第32話 親友と書いてマブダチと読む
そして、朝陽の時間です。
わたしは、夢の中のフレイヤ様との会話を思い出し、話しを頭の中で組み立て直します。
お父様にお話しするためです。
着替えなど身支度をして、食堂に向かいました。
そこで、昨夜の夢(フレイヤ様との会話)をお父様に話しました。
お父様は、朝食をそこそこに、急いで執務室に向かいました。
どうやら調査団に地形の他に動物の生態系を調べるように命をくだしてくれたようです。
調査は今年と来年行います。
その後、ベルティンブルグ以外の土地は、国と話し合って行う場所を決めます。
朝食から数時間後、調査団をお見送りするために、お母様やメリアなどお父様や調査団のいるベルンの出入り口の門に移動しました。
式典が終わり、颯爽と調査に出る魔法使い達を見送り、お屋敷に帰ろうと馬車に乗り込もうとしたところ。
「あ! アレは何だ?」
門番のキッチィの声が響き渡りました。
空を見上げると、そこにはとても大きなモノが見えました。
そしてそのモノがどんどんと近づいてきました。
「え? 竜?」 わたしの台詞
「こ 古竜じゃないか!」 お父様の台詞。
「やばい、やばい、もう終わりだ・・・」 知らない門番さん。
「女神様助けてください」 鑑定士のエバーハルト。
「エルーシア様助けてください」 門番のキッチィさん。
「竜のお肉は美味しいのかしら?」 お母様。
などなど色々聞こえてきます。それにしても、お母様は、病弱キャラから食いしん坊キャラに変わったのでしょうか?
その大きなモノは、確かに竜でした。
その竜はわたしを見つけると、「エルーシア!」と言って空から降りて来ます。
「え! わたし? 竜の知り合いはいませけれど・・・」
ドーーーン
竜は音を立ててわたしの前に着地しました。
砂埃が舞わないのは、竜の親切心なのでしょう。
周りを見ると、みんなは腰を抜かしてアワアワしています。
(メリアとお母様をぬかして)
そしてメリアが
「貴女 誰?」
竜に向かって聞きました。
(メリア。マジ最強!)
「ああそうか!このままじゃわからないのだ!」
(のだ? 語尾に“のだ”ってつけているのって昨日助けた・・・)
――と、わたしが考えていると
古竜はだんだんと小さくなり、なんと! 綺麗な女の子になりました!!!!!!
「「昨日、助けてご飯を一緒にした女の子!!!」」
わたしとメリアは声を揃えて叫びました。
「エルーシアよ、私を助けてくれたお礼に、マブダチになって欲しいのだ! そしてマブダチの私に名前を決めて欲しいのだ!」
「え? わたしが竜の名前をつけるの? 魔力ごっそり持っていかれないかしら?」
「大丈夫なのだ! エルーシアの魔力の三分の一くらいなのだ」
「え、でもそんなに持って行かれるのね?」
「竜の名付けはとても名誉な事なのだ。普通の人間にはできないのだ!」
ええ。確かにそうでしょうね。
わたしも竜とお友達の人間は聞いたことないわ。
しかもマブダチって、まるで、スライムの魔王と竜を親に持つ女の子みたいじゃない。
「のだ」 って語尾につけているし……
「エルお嬢 名前 はやく きめる 私 おなかすいた」
とメリアの発言に
「そうなのだ。私もおなかすいたのだ。はやく名前をつけるのだ!
そしてご飯と美味しいデザートを食べに行くのだ!」
(早く名前つけろって、スライムじゃないんだから・・・
わたしとマブダチ マブダチ ・・・ 友達 フレンドリー・・・ )
「あなたの名前は “マチルダ”。 『マチルダ』で如何かしら?」
「“マチルダ” 良い名前なのだ!
親父にも殴られたことない坊やの憧れの女性と同じ名前なのだ。
私は今日からマチルダでエルーシアのマブダチなのだ!」
と竜が、某MS(モビル○ーツ)を操縦していた少年と似たような事を、言った途端、マチルダとわたしがピカーっと光りました。
光るのとほぼ同時に魔力がごっそり持っていかれました。
(親父にも殴られたことない坊やの初恋の人も、“マチルダ”=アジャンだったわよね? 店長がよく言っていたわね)とどうでもいい事を考えていると。
マチルダが
「私とエルーシアは、同格契約なのだ! だからどっちが上とか下とかないのだ。これの便利なところは、どんなに離れていても心がつながっているのだ! そして、私には出来ないが、エルーシアは私を召喚することができるのだ!」
「はい。そうなんですね。マチルダこれからよろしくお願いね」
熱く語るマチルダにわたしは冷静になり、冷たく返してしまいました。
「お願いついでに、私はエルーシアと一緒に住むのだ。だから人化したのだ。そして、甘いデザートを毎日食べるのだ!」
「マチルダを飼って良いかお父様に伺いますからちょっと待ってね」
わたしは腰を抜かしているお父様に
「お父さん、マチルダと一緒に暮らしてもいいかな? 良いよね? いいって言わないと作ったばかりのベルンが壊されるかもよ」
あざとい笑顔を顔に貼り付けて脅迫しました。
「え?(スライムの次は竜?)まあ、エルーシアちゃんがしっかりと面倒みるならかまわないよ」
お父様顔からは、額から水かしたたり落ちています。きっと冷や汗なのでしょう。
(竜のお世話ってどうやってするのかしら? まあいいか!)
「はい。ありがとうございます。では、お母さん。お父さんがマチルダを飼って良いって言っているけどいいかな? 良いよね?」
平然とマチルダを観察している、お母様に聞きました。
「良いわよ。エルーシアちゃんのマブダチですものね。でも学校はどうします?」
「もちろん、通わせますわ。人間の常識も覚えて頂きましょう」
「マチルダ様より先にエルーシアちゃんが先に常識を覚えなさい」
お母様が何か言葉を発したようですが、わたしには聞こえません。
お母様の発言にみんなが、ジト目を向けてきました。
こんな常識のあるわたしにみんなそんな目で見るのは何故?
この後、マチルダと家族でランチをして親睦を深めました。
マチルダって戦いの乙女って意味もあるらしい・・・と後で気づきました。
みなさま。お疲れ様です。
作者です。
古竜マチルダとの同格契約ですが、エルーシアにとって、プルプルとポヨポヨ達、スライムとかわらない考えのようです。
『マチルダを飼って良いかお父様に伺いますから…… 』との台詞から伺えます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます