士の候補に騎士団長3人ってどうなってんだ!?」


 第6騎士団の団長が声を上げる

 詳細を聞かされていなかったかのような反応をしている

 レオナルドさんは淡々と答える


「これが最善だ」

「ヒナ様の時は有っても副団長でしたが」


 騎士団長には劣るが副団長も実力者揃い


「あの時とは事情が違う。それにこのメンバーは私が認めている」

「……ここに居ないメンバーは認めてないってか?」

「力が足りないか信用に足らない」


 他にも騎士が居る中ではっきりと断言する

 これが出来るのはそう多くないだろう


「はっきりと言うな」

「2名ともに騎士団長を選んだ場合どうするつもりですか? 2名となると穴は大きいですよ」

「だがそうする価値はある」


 私は固まる、体も脳も

 ちょっと処理が間に合わない

 まさか騎士団長3人居るとは思っていなかった

 こんな事を言うのは悪いが護衛騎士は役職を持たない騎士だと思っていた

 この中から選ぶとは……


「どうした?」

「わ、私の想定していたのは数人の騎士が居るのかなぁくらいでまさか騎士団長が居るとは思わなくて」

「騎士団長3人は予想出来ねぇよな」

「アナスタシア様も聞かされていなかったようですね」

「あぁ言ってなかった」

「せめてアナスタシア様に事前に言うべきでは」

「なんで言ってねぇんだよ。当事者相手に」

「急ぎだったからな」


 昨日の今日で集められるメンバーでは無いと思ってしまうが王の指示なら集まるかなと納得する

 団長達にばかり意識が向くが良く考えれば他のメンバーもレオナルドさんに実力を認められている精鋭達

 彼等でも充分な戦力となり得るとレオナルドさんが判断したメンバー


 ……私が選ぶとか烏滸がましいでしょこれ……


 これからこの難題を突破しないと行けない

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