第11話 エルーシアの一日(前)




 小鳥の声で目を覚ましたわたしは、グイダに着替えなど身支度をします。

身支度が終わると、重たい瞼のまま、食堂へ向かいます。


 ガチャ

グイダがドアを開けると、ピカピカと回復魔法と治癒魔法をお屋敷の敷地全てに魔法が届くようにかけます。

よくよく考えると、わたしが聖属性魔法(治癒・回復などの魔法)を使えるのは、みんなが知っている事実です。

が、わたしは今でもこっそりと魔法を使っています。


「最近、エルーシアちゃんのおかげで、体の調子が良くって、目の疲れもないし、肩こりもなくなり絶好調だよ」

うーん。お父様のためでなくて、体の弱い女性陣のためにしていたのに、健康体であるはずのお父様が一番回復されているようです。

「お父様、そして皆様おはようございます。

体の調子が良くて安心したよ。数日前に執務室で話したけれど、法律の立法・整備、そして新しい街に関して今よりも忙しくなるよ。

これからもバリバリ働いてね」


「あははは。エルーシアちゃんには敵わないな」


わたしとお父様の会話に、オッドリア伯爵一家は首を傾けています。


わたし達一家とレーア叔母様一家との朝食はこのように、わたしの魔法から、はじまります。


 朝食を終えたわたしは、ファリカの手をとり、お屋敷内のお花畑やプルプルとポヨポヨのお家で彼女らのお世話をします。


 プルプルとポヨポヨとファリカと楽しい時間を過ごした後、家庭教師の授業を受けます。

それが終わると、メリア達と小等学校へ向かいます。

学校に向かう馬車は、ベルティンブルグ家、オッドリア家の子女が乗るために馬車には、家紋は入っていません。

そのため、街の人々は馬車に向かって拝む人も「聖女様」と大きな声を出す人もいません。

馬車の中では、わたしとリーサお姉様の二人がお喋りをしていて、ライナーお兄様が温かい目をして、メリアは眠たそうな目をしています。


 小等学校の門は朝の九時から夕方の五時まで開いています。

基本の授業はお昼から夕方四時までです。

ベルティンブルグ領は豊かになったとはいえ、子供達も働いている事が多いため、給食を食べてから授業がはじまるのです。

特に、午前中の気温が上がる前の時間は、農業の仕事をするために適しているためです。

 子供達の通学ですが、スクールバスならぬ、スクール馬車が多数あり、それに乗って移動します。近郊の村の子供達も馬車に乗って移動しベルティンブルグで授業をうけます。

(農家の子供達は自分で乗馬してくる児童・生徒も多数います)

この馬車の運営は、小等学校、高等学校に通っている児童と生徒は無料です。

因みにスクール馬車は、生徒や児童の送り迎えの時間外は、路線バスとして領民の足となっています。


「おはよう」

「おはよう、エルーシア様・リーサ様・メリアちゃん」

「ライナー様おはよう」


「「「 みなさま おはようございます 」」」

わたし達は、多くの児童に囲まれて教室に向かいます。

ライナーお兄様には、女子ばかり集まっているのは気のせいではないようです。


授業は各教科によって担当がいます。

その授業は、教科担当と担任もしくは副担任の二名から三名の教師がつきます。

一年生は読み書き・算術など基本な事を学び体育で体を鍛えます。

しかし、小等学校入学前に孤児院などですでに学んでいる為、基本の繰り返しになります。

一年生の授業態度や習得具合そして個々の適性を考慮し二年生に上がるときには、クラス分けがあります。

一年生で脱落者が出ることを想定していますが、読み書きと簡単な算術は誰もが習得できるようにと領主命令があり、先生(教師)は、頭を悩ませることになります。(この対応は、領主側はお母様が担当していて、学校に丸投げすることはありません)

農繁期には、小等学校は授業をお休みです。授業はお休みですが、課外授業として農家さんのお手伝いです。

ちなみにベルティンブルグ領では、公務員(兵隊さんや自衛団(警察官)や商家の人等も農作業を行います。

農作業の人件費は、農家より徴収します。

農家を営む方もしっかりと働かなければ、ノーフォーク農業が成り立たないように人員を調整するための戦略です。

(私領、個人の荘園を作らせない為もあります)

 お話しが少しずれてしまいました。

休憩時間が多めの授業を和気あいあいと過ごしたのに、帰宅時間になります。

わたし達貴族は、ササッと帰宅します。

授業が終わると、小等学校の教室は大人達の勉強の場になります。

大人達は小等学校の教師が教えるのではなく、学のある人。

文官の人や商家の人などの大人が勉強を教える事になります。

児童の中で親がこの勉強会に参加している子供は、校庭や体育館などの施設で遊んだり、図書館で読書したりして時間を潰した後、大人達と給食を食べて帰宅します。


 お屋敷に帰ったわたしは、お父様のいる執務室に向かいます

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