病弱聖女は魔物を殲滅する

 森までの平原には特に魔物は見つからない


 ……森から出てきてるとかもないんだ


 それか出てきた魔物は既に誰かが倒したのか


「誰が見つけたんだ?」

「今朝に森に魔物狩りに行った冒険者の少年が発見しました」

「冒険者?」

「騎士や兵士と違って個人で活動する人達の事です。魔物狩りなどをメインとして素材を売ったり時には人から依頼を受けて報酬を貰うなどを行っているんですよ」


 ニール騎士団長が答えてくれる


 ……魔物狩りをメインにした人達


「そんな人達が……なら前から目撃情報は無かったんですか? 魔物の数が増えているとか」


 魔物が出る森なら何人もの冒険者が向かう筈

 なら以前から魔物の数が増えた事に気付いてもおかしくない


「はい、ありませんでした。冒険者の方々の尽力もあって周囲の魔物はかなり数が減っていましたから一体いつから何処から来たのか」


 ……まるで突然大群が現れたみたいな


 今まで目撃情報が無かったのなら突然現れたとも考えられる

 もしそうならば何か原因がある

 それをどうにか出来れば大群を引かせる事が出来る可能性が高い


「倒せば分かる」

「そうだな! 聖女は下がっていれば良い」

「私も戦います。戦えます」

「森に入ります警戒を」


 森の中に入る

 ここからは視界が木々で遮られ遠くが見通せない

 背の高い草もあり動きづらい


「命を捧ぐ者に聖女は力を貸す戦聖女の声ベル・フェルース


 支援系の魔法を使い全員を強化する

 ここから先、魔物の戦いを行う

 だから何があってもいいように戦う前から掛けておく


「支援魔法か。ほう、これは……」

「凄いですねこれは」


 2人は強化された感覚で分かったのか感心している


「頼もしい聖女様だろ?」

「この支援魔法だけでも戦場で欲しい人材です」

「ふむ、そうだな。一段階強化される感覚」


 森の中を草を掻き分けて進む

 特に魔物の姿も見えず声も音もしない


 ……魔物が居る?


 魔物どころか生物が居るようには感じない程静かに感じる


「静か」

「ふむ、おかしい。ここまで静かなのは変だ」

「目撃情報の場所は近いはずですが魔物の気配もありませんね」

「もう少し先か」


 歩いて進む

 周りを警戒するが魔物を見かけない

 進んでいると突然先頭のレオナルドさんがハンドサインを出す

 全員止まる

 ハンドサインの意味は私には分からないが取り敢えず止まる


 ……止まれかな?何かあったのかな


 全員止まった事から止まれのサインかなと思う

 ゆっくりと前に出て何かを確認している

 先を見ると森がない、2人の視線は下に向いている

 恐らく先に崖があるのだろう

 ニール騎士団長とレオナルドさんが小声で会話をしている


「居ますね」

「あぁ、統率が取れているな。これは厄介だ。それも崖の下にか。こちらからじゃ見下ろさないと見えない……隠れてるな」

「ただ有象無象を集めただけでは無いですね。こうなるとリーダー格を叩く必要がありますね」

「この場に居ればいいがな」

「どうします? これは流石に厳しいですよ」

「やるぞ。ここに居る数は聞いていた数より少ない。だがこの数を削れれば大きい」


 私とベルラン騎士団長も近付いて話を聞く


「ふむ、別働隊が居るな。厄介厄介」

「何体くらい居ます?」

「200は居る」


 ……200……大量


 深呼吸をして覚悟を決める

 レオナルドさんは戦う気で居る

 ここで削れれば後の戦闘が楽になる


「開戦の合図は俺がやろう」

「任せた」

「大地は我が名を聞くが良い」


 ベルラン騎士団長は拳を地面に合わせる

 詠唱している

 私も詠唱を始める


「光よ聖女の名を持って命じる」

「我は戦士、全てを砕く槌を全てを防ぐ鎧を求む大地武装アームドガーディアン


 土の鎧を纏い2mはある岩石の巨体へと変化する

 そして手元には大きな槌がある


 ……攻防一体の魔法、凄い


「剣となりて悪しき者を打て光の罪剣ジャッジメントソード

「往くぞ!」


 ベルラン騎士団長が飛び出す

 崖の下に飛び降りて突っ込む

 崖はそんなに低くは無いが私に飛び降りる勇気は無い

 それに乱戦になる、だから私は上で援護をする


 ……上からなら狙いやすい


 魔物がこちらに気付き臨戦態勢に入る前に槌で数体を殴り飛ばす

 私も光の剣を飛ばして魔物を刺し貫く

 レオナルドさん、ニール騎士団長も剣を抜いて駆ける

 無数の光の剣を飛ばして魔物に攻撃を仕掛ける

 強い魔物も居るようで一部は弾かれたり避けられる

 槌で薙ぎ払い剣で素早く切り裂く


 ……凄い……強い


 流石騎士団長、素人目に見ても分かるほど強い

 レオナルドさんに劣っていると言われているが充分に強い

 遜色無いようにも見える

 ベルラン騎士団長は強力な魔法を使う、ニール騎士団長は剣の腕が高い


「順調だな」

「そうだな! この調子で削り切る」

「にしてもアナスタシア様攻撃魔法も使えるんですね」

「そのようだぞ」


 どんどん魔物が倒されていく

 この調子なら問題無く倒し切れる

 そう考えていると魔物の数体が翼を広げ飛行する


 ……空を飛ぶんだ。4体


「飛行ですか、厄介です」

「あの距離は届かんな」

「飛ばれると厄介だ。やりようが無くはないが面倒だ」

「遠距離魔法の得意手を連れてくるべきでしたね」

「あぁ、そうだな」


 高い位置を飛んでいる

 崖下からでは並の魔法では届かないような距離、よく分かっている

 私の距離からもジャッジメントソードだと心許無い


 ……別に再生しないなら


 聖女の魔法を発動させる

 距離のある敵を撃つ魔法、詠唱を始める

 この魔法は距離も威力もあるが一撃で範囲が狭い

 だから化け物の時には使わなかった


「聖女たる私が魔の者を撃つ、一矢よ駆け抜けろ炎聖女の弓リリス・フルールド


 光の弓が現れ弓を引くと矢も現れる

 飛んでいる魔物に狙いを定めようとする


 ……早い、狙いが定まらない


 動きが早く標準を上手く合わせられない

 一旦動きをしっかり観察する


 ……規則的に動いてる。不規則じゃないなら


 予想は容易い

 また構えて矢を放ち貫く

 貫かれた魔物は地面に落ちる


「撃ち落とした!」

「あの矢はリリス・フルールド様の魔法ですね」

「この魔法は知らなかったな」


 急所は貫けなかったようで生きているが丁度近くに居たニール騎士団長が切り裂いて倒す

 一撃一撃詠唱しないとならない為、時間が掛かる


 ……あと3体魔力も余裕ある、私が撃ち落とす


 詠唱して弓を構えて3体を撃墜する

 飛行する魔物は他には居らず後は殲滅するだけとなった

 3人が暴れ回り私が援護をして暫くするとこの場の魔物を殲滅し終える

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