第22話 引っ越し




さあ!今日はお引っ越しの日だ!!!


――と気合いを入れましたが、わたし達家族は、雇っている者達が引っ越し作業をするのでする事が無いのです。

 それに、ほとんどの家具は新品なので、大きな荷物はありません。

何よりも、わたしには、秘密のポケットがあるのです。

わたしに関する大きなモノはスライムちゃんの家ですが、それも秘密のポケットで移動すれば、あっという間に終わるのです。

雇い主のわたし達一家は楽ですが、使用人達はそんなわけには行きません。

私物はアイテムバッグやアイテムボックスを貸し出して、それに入れて荷物の移動はできます。しかし、掃除とか絵画などの取リ付けなど色々とあるからです。

わたし達が住んでいたお屋敷は、お父様の弟のギャロン叔父様夫妻が住みます。

お屋敷が増えることで、新しい使用人が必要になりました。

そこで、ベルティンと王都のお屋敷の使用人に、どこで働きたいか希望を募りました。

使用人の希望の結果、王都からベルティン、ベルンの領地内で働きたいと希望する使用人が多かったのです。

 我が公爵家の機密事項は、お父様? (あれれ? わたし自身が秘密事項かも?)握っていることもあり、王都で使用人募集を大々的に行い、採用しました。

 王都のお屋敷に、スパイみたいな人を採用しても、秘密事項が漏れることが少なくなるのです。

 領地内の採用ですが、学校を作るために、生徒として協力してくれた若い人達の採用を行いました。その者達は、教養を生かしたいと、お屋敷、べルティンブルグ領のお役所に多くの方を採用しました。

でも、まだまだ人材不足です。


メリア一家は、お家がベルティンにあるのですが、メリアと別になりたくないわたしと、メリアの妹のホルダと別れたくないファリカが希望して、ベルンに新しいお家を建てて引っ越しすることになりました。

ワグナー、クラーラ。わたしとファリカの我が儘でまた引っ越しさせてごめんなさい。


そして、レーア叔母様とリーサお姉様ライナー兄様も、オッドリアの領地から呼び寄せた使用人達と別館に引っ越しです。

(って叔母様いつまでいるのかしら?)

叔母様は、お母様と新しく衣類の商会を立ち上げました。

主に女性向きのお洋服で、貴族ばかりでなく、ここで暮らす人向けで、ちょっとした日に着る服を作り、若い女性にもご婦人にも人気が高いのです。

因みにこのブランドの衣類のデザイナーはわたしです。

このブランドの広告塔は、お母様姉妹。リーサお姉様。

そして王都では、お祖母様や使用人に着せて街に出てもらっています。

男性用もあり、お祖父様とその子供達と孫が王都の街を闊歩しています。


叔母様は、このブランド(商会)で、かなりの金額を稼ぎ、オッドリアに仕送りをしていると聞いています。

この領地の住民は女性であろうとも結構な収入があるので、お洋服を買うことで家計を圧迫することは少ないようです。

因みに、この商会で古着を下取りで買い取って、他の領地や国で販売されています。これも結構な利益がでるそうです。




わたしとメリアとお姉様と兄様は、わたしが作った空飛ぶ魔導具を使って新しいお屋敷に行きました。

空飛ぶ魔導具は、青い耳のない猫型ロボットの秘密道具のタ○コプターです。

新しく住むお屋敷は、街一番の高台にあって街の全体が見えます。

お屋敷の裏手より水が引いてあります。このお水が街全体に行き渡ります。

そして大きな浄化槽があり、本館(私の住むところ)別館1(叔母様の住むところ)などその他の別館と、メリアの住むお家の一画がそれを使用します。

もちろんお屋敷のお庭には、スライムちゃん達の小屋もあります。


お部屋を整理するためわたしは自室に移動しました。

秘密のポケットから、さっさと衣類や調度品など私物を出します。

(あれ? わたし貴族の娘だから自分で荷物運ばなくても良かったよね・・・)

そして、部屋の両開きの扉を開け、窓から街を眺めました。

窓からは、お父様や叔父様が仕事する領地館が見えます。

領地館の奥には、鳥居があり参道の先には社務所があり、拝殿本殿があります。

本殿と拝殿はこの世界では珍しい木造の建物。社務所は土属性の魔法で作った建物です。

ヴァン神教では、本殿と拝殿があり、それぞれ木造の造りです。

わたしが陽菜だったとき、家族で行った伊勢の神宮の内宮の建物を思い出し、シュタインの弟子で木造建築に詳しい者と相談して作ったのです。

そして伊勢の神宮にならい式年遷宮することに決めました。

式年も神宮に倣い二十年です。

 意識を元に戻し、視線をちょっとずらすと――

「え? あんなの無かったはず、アレなーに!?」 ―と叫んでしまいました。

わたしが叫んだ理由それは、拝殿横に女神のフレイヤ様と

わ た し ?の石像が!

何故か、胸が強調されているフレイヤ様とわたしらしき石像があります。


「んん? 見なかったことにしよ!」


わたしは視線を外して他をみました。

教会らしき建物の奥には、公園があり、その奥には立派な建物が数軒あります。

立派な建物の奥には、商店や住宅街が広がっています。

所々に風車があって碁盤の目のように綺麗に道路が整理されています。

街は森林に囲まれて、街の入り口には、大きな門があります。そこには門番がいるのがわかります。

門の外は、一面に畑があります。

その畑の南側の一部には、稲作も始めます。


「今日からこの街でお世話になります」

わたしはそう言って窓を閉めて引っ越し作業に戻ったのでした。

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