第2話 小等学校

 




今日は小等学校の初登校日、本格的なエア計画が本格的に動き出します。

『エア計画』 覚えていますか?

エルーシアの『エ』 アルーシャ『ア』の頭文字をとってつけた計画名です。

ベルティンブルグ公爵領内の教育改革ですよ。

本来は、エルーシアの頭文字『エ』と語尾『ア』でエア計画でしたが、お母様を教育関係の責任者にするために、お母様のアルーシャの『ア』からとりましたとご満悦にして、責任者にしたのです。




「商会で儲けるので、その利益を、わたし達貴族だけでなくて、領民のみんなに還元したいの!」

わたしは、お父様とお祖父様に熱く語りました。

「読み書きや、足し算、引き算が出来るようになったら、領民達の生活がもっともっと良くなって、それが、わたしたちに返ってくるの」


みたいな事を、なんども、なんども、なんども。

それは何度も言い続け、最後に『女神様が言っていたよ?』

――とあざとく、首を傾けて説得しこぎつけた教育制度。

貴族の中には、領民から搾取する事ばかり考えている領主もいますが、わたしは、与えることで、わたし達公爵家に恩を感じてもらって、その恩を返してもらうという考えなのです。

 お父様とお祖父様は、領民が賢くなると一揆など領民の反乱が心配と言っていますが、地球の世界の歴史を学ぶと、善政をしていれば、革命など起こるはずがないと思うのです。

市民の革命は圧政から起きているのだから。

 領民が賢くなって所得が増えると、税収が増える。

公爵領が潤うと、わたしの生活が豊かになるわ

ふふふ。

なんて考えて馬車に乗っていたらメリアに、

「エレお嬢 顔がデレデレ 気持ち悪い。

何か悪いこと 考えている?」

――って。

最後に『ふふふ』って心の中で笑ったときにあくどい顔をしていたのかな?

領民のことを考えていただけなのに。

けれどわたしは「気持ち悪いって何よ!」と返したら、

メリアに

「気持ち悪い顔 いやらしい 考えていた?」

ハッとしたけれども、わたしは

「違うわよ!学校行ったら友達100人出来るかな?って 考えていたのよ!」


……そんなこと考えてもいなかったけれど、1年生って言えば友達100人出来るかな?と思って言って見ました。 

――が、「エルーシア様 人見知り 無理」


―がーーんー

メリアの一撃に頭の中に鐘の音が響きました。

(あ~あ。確かに無理ね。数年前よりは、ましになったとお母様に言われているけれども)と少し納得してしまいました。

「じゃ、メリアは、友達100人できるのかしら?」


「メリアには、必要ない。エルーシア様だけで充分」

わたしは、「えへへへ」 っと、笑ってメリアの頭を撫で撫でしたあと、ギュッと抱きしめました。

メリアは目を細めて喜んでいます。


「ふふふ。わたしだけでいいって、重いけど嬉しいわ」

と満面の笑みで答えたら


「エルお嬢のお世話だけで手一杯」


ズッコー! …と大転倒


わたしは立ち上がり、メリアのおでこにチョップをしました。


そうこうしているうちにベルティンの小等学校に到着しました。


『初日は絶対に私の運転する馬車に乗って、お嬢様と娘(メリア)に登校してもらう』とまわりに豪語した親馬鹿のワグナー(御者をしていた)に別れを告げて馬車から降りました。


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今日から始まる小等学校は3年制。

そして学費は無料。

読み書き

簡単な算術

地理や歴史等の基礎の知識を学び鱒。

そして、対人関係や団体行動で協調性においても学ぶのです。

その後、希望者は、3年の高等学校へ進学します。

高等学校では、専門的な事を学びます。農畜水産科、学術科(数学、歴史、地理等)騎士科、商業科、魔法科などそれぞれにあった科目の勉強をします。

高等学校は、有料ですがベルティンブルグに籍のある領民は、少額で通うことができます。


わたしとメリアは、ベルティンブルグ領地内の高等学校に進学せず、王都学園に入学予定です。

ベルティンブルグ領の小等学校で成績の良かった2~3名を選抜してその子達と一緒に学園に通います。

選抜された子供は、公爵家がお金を出します。

例え試験に落ちたとしても、学園内でわたしの従者とすることで、授業が受けることが可能になります。




数年前に設立された、孤児院(4歳~15歳)乳児院(0歳~3歳)も含めた教育制度。わたし(エルーシア)とお母様(アルーシャ)の名前からとったエア計画。

当初、幼い子供達から改革をして、孤児を少なくしようとしていた計画でしたが、移民を含めた領民の生活が豊かになったことと治安が良くなった結果、子供を捨てる親が少なくなり、孤児はかなり少なくなりました。

因みに我が領地では、シングルマザーでも収入が高く、片親でも子供を育てる環境が整っているからでしょう。

それに、治安がしっかりしていて、人殺しが少なく、街、畑にしっかりと城壁がある為、魔物・モンスターなどに襲われることもなく、流行病も衛生管理がしっかりしているので、不慮の事故が無い限り若い人が亡くなることはまれになりました。

何故か流行病は、『聖女様(エルーシア)がいれば病はあっても流行ることはない』と領民達が口々に言っているようですが、ベルティンブルグに流行病が少ないのは、手洗い・うがいの効果だと思います。

 それにしても、聖女様はヘルヴェルなのに、わたしが聖女と言われるのは納得がいきません……

脱線してしまって申し訳ございません。孤児が少なくなった理由に話しを戻します。

領地内の民は収入がしっかりしているので、生活水準が他の領地に比べ高いため、捨てられる子供が少ないのでしょう。

わたし達領主一家が驚いたのは、乳児院に入所した子供達は、しっかりと躾られるので、商会の会頭などが養子として引き取ることが多くなりました。

それに、孤児院では、小等学校に入る前に躾をしっかりとして、読み書き、簡単な計算は出来るようになります。

この世界で読み書きができる人は少ないので、勤め先では、とても重宝されます。

勤め先のご主人に認められて養子になる子供がとても多いのです。

乳児院と孤児院は、孤児の子供よりも、シングルマザーやシングルファザー達のお子様預かり所になっています。

そういう理由で子供達は、孤児院や乳児院で遊ぶようになりました。

この年齢の子供達はすでにもうお友達です。

わたしはここ数年、メリアに孤児院によく連れてこられました。

最初は、人見知りが出て子供達と遊ぶことはなかったのですが、メリアのフォローにより、子供達と遊ぶようになりました。

メリアの計画なのか、クラーラの作戦なのか。

わたしは領地内の子供達をほぼ全てが顔見知りになっていたのです。


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「「「あ! 聖女エルーシア様。今日からよろしくお願いします」」」


(わたしが聖女じゃなくて、聖女はヘルヴェルよ!)


「みなさま、わたしは聖女ではありません。ただのエルーシアです」

(大人達は、聖女はヘルヴェルと言っているけれど、子供達は今もわたしを聖女様と呼ぶのよね。勘弁してよ)





そしてわたしとメリアは、聖女、聖女様と騒ぐ子供達と教室に向かったのです。

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