第26話 第一王妃の笑顔
26 第一王妃の笑顔
王妃様がわたしに近づいてきました。
「ふふふ」
――と超絶笑顔のあと
「お久しぶりです。エルーシア嬢。いいえ、ヘルヴェル様」
(ひゃ~! ば ばれてる、私が王妃様と王子お二人の流行病を治したこと)
わたしはその声に対して
スカートをつまんで挨拶をして
「ごきげんよう、王妃様。王都に学園の入試したとき以来ですね」
わたしはとりあえず、ヘルヴェルと呼ばれたことをスルーして話の筋をかえます。
「ふふふ。エルーシアちゃんはその試験で一番成績が良かったようね。お勉強が出来るのね」
「いいえ。わたくしの成績が良かったのは、この領地の教育制度が素晴らしいからです。
その証拠に、わたしばかりでなく、この領地に留学されているオッドリア伯爵家のご長男ライナー様が4位、ご長女のリーサ様が次席と結果を残されています。
そして、ベルティンブルグの領民達も素晴らしい結果を残しましたわ」
「ふふふ。謙遜して。
その教育の責任者は貴女のお母様のアルーシャ夫人ですが、この学校という学び舎を考えたのは貴女ですわよね」
「いいえ。公爵家みんなで考えたのです」
「ふふふ。この教育を領民に受けてもらうために、各商会を立ち上げ税収を多くし領地運営に余裕を持たせ、その運営上の余剰分を領民に還元したのよね。その還元の一つがこの学校制度で、エルーシアちゃんが考えたのよね?」
「ですから家族みんなでかんがえたのです。 け 結果的にそうなりましたけど・・・」
「ほほほ。そればかりでなく、貴女が行っていることは、ベルティンブルグ公爵領にとどまらず、王都のフーツもよい影響を受けています。
とくにお手洗いは最高です。スライムをテイムして排泄物を綺麗にするなんて普通は考えられません。
貴女の考え方、行動力、影響力そして血筋全てが完璧です。
フリードかヴァルデマーのどちらかと婚約して将来は、王妃として、この国を治めてくれませんか?」
「王妃様。大変名誉な事ですが、公爵家を継ぐのはわたしです。我が家には男児がいないため、わたしが領地を治めます。
せっかくですが、ご辞退いたします」
「あら。全く悩む時間も無いほど即答ね。
貴女には妹がいるではないですか? ファリカ嬢が婿をとって領地を任せて、貴女が王妃として王家に嫁ぐことも出来るのですよ」
「ふふ。王妃様。申し訳ございませんが、わたしは王妃になろうとか、国を牛耳ろうとかそんな野望はございません」
「でもね。エルーシアちゃん。
私の息子のどちらかと婚約するだけで、今後起こるであろう障害を防ぐ事も出来るのよ。例えば教会からの勧誘。きっと貴女を取り込もうと教会が動くと思うわ」
「そうでしょうか?」
「エルーシアちゃんの今までの行動は、王家と公爵家で隠しているのよ。
この間、フレイヤ様が現れたそうね。そして領民に神託をあたえたのでしょう?
あの場では、皆に黙っていることを約束させたけれど、この豊かな領地とヒーナ商会は、この国だけでなく、大陸中で有名なのよ。だから探りを入れるために陰を放している者も沢山いるのよ。そして何よりも貴女の聖女の紋章これだけでも教会が取り込もうとするわよね」
「・・・ ・・・ (って言うかもう狙われているし)」
「ごめんね。なんだか脅したみたいになってしまって。でも私は貴女のミカタなのよ。私だけでなく、宝のように大切な息子も助けてもらったのですから。
ですから、なにかあったら公爵家だけでなく、私にも頼りなさい」
王妃様は笑顔を私に向けてお話ししてくれました。
「そして何よりも、貴女のように超絶可愛い娘が私の娘になったら、嬉しいのよ」
そう言って王妃様は、オークのお肉を食べるために焼き台の近くへ行ってしまいました。
王妃なんて、国家の母なんて立場絶対に嫌だな~。
まだ結婚なんて考えられないし・・・
(あれ? 王族の一家がいるのに、こんな緩い警備で大丈夫なのかしら?)
わたしは、この会場を見回してそう思いました。
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