第5話 大人も学びたい?




チュンチュン

チュンチュン


小鳥のさえずりを聞いて目を覚ましたわたしは、ベッドの上でグッグッと背伸びをします。


 わたしが起きたのを察知した使用人は、ノックをしてお部屋に入りカーテンを開きました。

 わたしは、窓から見える小鳥を眺めながら考えます。


産みの親である、レーア叔母様の来襲は予想できませんでした。

それにしても、オーク肉を召し上がる叔母様は、本当にお母様と瓜二つです。

お母様のお顔を見ても動揺などしなくなったのですが、母と同じ叔母様のお顔を見ると胸がザワザワします。


「さあ、気分を変えて、今日も頑張りましょう!」

わたしが呟くと使用人が着替えを手伝ってくれました。


「エルーシアお嬢様。

朝食の準備ができています。

このまま、食堂へ移動してください」


使用人の声を聞き、頷いたわたしは、瞼を右手でこすりながら、食堂へテコテコと歩いて行きました。


そこには、オッドリア伯爵家の、叔母様と叔母様の子供2人がいました。

わたしは無詠唱で、回復魔法と治癒魔法を叔母様とリーサお姉様に魔法をかけました。

軽く、食堂が明るくなりましたが、お父様とお母様がその現象をスルーしたため叔母様が口を開きました。

「この部屋は陽の当たりが良いようですね。

おはよう。エルーシアちゃん。


「叔母様おはようございます」


「おはよう。エルーシアちゃん」


「おはようございます。ライナー兄様」


そして、リーサお姉様がわたしの横にきて


「おはようですわ。昨日は男の子に囲まれてすごかったですわ」


「おはようございます。リーサお姉ちゃん。領主の娘なので、珍しくてみんな集まっただけですよ」


その答えに、ライナー兄様とリーサお姉様が

「え?あんなにモテモテなのに、自覚ないの?」

と言っていましたが、声が小さくて聞き取れませんでした。


「お兄様、ライバルが多くて大変ですわね?」

わたしはまたリーサお姉様の声が小さくて聞こえませんでした。

しかし、ライナー兄様は

「あ! ああ、そうだな」と言って顔を真っ赤にしています。

何故がお母様と叔母様は影があるというか、微妙な表情でライナーお兄様を見ています。

本当にそっくりな顔で。


「さあ、学校に行く準備をしなければならないわ。

はやく朝食を食べてしまいなさい」

満面の笑顔に切り替えたお母様に言われてしまいました。


わたし達は女神様に祈りを捧げた後

「「「いただきます」」」

3人揃って食べ始めました。


「エルーシアちゃん。これから私の子供達よろしくお願いね」


「はい、叔母様。むしろわたしの方がお世話になると思います。

それはそうと昨日のオークのお肉はいかがでした?」


「今まで食べた中で一番おいしかったわ」


「そうですか。あのオークは、狩った後すぐに血抜きをして、解体して冷暗所で10日ほど置いておいたものです」


「あら。やっぱり手がかかっているのね」


「どんなシンプルな料理でも手をかけるとおいしくなるのです」


と話しているとお母様が


「レーア。あのオークはエルーシアちゃんとメリアの二人で狩ってきたものなのよ」


「「「え? 女の子二人で狩ってきたの?」」」


叔母様一家は目を見開いて、口をぽかんと開けています。


こんな可憐な女の子二人がオークを倒してしまうなんて普通考えられないですよね。

そしてわたしは、ドヤ顔を決めました!



お母様は、ドヤ顔を見事にスルーして

「ああ。そういえば昨日の親睦会で、父兄やお店などの経営者から、大人達も勉強をする機会が欲しいって言われたわ」

とお母様が頬に手をあてています。


(大人達の勉強。これは教科書を作った方が良いのかしら?

うちの領地は紙を作る職人もいるから・・・ あとは、印刷物。印刷するものと、それ用のインク?版画を利用して印刷物を作れば良いのかしら・・・)


「子供達が勉強を終わった後に大人の勉強会をおこなったらどうなのかな?

お昼を作っている人たちに夜ご飯も作ってもらって。

大人達が勉強している間、子供達はクラブ活動をするの。剣術とか針仕事とか音楽やお絵かきして、時間を潰してそれが終わったら大人達とご飯を食べて、後片付けしてみんなで帰れるようにしたらいいかな?」


「クラブ活動? 子供のいない大人達はどうするの?」


「今すぐは出来ないだろうけど・・・ 夜間学校をつくる?

教える方も休みが必要だから、もっと教える人や方法が増えてからだけれど・・・ 」


「そうね。先ずは、小等学校を軌道に乗せないと駄目ね。今まで急激に変えてきたから少し休むというか、ゆったりとした時間も必要よね」


「あと六年経てば、入学した者達が教える方に回すことができるから、そこから動けるように準備した方が良いわね。

ああ。 違うわ。 今の三年生が、高等学校を卒業すると教える資格ができるからあと四年で、人員増加を望めるからその間ですね」


そうこう話していると、メリアが迎えに来たので、私たち子供は4人で学校へ行くために馬車に乗り込みました。

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