第025匙 白米オン黄色飯:Beans on Beans(神田駅南口〈中央区〉)
中央区に位置する「くずしわしょく香季庵」さんを出た書き手が続いて訪れたのは、同じ中央区に位置する「Beans on Beans」であった。この店は、店名の前にジャンルを表わす「南インド食堂」という文言が付いているので、どんな料理を提供しているか分かり易い。
例えば、インドは北と南で、その食文化は大きく異なっていて、ざっくり言うと、北は小麦、南は米で、多くの日本人がイメージする、インドのカレーの主食たる、小麦を材料とするナンは、実は、北インドの食べ物なのだ。
ここで、ガイドブックの店のページを参照してみると、「昼はナン中心の定食、夜はタンドリー料理」と書かれていた。
このように南インド料理店が北インドの料理を提供するのは、例えば、海外に進出したもんじゃ焼き店が、同じ日本の鉄板焼きという理由で、広島風のお好み焼きをメニューに採用しているような感じなのだろうか。
とまれ、南インド料理店でありながら北インドのナンを出しているのは、それだけ、インドの主食はナンと思い込んでいる多くの日本人が、インド料理店という理由から、南インドの料理店においてさえナンを望んでいる事を示唆してはいまいか。
だが心配する事なかれ。
実際に店に行ってみると、たしかに、「焼きたてナンのセット」というメニューもあったが、「南インドミールス」「バナナリーフミールス」「マサラドーサ」「ビリヤニとカレー」など、南インドのカレーもランチ・メニューとして用意されているのだ。
訪店した書き手は、米と豆が原料のドーサ、あるいは、炊き込みご飯であるビリヤニにするかでしばし悩んだのだが、結局、ビリヤニを選択した。
この店のランチ・メニューの「ビリヤニとカレー」は、そのインド風スパイス炊き込みご飯と、店がランチに用意している四種のカレーから一種類が選べるようになっていて、この日のラインナップは、「ペッパーマトン」、「あさり」、「ココナツチキン」、「5つの豆」で、書き手は、「5つの豆」を選んだ。理由は至極単純で、「ビーンズ・オン・ビーンズ」という店の名に肖っての事である。
やがて、注文したビリヤニとカレーが提供されたのだが、興味深かったのは、黄色いビリヤニの上に、長粒の白いバスマティ米が置かれていた点で、この長粒米の存在ゆえに、多様な味わい方が可能となろう。
ビリヤニは最初から味が付いているので、必ずしも味の濃いカレーと合わせなくてもよいだろう。
しかし、白いバスマティ米の場合、無論、下に敷かれている黄色の味付け飯と一緒に食べても構わないが、このようになっているのは、明らかにカレーと共に食べる事を想定しているに違いない、と思いながら、書き手は、そのバスマティ米と豆カレーを一緒に口に運んだのであった。
*
今回のスタンプラリー参加店の中で最〈東南〉に位置し、〈中央区日本橋室町〉に位置する「ガヴィアル コレド室町2店」さんから始め、同じ〈中央区日本橋〉に位置する「Beans on Beans」さんまで、書き手は二十五のカレー提供店を巡ってきた。
今回の巡回コンセプトは、千代田区と他の地区との境界線と、その外縁に隣接するカレー提供店を巡るというもので、いわゆる〈一筆書き〉を心掛け、同じ場所は二度は通らないように注意しながら不可視の線を描いていった。
そして、第一周目として、地図の最も外側に位置する店を巡り、その過程で、千代田区外、例えば、台東区や中央区の店も訪れ、二十五軒目の「ビーンズ」さんをもってして、千代田区以外に属する店は全て訪れ終えたのであった。
〈訪問データ〉
南インド食堂 Beans on Beans:神田駅南口・三越前(中央区)
二〇二四年八月二十八日(水)十四時
ビリヤニとカレー(5つの豆):一三七五円(クレカ)
カード25「サンシャイン」(二枚目)
〈参考資料〉
『公式ガイドブック』、四十二ページ。
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