第019匙 辛さのブースト、ブート・ジョロキア:だしごはん(岩本町)

 秋葉原駅界隈から神田駅界隈までの千代田区の東側は、〈昭和通り〉という、このエリアの幹線道路を軸に、秋葉原側の〈昭和通りのこっち側〉と〈昭和通りの向こう側〉に分ける事ができるのではなかろうか。


 この〈昭和通りの向こう側〉が秋葉原エリアだと台東区、神田エリアだと中央区の境になっているのだが、後者の場合、住所的に言うと、千代田区の岩本町、最寄りの駅で言うと、都営線の「岩本町」の辺りが、神田駅界隈の〈昭和通りの向こう側〉に当たり、この辺の細道に、焼き飯専門店、『だしごはん』が位置しているのだ。


 そのだしごはんさんのホームページを参照すると、この店がレギュラーで提供している焼き飯のメニューが分かる。例えばそれは、「だしごはん」「やきだしごはん」そして「忍者やきだしごはん」で、最後の「忍者やきだしごはん」の味付けに関しては、「プレーン」「ケチャップ風味」「カレー風味」「スパイシーカレー風味」の四種からの選択が可能になっている。

 〈だ〉がしか〈し〉、〈スタンプラリー二〇二四〉のシーズンには、この企画用の限定メニューとして、「スパイシーカレー忍者+LEVEL 0~10」が準備されており、メニューの表示の中には、「※LEVEL2でも激辛」という注意書きが付けられていた。


 書き手は、神田カレー・スタンプラリーへの参加が三回目という事もあり、辛さ十段階のレベルのうちの〈三〉を選んだのだが、先に触れた注意書きに違わず、レベル三のカレー焼き飯は実に辛いものであった。


 実は、書き手がちょうど食事を終える頃、タイミングよく、お客さんの波がいったん引いた為、この偶然の機会に、書き手は店主さんと話す機会を得た。


 店主さん曰く、通常のメニューの「スパイシーカレー風味」の「忍者やきだしごはん」を辛くするために、「ブート・ジョロキア」というカレー・パウダーを使っているそうなのだ。


 ブート・ジョロキアとは、北インドのアッサム州、ないしは、バングラディッシュ産のトウガラシで、なんと、二〇〇七年には、あの「ハバネロ」を抜いて世界一辛いトウガラシとしてギネスで認定されたらしい。

 調べてみたところ、辛さを表わす単位である「スコヴィル値」は、ハバネロが〈十五万〉、これに対して、ブート・ジョロキアは〈一〇〇万〉だそうだ。

 現在では、辛さ〈一三〇万〉の「トリニダード スコーピオン ブッチテイラー」や、辛さ〈一五〇万〉の「キャロライナリーパー」といった別の品種のトウガラシに抜かれてしまったそうなのだが、このかつての世界一のトウガラシたる「ブート・ジョロキア」が、激辛である事は紛れもない事実であろう。


 ちなみに、「ジョロキア」とは、アッサム語で〈トウガラシの実〉、〈ブート〉はちょっと訛っていて、現地語では〈ブット〉ないしは〈ボット〉と発音され、これは、現地語では、チベットの意味で、つまるところ、「ブート(ブット)・ジョロキア」とは〈チベット・トウガラシ〉を表わしている分けだ。


 書き手は、「ブート・ジョロキア」の〈ブート〉とは〈起動〉の意味、あるいは、〈下から押し上げる〉という意味の〈ブースト〉の〈ス〉の音が落ちたもので、その語感から、辛さをブーストするパウダーを意味する、と完全に思い込んでいたのだが、事実は〈チベット〉の意味であった。

 しかし、確かに勘違いだとしても、世界レヴェルのトウガラシ「ブート・ジョロキア」が、辛さをブーストするものである事は紛れもない事実ではなかろうか。


〈訪問データ〉

 だしごはん:岩本町

 二〇二四年八月二十六日(月)十二時半

 スパイシーカレー忍者+LEVEL2(ごはん小盛(五〇円引き):八五〇円(現金) 

 カード19「テリーマン」


〈参考資料〉

『公式ガイドブック』、六十五ページ。 


〈WEB〉二〇二四年九月一日閲覧。

 『だしごはん』

 「世界トップクラスの辛さ!『ブートジョロキア』ってどんな唐辛子?」、『macaroni』

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