第29話 やっと帰るのね
翌日、わたしは王様から直接、女神のフレイヤ様からの神託のことを聞かれました。すでに王様に報告した通り、数年後に大災害(主に水害)がおきると聞いたことを再び説明をしました。
「エルーシアちゃん。ヒーナ商会などで、新しく開発して販売している道具も女神様の神託なのか?」
(生前の記憶って言っても信じてもらえないよね・・・。夢で見た! ――とお祖父様やお父様に説明していたから・・・)
「王様。えっと・・・ わたしが開発した物ですけど。フレイヤ様の神託と言うよりも、フレイヤ様が違う世界の夢を見せてくれるのです。
夢は普通忘れるものですが、目覚めてもフレイヤ様が意図を持って見せてくれた夢は、しばらくの間覚えています。まるで、わたし自身が行動したように」
「ほう」
「ですから、アレを作りなさい、ああしなさい。というご指示はほとんどありません。唯一といっていいのが、大災害があると言われたことです」
「なるほど、今までエルーシアちゃんが開発した物は神託の夢で見たものを作ったのじゃな?」
「はい。その通りです」
「そうか。それにしてもエルーシアちゃんは、五年前にも思ったのじゃが、もう成人した大人のような行動をするよな」
「ふふ。王様。それは、お父様、お母様の教育の賜です。幼い頃から、かなり甘やかされていましたが、躾と貴族としての矜持は、ビシビシと教えていただきました」
(本当は、前世の記憶もあるから、中身は27歳です!なんて言えませんわ)
「まったく、10歳の子供と話していると思えんな」
「もしかしたら、この聖女の紋章が、成長を早くさせているのかも知れません」
「そうなのかも知れないな。 ところでエルーシアちゃん。
学校の事で聞きたい。王都の民の皆が読み書き出来るようにするには、其方ならどうする?」
わたしは、じっと王様を見つめて考えました。
「王都は、この領地と違って、農家の方は少ないのですよね?
その代わりに、商会やギルドに務める者が多いのですよね?
そして、職に就かない貧しい者も多い・・・
わたしが王様なら、貧しい者に教育を第一に考えますね。
貧しい者が職に就き収入を得るようになると、王都の税収が多くなりますし、なによりも犯罪が少なくなり、治安が良くなります。
職に就いていない者や孤児から教育をはじめますね」
「ほう! 貧しい者からか?」
「はい。王都にはいっぱい貴族がいますし、お金持ちもいっぱいいます。
そのような人間は、貧しい者からいろいろと奪うとおもいます。
そのような者から身を守るために貧しい者こそ考える力、考えるための教養が必要と思います」
「うむ」
王様は、大きく頷きました。
「しかし、エルーシアちゃんは世の中を、そんな見方をして物事を考えるのだ。まるで違う世界から来た勇者や賢者のようだな」
「わたしの考えは、両親や祖父母に教えられたことと、フレイヤ様が見せてくれている夢での経験があります。この考えもきっと女神様のお導きなのでしょう」
「なるほどな。ベルティンブルグの繁栄を考えると、爵位を持たない平民が豊かになるとそれを治める貴族が潤うのだな。余はベルティンブルグの領地運営の結果を見なければ、こうしてエルーシアちゃんに相談を持ちかけることもなかったのじゃな。
で、エルーシアちゃんが国王なら教育をどうやって進める?」
「王様。相談料をいただいても良いですか?」
「ほほほ。さすが商会の会長じゃな。それで何がお望みじゃ?」
「王様とのホットライン。わたしが王様と話したいと思ったとき、王様はわたしのお話を最優先にして聞き、逆に情報を包み隠さず教えてくれる権利が欲しいです」
「ほう! それは何故じゃ?」
「フーマ王国はきっと他国から見ても妬まれるくらいに繁栄するでしょう。
国によっては、戦争によってまるごと奪おうとする所も現れると思います。そしてわたし自身も狙われると思います。(実際に教国から狙われたし)宗教だけで無く、他国…… いいえ国内の貴族からも。
ですから、自分を守るために情報が欲しいのです。決して国を乗っ取ろうとかではないので安心してください」
「ほう。わかった。エルーシアちゃんに聞かれたこと、そして、其方にとっての情報などは必ず教えよう」
わたしは、王様に向けて小指を出しました。
私は国王に指切りげんまんを教えました。
「「指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ました上に爆裂雷魔法をお城におーとす。指切った!!」」
王様の顔はひきつっていましたけれど。わたしと王様が「ふふふ」と笑った後。
「教育のやり方には2つ提案があります。
今、フーズ王国は潤っておりますので、
1つめは、王国の教育制度を、見直し市井も通えるようにして、教育を受けることが出来る人間を増やす。
2つめは、貴族や、商会に学校を運営させる」
「それで、エルーシアちゃんはどちらが、おすすめかな?」
「どちらも利権が絡む事ですので、政の事になるとわたしにはわからないところがありますが。
王族が本気なら一の案。
王家が管理できるなら、二案です」
「それでは、我が叔父のいるベルティンブルグ公爵家で、教育制度を運営するのが一番良い事かも知れないな。
国王継承権上位の叔父がいるのでな」
「王様。そのベルティンブルグ公爵家に任せると、数年後ベルティンブルグ公爵家が強くなりすぎ、国のパワーバランスが崩れてしまう可能性があります」
「エルーシアちゃんの考えは本当にすごいな!宰相に欲しいくらいだ!
学園を卒業したら宰相にならぬか!」
「王様、無理!」
「「あはははは!!! 」」
「そうか。無理か。では本当に、ベルティンブルグ公爵家で学校を運営してみないか?」
「王様。わたしは領主ではないのでお答え出来ません。
交渉相手をまちがえていますわ」
そうして、王様との話が終わりました。
お昼前、王様一家が王都に帰るため門のところまでお見送りしています。
手を振り王様達を見送っていると
(あれ?女の子が倒れている)
わたしはそう思って女の子に近づきました!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます