第36話 学校帰り




「ベルンもいっぱい美味しいお店があるけど、ベルティンも美味しさいっぱいなのだ!」

 小等学校の授業が終わって、メリアとお腹空きすぎ少女マチルダと寄り道して買い食いをしています。

あ! ち、違いました。 ベルティンの市場調査をしているのですわ。

 今日の放課後は、公務や商会の仕事を取りやめて、マチルダに街を案内することにしたのです。

(久しぶりのお仕事お休み。一ヶ月ぶり?

あれ? わたし子供なのに働き過ぎ?)


マチルダは右手にオークの串焼き、左手には果汁100%ジュースの入った木製のコップを持っています。


「ふふふ。マチルダは、竜なのに人間の食べ物が大好きだよね」


「エルーシア。

マチルダは竜じゃないのだ。古竜なのだ。

同じ星にしかいられないトカゲ(竜)と一緒にして欲しくないのだ」

マチルダはプンスカと頬を膨らませています。

美少女の怒る姿は、とある趣向の人には大変なご褒美になるでしょう。

わたしは、そんな趣向はありませんが。


「ねぇ、マチルダ。 古竜と竜の違いがわからないわ」


「エルーシア、古竜は由緒正しい生物で肉体を持っているのだ。例え肉体がなくなっても、精神があれば大丈夫なのだ。

そして精神体の神や精霊と並ぶモノなのだ。

女神のフレイヤ達と友達で、精霊女王とは仲間なのだ」


精霊女王? 今まで聞いたことない言葉に頭を傾げましたが、話しを続けました。

「マチルダってフレイヤ様と友達なの?」


「そうなのだ。友達なのだ。

フレイヤは、マブダチじゃないから、エルーシアは安心するのだ」


「あ、そう。そうなのね」

わたしの返事の後マチルダは続けます。

「因みに龍は古竜の事を指しているのだ

この世に数えるほどしかいないのだ」


「古竜(龍)は、人に崇められていて、神様と同格ということなのかしら?」


「それもあるのだ。

神は地域(星)を限定しているが、私達古竜はこの星だけでなく、一定の魔素量があれば、どの星にでも行くことが出来るのだ

そして、神と違って星に生きるモノ達と直接関わることができるのだ」


「古竜は、フレイヤ様などの神様が、作った生き物でないのかいしら?」


「違うのだ。フレイヤ達が崇めるモノの信仰が、私達古竜も作ってくれたのだ。

だから、フレイヤと友達…… もしかしたら姉妹と言った方がわかりやすいかもしれないのだ」


「マチルダってすごいのね」


火の古竜マチルダは、ドヤ顔を決めて

「そうなのだ。私もすごいが、人間でありながら、古竜と契約し名付けをしたエルーシアもすごいのだ。 そのエルーシアよりも剣技にすぐれているメリアも、すごいのだ」

マチルダの言葉にわたしは、「わーい」と両手を挙げて悦び、メリアは頬を赤くします。

恥ずかしがるメリア。 とても可愛い。


 そんな感じでベルティンの街を案内しているとマチルダは、

「ベルンの街も案内して欲しいのだ。

実はあの辺は私の巣(お家)があったのだ」


わたしとメリアは、あの惨劇を思い出し、お互いに顔を見合わせました。


「エルお嬢 ドッカーン 雷魔法」

メリアの声に、マチルダの表情が固まりました。


「ごめんなさい。マチルダ。

実は、ベルンの周辺に、爆裂雷魔法を落として、山というか、森林を破壊した犯人は、わたしなので~す」

テヘペロ


「むむっ。 わたしの巣を壊したのはエルーシア? 」


「実はベルンの街を作る前に邪悪なモノの気配を感じたの。

その邪悪なモノをやっつけるために、雷の魔法を使ったの。

雷魔法があまりに大きくて、山と森の形が変わってしまったわ」

動揺して思わず魔力を練ってしまいました。


「エルお嬢 魔法やり過ぎ いつも」


(メリア。わたしを責めるのじゃなくて、ここはフォローしてよ)

マチルダは、わたしの手の甲をガン見しています。


「なるほどなのだ! ベルティンブルグがエルーシアの陽の気に満ちているが、ベルンが陰の気がある理由がわかったのだ」

マチルダはうんうんと大きく頷いています。そして話しを続けます。

「エルーシア。私の家(巣)は気にすることないのだ。

私が作った巣よりも、エルーシアの屋敷の方が、快適なのだ。

ご飯やおやつがとても美味しくて満足なのだ」

マチルダはわたしの顔をみて、話していましたが、またわたしの手の甲に視線を移しました。


「エルーシア。 もう一度魔力を練ってみるのだ」


わたしはマチルダの真剣な眼差しと台詞に、首を縦に振って魔力を練りました。


ペカー

手の甲にフレイヤ様の顔を写した聖女の紋章が現われました。


「エルーシアは、フレイヤ…… ヴァン神族に連なる者だったのだ」


マチルダは目を大きく見開いています。

そして、わたしとメリアは頭を傾けました。


それを見ていたマチルダは、見開いた目を元に戻して

「紋章は仲間と言う事なのだ。

だから、エルーシアもフレイヤと友達なのだ。

そして火の古竜の私とも本気友達(マブダチ)なのだ。

エルーシアは、最強なのだ」

マチルダは小躍りしています。

(古竜のダンス初めてみたわ)って、マチルダは嬉しくてぴょんぴょんと跳ねているのではなくて、本当に見たこともない踊りを踊っています。

「マチルダ。 わたしは最強ではないわ。

かよわい女の子よ」


「エル嬢 魔力 すごい 違う かよわい」


マチルダは、火の古竜ダンスをぴったりと辞めて真顔になりました。

「ベルティンとベルンの気や雰囲気の違いがわかったのだ。

今日は、お腹が膨れてきたのでもういいのだ。

明日ベルンで買い食い…… じゃなくて、街並みを案内するのだ」


マチルダはお腹をさすりながら馬車に乗り込みました。


わたしとメリアもそれに続いて乗車して、ベルンのお屋敷に帰りました。


馬車の中では、マチルダが小躍りをわたしとメリアに指導していました。

何故に?

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