病弱聖女は悪魔と戦う

 黒い何かが溢れた

 それは部屋中を包み込む

 レオナルドさんは剣を振るいそれを切り裂く


 ……何これ


「触手か」


 黒い触手が部屋中を包み込む程に箱から溢れ出している

 触手は剣で斬られてもすぐに再生し始める

 司教は触手に呑まれるが私達は私が発動した防御魔法で難を逃れる

 部屋を破壊し膨張していく


「なんですかあれは」


 アルトは驚愕している

 未知の存在に恐怖を感じているようだ


 ……前に会った魔物よりヤバい


 前に遭遇した殺されかけたあの魔物より恐ろしく強いと本能で理解する


「レオナルドさん、アーティファクトと言うのは?」


 何が起きているのか正直分からないので聞く


「分かっている事は人工的に生み出された超技術の塊ってのと使用した時何が起きるかは物によって変わるくらいだ。今回の場合は化け物の召喚か封印していたのかのどっちかだな」

「これどうしますか?」

「戦うしかない。だが再生する敵か」


 話している間も膨張していく

 そして教会を突き破り外に出る

 このままでは周囲に甚大な被害が出る

 その上、教会の入口付近には負傷した教会関係者が居る

 彼等は逃げられない

 逃す訳には行かないが死なせるのも気が引ける


「レオナルドさん、外の人達を回復させたいです」

「あぁ、このままでは巻き込まれて死ぬな。お前の判断で良い」

「では助けます」

「分かった。まずここから切り抜ける。アルト!」

「はい!」


 剣を構えて障壁の外に出て触手を切り裂いて進む

 私もジャッジメントソードを使い光の剣を触手に突き刺す

 そして入口付近に向かう

 上側に膨張しているようでまだ余裕がある


「治癒魔法の詠唱をします」

「分かった」

「守護します」


 走りながら詠唱をする


「聖女たる私がこいねがう」


 入口に着いたら即詠唱出来るようにする

 詠唱中、2人が私を守る

 近くの触手を切り裂いて進む


「厄介な」


 触手の化け物は再生能力が高い

 斬った端から再生していく、埒が明かない


「かの者達に癒しを、かの者達に祈りを」


 2人が切り払い進み入口に着く

 入口には倒れている人々が逃げようと必死に這っている


「お、おい! なんなんだあれは! あの化け物はなんなんだ!」


 仲間を引き摺って逃げようとしていた降参していた人が教会から出てきた私たちを見て叫ぶ


「かの者達に希望を! 癒しは降り注ぐ氷聖女の祈りミリス・ヒーディス


 倒れている全員に治癒の魔法を掛ける

 欠損が再生していき彼等は立ち上がれるようになった


「なんだ?」

「手足が再生した?」

「どうなってんだ」


 彼らは突然手足が再生して戸惑っている

 戸惑っている暇は無い、すぐに逃がさないと化け物に襲われる


「逃げなさい! ここに居たら危険です!」


 私は叫ぶ

 こんな状況で私を狙ってくる人は居ないだろうと考えての行動

 こんな状況でも攻撃してくるような勤勉な人が居たらまた手足を切って次は放置する


「危険?」

「逃げるぞ」

「なんだどうなってる?」

「悪魔だ!悪魔が現れた!」


 身体が治った彼等は一心不乱に柵の外に逃げ出す


 ……これで一先ず良し、あれはどうやったら倒せるんだろ


 化け物は教会を飲み込む程のサイズとなった

 これ以上大きくはならないようだがそれでもかなり大きい

 この化け物が暴れたら被害がとんでもない事になる


「何か作戦はありますか?」


 念の為に2人にヒールを掛けておく


「再生持ちは大体コアがある。それを破壊すれば行けるが……何せこの大きさだ」

「探すのが困難」


 ……見つけられれば消滅させられる。これなら確実にやれるでも接近しないとならない


 攻撃系魔法ネル・リヌワール

 これならコアに当たれば確実にやれる

 しかし、この魔法は射程距離が短い

 やるなら接近しないとならない


「コアを見つけたら私がやります。ただこの魔法は接近しないと届きません」

「接近は無理です。この大きさ、身体の上側にあれば届くのは困難、その上危険です」

「危険は承知です。それでも倒す為に行けませんか?」

「無茶です」

「知っています。でもそれしか今は手がありませんよね」

「そうだな、私は広範囲の魔法は持ってない」

「俺は範囲の広い魔法は持ってますが正直通じるとは思えません。詠唱も必要ですしですが……」


 今やれる事はそれくらい

 他に作戦は無い、騎士達と合流しても打開策があるか分からない

 人手が増えてどうにかなる相手かも分からない


 ……いや待って


 1つとある事を思い出す


「レオナルドさん」

「どうした?」

「全力で切ってください」

「……あぁ、成程」


 レオナルドさんは一撃で家を崩壊させている

 その一撃なら通じるんじゃないかと考える

 呼吸を整えて全力で剣を振るう

 高速で切り上げられた剣は空気を切り裂く

 風が吹き荒れて斬撃が化け物を大きく切り裂く


「えぇ……」


 アルトは唖然としている

 私も頼んだけど思ってたのより凄くて困惑している

 流石のレオナルドさんでも普通の状況なら出来ないだろう

 ただ今は聖女の支援魔法を掛けられている

 それならあの時と同等の力を使える


「コアは見えないな」

「……何度も出来ますか?」

「余裕だ。ただ全力で斬ってるだけだからな」


 何度も切り裂く

 化け物は危険だと感じてレオナルドさんに無数の触手を向けて襲いかかる

 剣を振るい触手を纏めて両断する

 レオナルドさんが纏めて切り裂いた際に残っていた触手をアルトが捌く


「俺は残った触手を捌きます。すみませんこのくらいしか出来ません」

「いや、充分だ」


 魔力を温存しておく

 攻撃魔法を使う分の魔力と恐らく接近時に多く使うと考えられるから

 巻き込まれないように後ろに下がっておく

 攻撃してくる触手の数が増える

 2人が捌いていくがどんどんと数が増える

 触手は同時に襲いかかってくる、2人では手数が足りなくなる恐れがある


 ……温存してる余裕は無い


 魔法を発動させる

 2人がやられたら勝ち目が無くなる

 レオナルドさんの攻撃が入らないとコアを見つけられない

 シールドで触手を防ぎ2人をヒールで回復する

 触手の攻撃は重い、純粋な質量の塊

 一撃でヒビが入る


「コアが見つからねぇ、後方か?」

「可能性はありますね」


 戦い続けて若干アルトに疲れが見える

 そして動きが僅かに鈍る

 その瞬間、アルトは吹き飛ばされる

 触手を捌き切れずに直撃したようだ


「アルト!」


 咄嗟にヒールを掛けて傷を治す

 アルトはゆっくりと立ち上がる


「ありがとうございます。反応が遅れましたがまだやれます」


 アルトは剣を握り戻り触手を剣で切り飛ばす


「コアは」

「見つからん。巨大過ぎる」


 更に触手の数が増える

 レオナルドさんは殆どを捌けるが同時のせいで全ては捌けない

 触手の攻撃を回避する


「加勢する」


 素早い一撃が数本の触手を切り裂く


「潰れろ!」


 アルトに向かっていた触手が蹴り飛ばされる


「異端者に手を貸すのは癪だ」

「一大事だ。そうは言ってられない。恐ろしき悪魔め何処から出てきた」

「悪魔が現れるなんて聞いてないぞ」

「誰も言っていないからな」

「ちっ」


 男女が現れる

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