第3話 わたしは公爵家の長女です。驚いても一瞬で……
廊下から講堂の中を見ると、この場にいるはずのない女性を見て、お目々が飛び出そうなくらい瞼が開き、口がぽかんと開いてしまい表情筋が固まってしまいました。
公爵令嬢として、この領地を治める父の長女としてこのままでは行けないと思い、固まる表情を無理矢理に気合いでほぐして、通常運転の表情の顔を作りました。
わたしを驚かせた教室には、沢山の大人達の中に、よく知っている若い女性が笑顔で立っています。
校長のワーリン、担任のベルティーナ、副担任のペーターと他に二人の教師とヘルマ叔母… じゃなくてヘルマお姉ちゃんです。
そうです。わたしが一瞬固まったのはヘルマお姉ちゃんがいたからなのです。
お姉ちゃんは、結婚式を挙げた後、相手のギャロン叔父様を王都において秒でベルティンに住み始めたのです。
それが、ギャロン叔父様とヘルマお姉ちゃんに子供がまだできていない理由なのでした。
夫婦一緒に生活しないとコウノトリが、赤ちゃんを運んでこないのですよね?
キンコン カンコーン
キンコン カンコーン
はじまりを知らせる鐘の音が皆に届き、児童達は決められた席に着きました。
今回の入学式は、父兄の参加はなく、講堂に児童があつまり先生達のお話しを聞きます。
お父さんやお母さんの参加がないのは、生活が豊かになってきたかといっても、決まった日以外に休みを取るとお給料が減ってしまうところが多いので収入が減ってしまうため。
それと、今まで実験として授業を受けていた、兄ちゃんや姉ちゃんの時も父兄を集めて入学式を行っていなかったためです。
けれど、入学式の代わりの親睦会をこの後予定しています。
児童全員が席に着き、静かになったところで、ワーリン校長先生は、この学校の目的であるは、最終的には、皆が良い生活をして、領地もよくなるようにすることをかみ砕いて説明してくれました。
そして、校長の話の後に、お父様の名代であるヘルマお姉ちゃんから児童の皆へプレゼントを渡しました。
それは、紙の束(ノート)筆、リュックサック(ちょっとランドセルぽい)です。そして数日前の日に上履きを渡しています。
因みにベルティンブルグ領内の新築、アパートやマンションはスリッパを使用してもらっています。
衛生管理が確りしている我がベルティンブルグだからこそできる対応です。
(玄関で靴を脱ぐのは、家の中まで靴底に付いた菌を入れないためもありますよ)
全ての児童に渡し終わったあと、わたしは教壇へ移動しました。
そして、胸を張って視線を前に見据えます。
「ベルティンブルグ公爵領は、社会に慣れはじめた10歳~12歳の方に読み書きや算術を覚えてもらって、ここを卒業すると、よりよい職業に就いてもらう為に学校を作りました。
小等学校は基本無料です。
1年目は、簡単な読み書き、足し算、引き算を覚えてもらいます。
1年間勉強してみて、勉強を続ける気がない人、学校側からみて意欲のない方は辞めることも出来ます。
勉強が出来なくても努力していると学校側が認める方は、辞める必要はありません。
しかし例え勉学が出来て優秀であったとしても、学ぼうという気が無い方は辞めて頂きます。
要は、前向きで、少しでも前進しようとしている方は、わたし達ベルティンブルグ公爵家と学校の職員はその方を応援いたします。
また、2年目からは、魔法の基礎の勉強を加えます。
そして学校行事を増やす計画をしています。
例えば社会見学、これは色々な仕事をする現場をみて、社会の作りを学ぶことと、自分に向いている仕事を考えてもらうことです。
家の後を継ごうと考えている人も、他の仕事場をみることは、勉強になると思います。
例えば、農業職を継ごうと考えているとします。
自分が作った作物は、領主が買い上げ、その商品が市場へと行きます。
市場では、公爵家から許可を取得している商会や仲買が作物を買います。競りで商品の価格が決まります。
そして、馬車などで各地方に送って店頭に並び、店頭の価格が決まって販売されます。
買い取ったのは、個人であったり、加工する商会であったり、飲食店かも知れません。
そういうことがわかると、どのような作物が良いのか、自分の作った作物がどの様に買い手に届くが解るようになります。
文字や足し算、引き算を知っていると、商会と商談が出来るようになります。
言い値で物を買わなくても良くなるのです。
このような社会の仕組みを2年目3年目で学んで行きます。
もちろん1年目よりも高度な事を学ぶ予定です。
例えば、契約書の意味と書き方。かけ算、割り算。公用語。
そして希望者には、格安で高等学校へ進学も出来ます。
高等学校は、各職業を深く学ぶ所です。
わたし達と学ぶみなさまが、大人になって子供を産む頃、黄金世代と呼ばれるよう学んで行きましょう!」
わたしエルーシアは、メリアが掲げているカンペを読みながら高々と声をあげました。
聞いていた児童達は 「「「おお!」」」 とか 「「「わー!」」」とか歓声を上げました。
お祖父様が考えたこの文章。どのくらいの子供達に伝わったことでしょう・・・か?
笑顔でわたしを見つめるヘルマお姉ちゃんを見る目返しながら考えてしまいました。
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