第35話 図書館(魔導書編)
わたしが二柱を撫でた後、お互いに近況報告をしています。
フレイヤ様は、古竜が名付けされたことに驚いているようです。
二柱の話しが一頻り話し終えた後、フレイヤ様がわたしに口を開きました。
「エルーシアちゃん。大変お待たせいたしました。
実は、エルーシアに伝えることもあったのですが、火の古竜、いいえマチルダに会うことも今回の目的です」
「それで、もう一つの方のお話しをお願いします」
「そうね。
この間、リーサの魔法を見ました。
あれは、危険です」
女神様は汗を拭う仕草をしました。
「エルーシアちゃんとほぼ同じ遺伝子なので、リーサはものすごい魔力なのよね。今までは、体が弱かったから魔法を使うこともなかったのだけれども、ずっと魔法の本を読んでいたわ。
きっと魔法が大好きで、魔法の研究と魔法行使が両方ともできるようになって楽しいのだと思うの」
「確かに、わたしの魔法を見てすぐに同じ魔法を使うことができるから、ものすごい才能だと思います」
「けれども、急に魔法を使えるようになったので、基礎ができていないのよ」
「基礎? ですか?」
「そうよ。普通は貴女やリーサのように、いきなり魔法は使えないものなのよ」
「え! そうなのですか?」
「そういうモノなの。
通常は、自分の体の中にある魔素の動きを感じるように努力する所からはじまるの。
人に魔素を流してもらって感覚を得る方法もあるけれども、それは余ほどの魔法を使う才能に優れている者に限られるわ」
(わたしは、生れる前から魔法つかえたけれど……)
「エルーシアちゃん。いま『わたしは、生れる前から魔法をつかえたけれど』なんて考えたでしょう」
「考えを読むのは辞めて下さい」
「よんでないわ。顔に書いてあったわよ」
ふと横をみるとマチルダがお腹を抱えて笑っています。
「エルーシアちゃんは、爆裂雷魔法を使って大きな魔力を使うと破壊力がものすごく、地形さえも変わってしまうことがわかり、少し自重することが出来るようになったわ。
でもリーサは魔法を使うのが嬉しくて、全力で魔法を使ってしまうのよ。
近くでエルーシアちゃんの魔法を見ているので、追いつこうと全力でおこなってしまうのよね。きっと」
わたしとマチルダは、深く頷きます。
「エルーシアちゃんも魔力操作に甘いところがあるので、それに役立つ魔導書を、図書館に紛れ込ませたわ」
本を各地から集めていて、その本をコピーしていることを、フレイヤ様は知っているのね。
「その魔導書をリーサに読ませて、魔力操作を覚えさせなさい。
リーサは、貴女と血がつながっているので、実は貴女と同じ魔法を行使することが出来ます」
「わたしが使える魔法をリーサお姉様も使えるのですか?」
「そうよ。エルーシアちゃんが魔法の天才で、リーサが魔法の秀才ね。
エルーシアちゃんは、思いつきで魔法を作る事ができ、リーサは魔法を研究することで魔法を取得するわ」
「確かにわたしは、日本の漫画、ラノベなどの知識があるから、この世にない魔法を作り出せるものね。
リーサお姉様は、魔法を見て研究してそれを取得するのですね。
すごいですね」
「そうよ。
でも、エルーシアちゃんの魔法操作は、個性が強すぎてリーサでは真似ることができないのよ。
そこで、魔導書の登場よ」
「おお! これで、この世界は終末を迎えずにすむわけですね」
「その通りよ。エルーシアちゃん。
この世界を火の海にしないために、魔力操作を覚える必要があるのよ」
「そんなに危険なのですか?」
「危険よ。
リーサは、攻撃魔法の才能がとてもあるのだけれども、それを制御したり、取り消す魔法を使うことができないわ。今のままだとね」
「エルーシアちゃんは、聖属性魔法と発想がずば抜けていて、リーサは、攻撃魔法とくに火属性魔法がずば抜けていて、知識を学び研究することが得意なのよ」
フレイヤ様はわたしを真剣な目で見つめ
「だから、必ず司書が見つける魔導書をリーサに読ませること」
フレイヤ様はそう言い残し、マチルダと部屋を出たのでした。
徒歩で。
使用人達の驚きの声がしばらく続きました。
それにしても、わたしを“ちゃん”呼びになったのは、わたしに叱られたかしら?
35-3話に続く。
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