第031匙 粘土製の大窯で焼かれたかもしれない幅広ナン::ザ・タンドール(神田駅西口・大手町)

 実は、今回の「スタンプラリー二〇二四」において、店名に「タンドール(たんど~る)」という単語が入っている店が三軒あって、それが「カレー食堂 たんど~る」「タンドール料理 RB’s ひつじや」「インド料理 ザ・タンドール」である。

 おそらく、日本全国にも似たような語を含んでいる店はもっと多いに違いない。


 それは何故か?


 「タンドール」はウルドゥー語で、英語のアルファベット表記は〈Tandoor〉、これは、アフガニスタンから北インドにかけた地域で利用されている〈粘土製〉の壺窯で、丁半博打の筒を下にした時の形に似ている。

 窯の底に置く薪や炭などを燃料にし、長時間火を焚きっ放しにする事によって四八〇度もの熱を出し、その高温を維持する為に入口は狭くしているそうだ。


 窯の大きさは様々らしいが、「タンドール」という単語を聞いて、我々が想起するのは、人の身長程の大きな窯ではなかろうか。

 「タンドール」は南インドでは使われず、先ほど述べたように、アフガニスタンやパキスタン、そして北インドで用いられ、これらの地域では、タンドールを使って、ケバブやタンドリーチキンを焼く。

 そもそも、タンドールを使って作るから〈タンドリー〉チキンなのだ。

 そして、〈ナン〉は、平らに伸ばした生地をタンドールの内側に貼り付けて焼くのだ。

 店の中には、ナンを焼く際に〈タンドール〉を使わない店もあるそうだが、正式なナンはタンドールを使って焼く。だから、タンドールが無い南インドでは、ナンを食べないのは尤もな話なのである。

 

 こう言ってよければ、北インド料理を代表するタンドリーチキンやナンを作る際に用いるタンドールは、北インド料理の象徴的な調理具なのだ。

 そういった分けで、「タンドール」を店名に使っている店が多いのは当然だろう。


 さて、書き手が訪れたのは「インド料理 ザ・タンドール」で、土曜日のランチタイムに用意されているのはセットメニューで、サラダやドリンクに加え、ダール、野菜、キーマ、チキン、ポークの中からカレーを選び、主食として、ライスかナンの何れかを選ぶようになっていたが、「ザ・タンドール」という名の店で、ナンを頼む以外の選択肢はないだろう。


 やがて、料理が提供されたのだが、「ザ・タンドール」のナンの形はちょっと変わっていて、なんと、扇の〈天〉に当たる部分が、他店のナンよりも広めになっていたのだった。


〈訪問データ〉

 ザ・タンドール:神田駅西口・大手町

 二〇二四年八月三十一日(土)十一時半

 ダルマサラセット:九〇〇円(現金) 

 カード31「ウォーズマン」


〈参考資料〉

『公式ガイドブック』、三十九ページ。 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る