第一章 エルーシア十歳になる

第1話 ベルティンブルグ公爵領 (前)





 わたしが宙に飛び、“聖女の紋章”のレベルが二段階上がった日。

流行病が終息した日。あの出来事を知る者達からあの日のことを『奇跡の一日』と呼ばれています。

紋章のレベルが上がったと言われましたが、実際は聖女の紋章を持つわたしのスキルなどのレベルが二段あがったと、フレイヤ様が言っていました。

一段階だと、聖属性魔法以外も得意な属性が増える。

それから更に一段上がると、紋章を媒体にして魔力を空気中から集める機能がつく。つまり、わたしに今住む世界では、わたしの魔力が尽きそうになったら紋章に気を回すだけで、魔力の補充ができるのです。

わたし人間辞めたのかしら……


 奇跡の一日から数日後、公爵令嬢のわたしエルーシア=ベルティンブルグが初めて「爆裂雷魔法」をぶっ放してから約5年経ちました。

わたしとメリアは今年で十歳です。

そして、わたしには可愛い妹ができました。

 そのお名前は『ファリカ』 

今年、四歳でーす。

拍手――パチパチパチ


お母様と赤ちゃん(ファリカ)に大事がないように、回復魔法をかけ続けたかいがあって、母体も問題なく、元気な赤ちゃんが爆誕したのです。

(桃太郎が桃から飛び出てくるイメージ)



お父様とお母様のお二人の血を受け継いだ子供が出来ても、わたしは捨てられることがありませんでした。

(はあ。良かった!)


クラーラも無事に女児を出産しました。名前はホルダちゃん。四歳。

妊婦だったクラーラに会う度に、こっそりと回復魔法をかけていました。

そのたびにピカピカと光るため。

「お嬢様は、いつも後光が差していますわ。

女神様の御意向かしら」とクラーラはいつも首を傾げていました。

ピカピカしていたのは、クラーラなんだけどね。

クラーラは、超絶かわいい妹ファリカの乳母になってくれました。乳母と言うよりも教育係かも?

 配偶者のワグナーは、公爵家とヒーナ商会において、運搬に関わる部署の一番偉い人になりました。

日本で言う所の部長さん? 役員さんかな?

ワグナーは御者からのものすごい出世をしたので、お父様に背中を押されマイホームを建てました。

そのため、住み込みでなくなったクラーラは、昼間だけファリカのお世話をしてくれるようになりました。

(ファリカの乳母は、クラーラの他に二名います)

因みに、クラーラのお家はベルティンブルグ公爵家のお屋敷の隣です。


そういうわけで、わたし専属の侍女はグイダになりました。

グイダは、わたしとの関わりが深かったので人見知りもありません。

それに、天然メイドと思っていましたが、芯が確りしていて、わたしを優しく導く“おねえちゃん”みたいな感じです。

(クラーラは、厳しいお母様二人目みたいな存在)


 そして、ギャロン叔父様とヘルマお姉様が結婚しました。

子供はまだのようです。

それには理由がありますが、後日機会があれば……



ベルティンブルグ領は、農産物の収穫量が四倍以上になりました。

それに牛肉・豚肉・鶏肉・たまご・毛皮・飼馬などの畜産業もかなりの発展がありました。

穀物類は倍以上の収穫ですが、新たに栽培された野菜や果物も多く収穫出来るようになりました。

とくに甜菜(テンサイ)は、ベルティンブルグの北部(山岳地帯近郊)の気候にあっていたみたいで、多くを収穫しています。

甜菜が多く収穫できるという事は、砂糖を多く製造できるということ。

高額な砂糖の多くはベルティンブルグ領地内で消費しています。

ほんの僅かな分だけ王都に送り、ヒーナ商会の傘下の商会で販売しています。

王都に居住する貴族は砂糖が欲しくて、五年前よりも、さらに価格が上がっています。

 それまでは、仕入れた商会が直接、消費者に販売。もしくは、生産者が直接、上位貴族や王族に卸していたのです。

けれども、ベルティンブルグ公爵家が甜菜を発見。砂糖の生産を開始したため、砂糖はお金を出すと手に入る物になったからなのです。

 ベルティンブルグでは、ハチミツも採れるようになりました。

それは、ノーフォーク農業に変更したので、クローバーを休耕地に植えて蜂を飼うことにしたのです。

結果。砂糖、ハチミツがあるので、甘味の製造をベルティンブルグ公爵家が領地の産業として推進しているため、お菓子類を王都などで販売を開始しました。

砂糖を直接売るよりも、付加価値のあるモノを売って稼いでいるのです。

甘味を領地内で作る事で、砂糖に携わる人々以外にも職を増やし雇用を増やすためです。


それに領地内では鶏・豚・牛・羊などの家畜の飼育をはじめました。

たまご・牛乳そして、ベーコンなどの加工物も多く造られるようになりました。


領地内の備蓄も1年分以上もあり、災害にも対応できるようになっています。

穀物倉庫には、鼠返しなどを設置。

更に虫や鼠などが近寄らなくなる魔法を開発して穀物を保存しています。

今後は穀物の品質を維持する魔法や、道具を作る事が課題です。

アイテムバッグに穀物を収納して品質保持も可能ですが、わたしに事故などがあると使用不能担ってしまいます。

マジックバッグは、魔法使いや魔導具師が作れますが、時間停止の機能がないのです。

 マジックバッグを使うのなら、品質保持の魔法を穀物にかけて収納するか、温度・湿度など環境の良いところにおかなければいけません。

それにマジックバッグは、高額なのです。


そして、ヒーナ商会は、フーマ王国内はもとより他国に進出。

商材は、香りのもっとよい石鹸・シャンプー・コンデショナーなどの商品を追加しました。

フーマ王国国内全域では、衛生商品の販売が主な売上です。

他国では、香りのもっとよい石鹸・シャンプー・コンデショナーなど貴族のご夫人やご婦人(貴族女性ですね)に大人気です。

美容は貴族女子だけでなく、一般人にも興味があるはずなので、今販売している商品に改良版や新製品が出た場合は、元の製品をもっと原価を抑えるように製造して、価格安く販売する予定です。

 おトイレ産業は、王都(フーズ)とベルティンブルグ領地内だけです。

それは、便器などの製造とスライムちゃん達が追いつかないのです。


 それでも、ヒーナ商会の利益額は一国の予算額を越えてしまいました。

そのことによって、ベルティンブルグだけでなく、税収が多くなったフーマ王国も豊かになってきています。


因みに今、醤油と味噌造りに挑戦中です。

(魔法を使ったら作れるようになったけど、魔法を使わないと上手く発酵しないのです・・・)

発酵方法を発見して、わたしの魔法を使わなくても製造することが目標!

なのです。



――――――――――――――――――――

※1話が長くなったので、ここで切らせていただきます。

明日も投稿いたします。

よろしくお願いします。

作者


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