第004匙 復刻のキャ(リ)ー:カレーの王様 市ヶ谷店

 千代田区の西および西北部の外縁を為している〈四ツ谷〉から〈市ヶ谷〉までは、JRの中央線の線路、すなわち、お堀の土手沿いに沿って行けば、約九〇〇メートル、徒歩十二分の距離である。

 言い換えれば、千代田区・西部のエリア内でも最も外側に位置している、「JR四ツ谷駅」の「麹町口」の前に在る「レストラン エフ」と「JR市ヶ谷駅」からすぐの場所に在る「カレーの王様 市ヶ谷店」の間は、四ツ谷駅・市ヶ谷駅間とほぼ同程度の距離なのだ。


 さて、JRの市ヶ谷駅を出て、横断歩道を渡り、「靖国通り」を少しだけ進むと、右が靖国通り、左が、「外堀公園 九段北エリア」に面している細道の二又が見止められるのだが、その〈V〉の字の二本の道の接点に当たる所に位置しているのが、カレー専門店「カレーの王様 市ヶ谷店」である。


 「カレーの王様」は、いわゆるカレー・チェーン店で、その歴史は、一九七三(昭和四十八)年にまで遡る事ができ、まずは、『エスビー食品』のアンテナショップとして、銀座でオープンしたそうだ。


 『エスビー食品』といえば、「日本初のお子さま向け(1歳から)のカレー」である「カレーの王子さま」で広く知られている会社なのだが、「王子さま」の発売は、一九八三(昭和五十八)年なので、つまるところ、「王様」の創業は「王子さま」に十年先んじている事となろう。


 さて、カレーの王様は、その創業からの約四十年は、エスビーの完全子会社だったらしいのだが、二〇一二年に事業譲渡され、その後、店舗は減少してゆき、二〇二四年八月現在、営業を継続しているのは、後楽園店と、件の市ヶ谷店の二店のみになっている、との事である。


 さて、カレーの王様の市ヶ谷店の建物の外堀公園側の壁面には、「王道か スパイスか」という大きなポスターが貼られており、この掲示物が意味しているのは、つまるところ、スパイスカレーと日本風の伝統的な家庭的なカレーの二種が、「王様」のカレーの主筋という事であろう。


 ちなみに、『カレー・ガイドブック』の店のページには、今回のスタンプラリーにおいて、王様が推しているのは、顔が隠れるほどのドデカい唐揚げで有名な『横浜炸鶏排(よこはまざーじーぱい)』とコラボした「大鶏排(ダージーパイ)カレー」で、このカレーは、台湾唐揚げをトッピングしたスパイスカレーであるらしい。


 それゆえに、限定好きの書き手が選ぶべきは〈スパイス〉の方であるように思われる。

 事実、店に向かっている有楽町線の中では、この〈限定〉メニューであるコラボ・カレーにしよう、と書き手は考えていたのだ。

 だがしかし、結局、書き手が選んだのは〈王道〉の方であった。


 というのも、メニュー一覧にあった「復刻王様カレー」における「復刻」の二文字が、〈原点主義者〉でもある書き手の関心を強く引き付けたからである。


 約半世紀前の創業当時、肉類は高価で、気楽に気軽にカレーの具材に使う事は出来なかったそうだ。そこで、代わりに使われたのが、チキン・ミートボールであったらしい。


 時代の移り変わりの中で、カレーの具材も変化していったのだが、やがて、ミートボールを使った、創業の〈王道〉カレーが「復刻の王様カレー」として再登場した分けだ。


 やがて、五つのミートボールが入ったカレーが提供され、「唐辛子パウダー」、「特製スパイス」、そして「レモスコ」を、それらのミートボールにかけて、味変を楽しみながら、この復刻カレーをいただいた書き手であった。

 

〈訪問データ〉

 カレーの王様 市ヶ谷店:市ヶ谷

 二〇二一年八月四日(日)十五時四十五分

 復刻王様カレー(辛口)・ライス大盛:七〇〇円(現金)

 カード04「マンモスマン」


〈参考資料〉

 『公式ガイドブック』、二十九ページ。

〈WEB〉二〇二四年八月十日閲覧

 「カレーの王様本部 」、『facebook』

 「カレーの王子さま」「カレーの王子さまの歴史」、『エスビー食品』

 『台湾唐揚げ | 横浜炸鶏排 』

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