聖女の紋章Ⅱ 『逆襲のエルーシア』 ~小等学校に通うことになったけれど、世界の理も学ぶことになっちゃった~

I。ランド

0話 プロローグ




 雲一つ無い午前。

わたしと横にいるメリアの髪が風に揺れています。



「エレお嬢 魔力 ちょっとだけ

頑張り よくない 約束」


わたしは、相棒の提言にコクッと頭を動かしました。

目線をメリアから今回のターゲットに視線を向けました。


「わかったわ。

それじゃいくよ。メリア!」



 メリアがコクッと頷いたのを確認しました。

わたし、ベルティンブルグ公爵家の長女エルーシアは、利き手の人差し指を約五㎞あるほど離れた場所に向けました。

 指を向けた先は、宇宙から大きな隕石が落ちたかと思うほど、山(森林)の形を変えてしまった場所。

領都ベルティンから西(正確には、西南西)の自然豊かであった小高い山が続く端の森だった所。

つまり、わたしが前回ちょっと強めな雷魔法を落としたあの場所です。


 《爆裂雷魔法~》

わたしが詠唱破棄で展開した魔法で、空一面があっという間に黒い雲が現われて、辺り一面が真っ暗になりました。

すぐに、ビカビカとあの地から閃光で目を閉じてしまうほどの光量、耳を塞ぎたくなるほどの爆裂音……


魔法の成功を確信したわたしは、ニヤリとニヒルな笑いをしました。


ずーーと遠くに落ちた爆裂雷魔法時に起きた風に揺られながら、わたしは、お母様に説教された事を思い出しました……


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 


 わたしエルーシア=ベルティンブルグは、地球で生きてきた過去の記憶を持ったまま、伯爵家の夫人から生れた転生者です。

 すったもんだがありまして、産みの親の伯爵家に捨てられ、公爵家に拾われて、公爵家の娘として育ちました。

 わたしがみなさまと違うのは、地球で過ごした記憶があるだけ無く、利き手の甲に“聖女の紋章”が現われることです。

 女神に愛され、聖女の紋章があるわたしは、魔法と知識を使ってベルティンブルグ公爵領を流行病から救ったのです。


 説明はここまでにして、お話しを戻します。

思い出したのは、聖属性魔法を使って公爵領を流行病から救った数日後、爆裂雷魔法を使った夕方のことです。

お母様の“お小言” どころでなく “お大言“と呼べるほどの大説教をされちゃいました。

地形が変わるほどの、強力な魔法を使ったためです。

それで、わたしと幼なじみで護衛のメリアの二人は、超絶なが~い時間、正座させられちゃいました。

しかもその日は夕飯抜きでした。

(令和の日本ですと、児童相談所に通報されるかも知れません)


お母様のありがたいお言葉が終わり、立ち上がろうとしたら、産まれたばかりの子鹿のように脚がプルプルしたのです。

プルプルって言っても、わたしが飼っているスライムちゃんじゃないですよ。

脚が痺れてしまったのです。

しかも、足首が硬直して上手く曲がらない。

ギブスで足首を固めたわけじゃないのに……


そんなメリアとわたしの足にチョンとお母様が触れてきます。

「「ふんがー」」

女の子らしくない悲鳴を上げたわたしとメリアに、お母様は、

「これに懲りたら、破壊行為は駄目よ」

――と超絶作り笑いをして語ってきます。

お母様は、何度もこの攻撃と台詞を繰り返すのです。

そのたびにメリアとわたしは悲鳴を上げて床に倒れ込むのでした。


それにしても、この世界でも、日本のように悪いことをすると正座なのですね。

(今度悪さをしたら、押し入れに閉じ込められてしまうのかしら?)


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 さて、お話しを冒頭に戻しますよ。

メリアとわたし達は、ベルティンの街から外に出て、丘の上にいます。

実は、この冒頭の回想は、四年と180日前です。

つまり、聖女の紋章Ⅰの終わり、つまり邪悪なモノを感じて爆裂雷魔法をつかってから180日後くらいの出来事。


 お母様にあんなに怒られたのに、何故に再び爆裂雷魔法を使っているのか?


それは、あの場所に新しい街を作るために、クレーターになっている地形の東側に衝撃を与えて人が出入りするようにして欲しいと、お祖父様とお祖母様そして領主のお父様に頼まれたのです。




《爆裂雷魔法~》


あの時と同じように、雨雲が集まりはげ山(森林)周辺は真っ暗です。


そ し て


ビカビカビカと幾つもの雷の閃光が走りました!


ドーーーーーーーン!

ドドーン! ドドドーン! ドドドドーン!

バリバリバリバリ!!! 

――と大きな音が聞こえた後

グラグラグラと地面が揺れました。



「爆裂雷魔法成功で~す」

わたしは、胸を張りました。

すると


パチパチパチ

パチパチパチ

パチパチパチ


お父様とお祖父様、そして何故か王都学園卒業後ここに住み着いているヘルマお姉ちゃん(叔母様)、文官が盛大な拍手をしてくれています。

わたしは調子に乗って

「もう一発ぶっ放しても良いかな?」


パコーン


振り向くと、笑顔の仮面を貼り付けたお母様がいました。



ひどい……





みなさま、この物語をみつめていただきありがとうございます。

この物語は、『聖女の紋章 ~公爵領の魔法幼女は女神の紋章を持つ転生者 ~』の続編です。

よろしければ、聖女の紋章Ⅰを読んでいただいた方が、物語を楽しめると思います。

I。ランド (幸之丞)

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