第008匙 ライヴハウスでは、カレーも〈現場〉しか勝たん:NARU(お茶の水)
神田川、すなわち、千代田区の境界線に沿って、水道橋からお茶の水方面に向かって歩いてゆくと、そこは、それなりの勾配のある坂道になっている。
とある夏の日の正午過ぎ、止まらぬ汗を手の甲で拭いながら、書き手がたどり着いた高台が〈駿河台〉で、ようやく平坦になった道を進んでゆくと、JRの「御茶ノ水駅」の「お茶の水橋口」が見えてくる。その駅前の橋を渡って左にゆけば、そこが神田明神が在る方面で、右に行けば、お茶の水の〈楽器店街〉に出くわす。
例えば、東京で楽器を買うのならばお茶の水、としばしば言われているのは、この界隈に楽器の専門店が集まっているからで、楽器屋があるなら、ライヴハウスがあるのもまた必然で、実際、お茶の水駅前の坂道を少し下った所に位置している建物の地下一階に、「お茶の水 NARU」というジャズ・ライヴハウスがある。実は、ここは、創業半世紀以上を誇る、お茶の水界隈では知る人ぞ知る老舗ライヴハウスなのである。
このNARUさんでは、月曜日と火曜日のランチの時間帯においてのみ、カレーの提供を行っており、今回の〈スタンプラリー二〇二四〉にも参加している。ちなみに、残念ながら、ライヴの開催日はカレーの提供は行わないそうなのだが、〈カレーの提供日〉のような情報に関しては、店のホームページを参照すれば確認できる。
そして、スタンプラリー開始後の最初の週に当たる八月六日の火曜日は、ライヴが催されないカレー提供日だったので、水道橋の「BASE CAMP」さんでカレーを食してから中半時間以内の書き手ではあったが、駿河台の「NARU」さんにて、店を跨いだカレーの〈お代わり〉をする事にした次第なのだ。
というのも、今回の〈スタンプラリー二〇二四〉の参加店〈一四九〉のうち、押印難易度が最も高い店の一つが、平日の月曜日と火曜日の昼時のみカレーが提供される、このNARUさんで、ちなみに、その押印の難易度の高くなる要因は、曜日と時間帯の問題だけではなく、特に週におけるカレー提供日が最終日の場合、カレーが枯れている事もあり得るからである。
そういった分けで、NARUのカレーよ未だ残っていてくれ、と祈りながら店に向かった分けなのだが、入口に、カレー売り切れの掲示は見止められなかったので、書き手はほっとしたのであった。
店のホームページによると、NARUさんのカレー・メニューは、「NARU特製欧風ポークカレー」「毎週変わる特製欧風カレー」、「毎週変わる限定カレー」「ポークと限定の2色カレー」の全部で四種である。
つまり、〈あいがけ〉を除いた三つのメニューのうち二つは〈週替わり〉の品なのだ。だから、その週替わりの限定カレー何なのかを知りたい、と思って、店のホームページやSNSなども見てみたのだが、書き手が調べた限りにおいては、WEB上にその情報は掲載されてはいなかった。とはいえども、その限定カレーの内容は、店の前まで来れば、階段上に置かれているイーゼル上のポスターによって知る事ができる。
ちなみに、この八月の第二周目の、週替わりの〈欧風〉カレーは、「欧風 骨つきチキンカレー」で、ポスター上の説明書きによると、「じっくり柔らかく煮込んだ骨つきまるごとチキン」であるらしい。そして、週替わりの〈限定〉カレーは、「限定 海老クリームカレー」で、「海老の美味しさをそのままカレーに閉じ込めた」品だそうだ。
そして、固定メニューに関しては、「伝統のカレー¡秘伝のレシピ!カレー好きは必食!!」と書かれていた。
なるほどたしかに、週替わりの欧風や限定は、その週にしか味わえない稀な品なのだが、月・火の昼時という限られた時間帯にのみカレーを提供しているNARUさんでは、固定メニューでさえ激レア品だ。
それにしても、である。
音楽は収録された楽曲を〈在宅〉して聴くのではなく、実際に、〈現場〉に赴いて体験した方が良い、という心情を、「〈現場〉しか勝たん!」と文言で表現したりするのだが、実際に店に行かなければ、限定カレーの情報が知れないのも、そうした音楽における〈ライヴハウス絶対主義〉の心理に似ているように思われる。
そもそもの話、NARUさんは、ジャズ・ライヴハウスなのだ。
無意識なのか、それとも、意図しての事なのか、あるいは、SNSでの情報発信に力を入れていないだけなのかは分からないのだが、事実として〈現場〉たる店においてしか、限定カレーのの具体的な内容を知れないのは、いかにも、ライヴハウスっぽいな、と思う書き手であった。
そして、しばし悩んだ末に、書き手は、レアな固定の「ポークカレー」と限定の「海老クリームカレー」を同時に味わえる「2種カレー盛り」を選んだのであった。
〈訪問データ〉
お茶の水 NARU:お茶の水・駿河台
二〇二四年八月六日(火)十二時半
ポークと限定(海老クリームカレー)の2色カレー:一三五〇円(現金)
カード08「ブラックホール」
〈参考資料〉
『公式ガイドブック』、二十八ページ。
〈WEB〉二〇二四年八月十四日閲覧
「HOME」「MENU、CURRY」、 『NARU お茶の水店』
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