聖女の紋章Ⅱ 『逆襲のエルーシア』 ～小等学校に通うことになったけれど、世界の理も学ぶことになっちゃった～

第28話 子供に聞かず大人は考えて

わたしが小等学校から帰って、お屋敷の面談室にて。

｢リカード公よ。2日間、ベルティンブルグを見せてもらったが素晴らしい領地だな｣

｢はい。お褒めにいただき感無量でございます。

この領地の繁栄もひとえに国王の思し召しでございます｣

｢リカード公。そんなに謙遜するな。

ベルティンだけでなく、他の街や村にも教育制度は領地内隅々浸透しているのだな。

街並みは綺麗だし、嫌な匂いもしない。なんといっても領民達は目を輝かせて生活をしている。それは貴殿がしっかりと治めているからじゃ｣

｢いえいえ、陛下。私は、娘のエルーシアの言葉に従い領地運営をしているだけでございます。結局、領地運営には多大なお金がかかりますが、エルーシアが商会をはじめて多額の税を納めてくれるようになったためでございます｣

｢いやいや、エルーシアちゃんの年齢ぐらいなら子供の言うことだと、普通の大人なら相手にしないはずじゃ。それをきちんと受け止めて行動するのがすごいのじゃ｣

｢は、は～　お褒め頂きありがとうございます。これからも精進いたします｣

｢ところでエルーシアちゃん。ここの教育制度じゃが、王都でも同じような形に作り替え運営してもよいかな？｣

｢あの～王様。教育関係は、母のアルーシャが責任者ですので、母に聞いてください｣

わたしがそう言った途端、お母様が血相を変えて

｢いいえ、学校などの教育制度は、エルーシアが考えて形を作って運営にめどがついたため、私が責任者になっただけですので、的確なアドバイスなど出来ません。ですから、是非詳細につきましては、エルーシアに聞いてくださいませ。陛下｣

｢アルーシャ夫人、承知した。

わしが思うに、公爵一家のように平民に与えることが、我が身に返ってくるとわかっている貴族はまれじゃ。

平民は貴族のために働けば良い、金がなければ領民から搾取すれば良いと考えている輩が多いのじゃ。まあ、そういう余もその1人であったがな。

領地を治める者達に、平民が豊かになれば、領地も国も豊かになると考えることが出来るようにしたいのじゃ。

先ずは、王都の識字率を増やし職業の選択を出来るようにしたいのじゃ。

エルーシアちゃんどうか力を貸してくれ｣

王様はそう言って頭を下げてきました。

頭頂部がみえたので、覗いてみたけれどハゲいない……ね。

でも、髪型で隠しているのかな？

ちょっと笑いそうになったわたしですが、

｢陛下、頭を上げてください（笑っちゃいそうなので）。

現実にベルティンブルグ領をみたらわかると思いますので、宰相様にお話しすれば、良いと思います。

それよりも治水のことをお願いします」

（搾取はNO.なのです。大人だから少し自分で考えなさい）

「そ、その通りだな。エルーシアちゃん。

もちろん治水についても協力するぞ」

「ありがとうございます。治水については冬になる前に下調べを始めます。

それと、今まで温かすぎて小麦が育たなかった土地ですが、稲作をしようと考えています。あぜ道をしっかりと作ってそこに水がたまるようにします。

それは、治水対策の一環にもなります。有事の時、水を貯めた場合には農家には補償をするように考えています」

「わかった。頼むぞ、エルーシアちゃんそしてリカード公。

――と堅苦しいのはここまでにしよう」

「陛下。いいえ、あなた。エルーシアちゃん何ですけども、教会から守るって事で私の息子のフリードかバルデマーのどちらかと婚約させないかしら？

エルーシアちゃんがもしも教会に取り込まれてしまったら、今後の計画に遅れが出てしまいますわ」

王妃様は、王様にそう提案しました。

「エルーシアちゃんは何処にも嫁にださ～ん！！！！！！！」

お父様はぶち切れてお外にも聞こえるくらいの大声で叫びました！

（うふふ。わたし、愛されている。これで、たぶん捨てられないわよね･･･）

ドー―――――ン！！

アルーシャお母様は慌ててお父様の鳩尾にグーでパンチを入れて大人しくさせました･･･

（お母様　こわ～い）

　王様も王妃様も、お母様のパンチ力に唖然とするのでした。