病弱聖女VS盗賊団リーダー

「レオナルドさんは救助を、この周囲の人たちには支援系魔法とヒールを掛けてありますから私より力のあるレオナルドさんが救助を」

「危険だ」

「知っています」


 私は回復と支援しか出来ない

 救助活動をすると考えれば私よりもレオナルドさんの方が多くを救える

 私では瓦礫の下に埋まっている人を救い出せない


「ですがこれが最善です。私なら防御魔法がありますから」

「……直ぐに合流する」

「その前に終わらせます」

「女簡単に死ぬなよ」

「この場で死ぬ気はありません」


 盗賊はやる気だ

 光の剣を飛ばすが防御魔法で防がれる


「はっ、その程度か!」


 盗賊が突っ込んでくる

 動きが早い、恐らく支援魔法を使っている

 そしてこれから繰り出されるのはただの攻撃じゃない

 攻撃魔法を使ってくる可能性が高い、盗賊が真正面戦闘をするとは思えない

 不意打ちを警戒しながらシールドを前に出す

 盗賊は拳を振るうがシールドで防がれる

 拳の攻撃ではシールドを破壊されない

 光の剣を飛ばして攻撃するがまた防がれそのまま再び殴りかかってくる


「ぶっ飛べ」


 拳に付けた指輪が光る

 すると爆発が起きてシールドが破壊される

 私は飛び退いて距離を取る


 ……魔法を込めた道具? 多分複数持ってるよね


 先程の防御魔法も支援魔法も魔法を込めた道具を利用して使っているのかもしれない

 となると本人の魔法がまだ残っていて他にも道具はあるだろう

 この程度では騎士団長に勝てない


 ……本気を出す前に仕留める


 多分油断している

 だから本気を出していない

 一度きりなのかそれとも手札を隠したいのか

 不意打ちも無い

 今が好機


「防いでいるだけでどうにかなるのか!」


 シールドを張って攻撃を防ぐ

 一撃を叩き込むチャンスを伺う

 光の剣で牽制しながら相手を見る

 爆発する魔法はシールドが一撃で砕ける

 接近されている為詠唱のタイミングが無い


 ……流石


 魔法使いとの戦いがよく分かっている

 すぐに距離を詰め攻撃をされても防御魔法で防ぎ距離を離さない

 魔法使いは近距離に弱い、正確には他に劣る

 私がジャッジメントソードを使った時点で魔法使いと判断したのか見た目で判断したのか分からないが判断が早い

 戦い慣れている

 シールドで攻撃を防ぎ離れようとするが詰められ離れられない


「お前は何者だ? お前は強いが見た事がねぇ」

「私は聖女です」

「あ?」


 ただまだ方法はある

 その方法を取るには時間を稼ぐしかない

 今すぐには使えない


「私の名をアナスタシア・ティロス、2人目の聖女です」


 相手の話に乗って戦いながら会話をする

 意識が割かれるが相手も会話に意識を割く事になる


「あぁ最近噂の聖女様か。聖女様は引っ込んでろよ」

「私は役目を持って悪しき者を裁きます。盗賊として多くの者を不幸にした貴方を私は許しません。貴方の蛮行を拒絶する」

「よく分からんねぇな! 力が無きゃ奪われるそれがこの世だろうが!」


 指輪が光り爆発が起こりシールドが破壊される

 シールドを張る前に拳を腹につける


 ……グッ……


「くはっ、ようやく届いたな」

「まだまだです」


 光の剣で牽制してからシールドを張り直し更に攻撃を叩き込む


「これは聖女の技ってやつか? いくら撃っても無駄だぞ」


 この魔法では防御魔法を突破出来ない


「はい、聖女の御業です」

「そりゃ大層な、だが届かなきゃ意味がねぇ!」


 防御魔法で防いですぐに詰めてくる

 連続で拳を振るう

 拳自体はシールドで防げるが一撃が早い

 反応が遅れたらやられる

 間違い無く距離を取らせないつもりだ


「聖女って事はやべぇ魔法を持ってんだろ! 見せてみろよ!」

「はい? あぁ、それはお断りします」

「使うまでもないってか?」

「時間さえ稼げばレオナルドさんが来ますから……死にたくなければその前に降参しなさい」

「それは優勢になってから言う言葉だろうが!」


 幾つものシールドが破壊される

 状況的に今は相手有利、降参しろと言っても聞きはしない

 元より聞くと思って言っていない


「我が声を聞きませんか」

「あ? 聞くわけねぇだろ。聖女だからって調子に乗るな」

「調子になど乗っているつもりはありませんが」

「そうかよ」


 ギリギリで攻撃を回避して光の剣で攻撃を仕掛ける

 防がれるが良い、防御魔法は傷がついたのを修復する時、使う時に魔力を消費する

 盗賊のリーダーとは言っても魔力量は常人よりは多い程度のはず

 一手打ち込む前に削る

 少しづつ削りチャンスを伺う

 聖女の名を冠した魔法はまだ使っていない

 だから魔力にはまだ余裕がある


 大きく距離を取りシールドを盗賊の前に張って妨害する

 そして


「聖女たる私が魔の者を撃つ、弓は我が命によって顕現する! 一矢よ駆け抜けろ炎聖女の弓リリス・フルールド

「結局使うのか」

「やむを得ないので私が持つ切り札を使わせてもらいます」


 魔法を詠唱する

 放つ魔法は一撃が強い弓の魔法

 これならあの防御魔法を突破出来る可能性が高い

 戦いの中気付いたがジャッジメントソードでも僅かに傷が付いていた

 この一撃は連射が出来ない代わりにゴーレムすら一撃で貫く

 弓を引いて狙いを定める


「出来るのか?」


 盗賊は横に飛ぶ

 素早く移動して狙いを定めさせないつもりのようだ


 ……これは


 それも盗賊は後ろに人が居るのをわかってその場所に移動する

 避けられたら後ろの人に当たってしまう


「無理だろ!」


 そのまま少しずつ接近してくる


 ……撃てない


 間近まで接近される

 そして光の弓を爆発で砕かれる

 この魔法はもう使用出来なくなった


「終わりだな!」


 シールドも間に合わない

 拳が振るわれる


 この瞬間を私は待っていた


聖女の洗礼ネル・リヌワール

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