第014匙 虎の如く:Tigre(末広町)

 この日の昼、正午過ぎに用事を済ませた書き手が、東京メトロ銀座線の「末広町駅」に着いたのは、多くの店が昼のランチ・タイムの終盤に入った午後一時半を過ぎた頃で、この日・この時間帯の書き手の目的地は、「Dining Bar Tigre(ティグレ)」であった。


 この店は、店名に「Bar」と入っているように、基本的には、夜にお酒を提供する飲食店なのだが、昼営業もやっている。

 書き手は、前々回〈二〇二二〉の時には昼、前回〈二〇二三〉の時には夜訪れたのだが、今回〈二〇二四〉は、昼に訪れる事にしたのであった。


 ちなみに、その他の多くの店がそうであるように、この店もディナー・タイムよりもランチ・タイムの方が、値段は少しお安くなっている。


 とまれかくまれ、ランチ・タイムのラスト・オーダーが十三時四十五分だったのだが、書き手は、なんとか最後の注文に滑り込めた次第なのだ。

 ちなみに、この日に提供可能なカレー・メニューは四種類で、それらは、「スパイシーキーマカレー」「赤ワイン煮込みのポークカレー」「冬瓜とチキンの白カレー」「エビカレー」で、四種の中から「2種もりあわせ」や「3種もりあわせ」にする事もでき、各メニューには、トマトスープと、デザートとしてキウイが入ったヨーグルトが付く。 

 そして、この日の書き手は「スパイシーキーマカレー」を選んだのであった。


 やがて提供されたカレーはワンプレートで、皿の中のライスには長粒米が使われ、その上に、キーマカレー、さらにその上に目玉焼きが載っていて、そして、皿の縁には三種類の野菜が置かれており、それは、左から、ナス、柑橘、ニンジンの順であった。


 この三種類の副菜についてもっと細かな情報を知りたくなった書き手は、ママさんに尋ねようとしたのだが、ふとカウンター越しの壁に目を向けたところ、訊くまでもなく店内に掲示があった。


 それぞれ、左が「なすのアチャール」、右が「キャロットラペ」、そして真ん中の柑橘が「オレンジとムラサキ玉ネギのマリネ」で、マリネのせいか、オレンジというよりもグレープフルーツに近い、変わった印象を受けたのであった。


 書き手は、カレーと副菜を、それぞれ単独で味わった後に、いつものように、副菜とカレーを混ぜながら食したのであった。


 それにしても、である。


 地図の外側に位置している店から巡ってゆく、というコンセプトの関係上、前日の夕方からこの日の昼にかけて、松屋さん、ボンドさん、ティグレさんの順に回っていったのだが、理論上、千代田区から台東区に出て、もう一度千代田区に戻る、そんな動きをする事になった。


 松屋精肉店さんの住所は〈千代田区外神田五丁目〉、続いて夜に訪れたBarボンドさんは〈台東区上野五丁目〉、そしてティグレさんは〈千代田区外神田五丁目〉で、松屋さんからボンドさんへは、区を跨ぐ事になるが、東南東に東進し、地図アプリによれば、その距離は二七〇メートル、そして、ボンドさんからティグレさんは、西南西の方向に西進し、その距離は三五〇メートルである。

 ちなみに、松屋さんからティグレさんまでは一四〇メートルの距離で、この間こそが最も近いのは確かなのだが、コンセプトが外の店からの巡回なので、やや下方向に右に行ってから(\)、同じく下方向に左に行き(/)、結果的に、左開きの不等記号(>)のような動きをする事になったのであった。


 だから、混ぜ混ぜしながら書き手は思ったのだ。

 ティグレとは〈虎〉の意味なのだが、なんか書き手のこうした動きって、獲物たるカレーを求めて右往左往している虎みたいだな、と。


〈訪問データ〉

 Dining Bar Tigre:末広町

 二〇二四年八月八日(木)十三時三十五分

 スパイシーキーマカレー:一二〇〇円(現金) 

 カード14「スプリングマン」


〈参考資料〉

 『公式ガイドブック』、六十四ページ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る