概要
昼は静謐なビジネス・タウン、夜は歓楽街と摩天楼。
昼夜で異なる姿を見せる大規模な都市、シアハニー市のロザー・シェレフ地区、俗称で〝地獄〟と呼ばれる場所に生を受けたデュランは、したたかに生きていた。
彼は、アイベリー地区、〝天国〟で生まれた少女アネモネに出会い、彼女に恋をする。
主人公とヒロインは純愛ですが、周りの環境に引き裂かれてしまいます。痛み、悲しみ、苦しみ、その中でもわずかに輝く愛がテーマです。
SPECIAL THANKS 雪月様
(デュランの生物学上の父が登場して喋るシーンで、詐欺師らしく喋らせてみては? というアイデアを元に改稿を加えました。ありがとうございます!)
以下、シアハ
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- ★★★ Excellent!!!いつまでも、どこまでも――
読了後のレビュー。
全十話で展開される天国と地獄――極度に二極化された世界が大通りで分かち共存する都市シアハニー市。この街のスラムの地獄で主人公デュランは不法移民としての不遇の過去とともに生きる。
デュランは天国と呼ばれる富裕層の区画から出てきた瞳の美しい一人の少女アネモネと出会う。彼にとって彼女はペインキラーとも天使ともつかない、汚穢の闇獄を明るく照らす輝ける存在だった。そして互いに心惹かれ、次第にかけがえのない存在へと物語はいざない加速していく。
目を引くのが、二人を巡り合わせる高い構成力だ。生い立ちや生活水準・家族構成など、二人の間に圧倒的な格差が存在しながら、引き合うように離して…続きを読む - ★★★ Excellent!!!あの幸せな日々には戻れないけれど…。それでもいい、貴女のそばにいさせて
昼は静かなビジネス・タウン。夜は歓楽街と摩天楼〔まてんろう〕。
昼と夜で違う顔を見せるシアハニー市のロザー・シェレフ地区。通称”地獄〔ヘル〕”と呼ばれる貧民街で生まれたデュランは、偶然出会った”天国〔ヘヴン〕”アイベリー地区で生まれたアネモネに恋をした。
しかし、あることがきっかけで、二人は会うことすらできなくなった。
苦しみや、悲しみに駆られる日々……全く希望が見えない環境でも、アネモネを想う気持ちだけが変わらずに月日が過ぎてゆく――。
※注意書き※
過度、かつ、凄惨、かつ、執拗な拷問描写があります。不適切かつ狂気的、猟奇的、グロテスクな描写を含みます。部分的にカニバリズ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!超リアルな身分の差と恋の行方。愛と憎悪が入り混じる人生の行きつく先の話
一言で言うと、ロミオとジュリエットの身分差があるパターンです。
しかし、社会の成り立ちや身分差のある恋愛の難しさ、理不尽な境遇等、非常に上手くリアルに物語に表現してあります。
間違っていても止められない憎悪の感情。
どうしようもなく理不尽な環境。
そのなかで正解を選び続けられる人間はどれだけいるのでしょうか?
ただ私は、案外単純にプラスの感情、愛を持って前に進むのか、マイナスの感情、憎悪に引きずられるかで、運命が変わるというメッセージにも思えました。
読後感もご都合主義じゃなくいエンディングに満足のいく物でした。
人間の感情を上手く表現できていると思いました。
グロ耐性がある方は…続きを読む - ★★★ Excellent!!!天国と地獄の狭間に咲いた魂の愛
あなたはこれまで、雷に打たれると形容するに相応しい読書体験をしたことがどのくらいありますか?
これは単なる恋愛譚ではない、魂を抉るような感情の奔流に溢れた文学作品です。舞台はスラム街という名の地獄。そこで出会った少年と少女の愛は、闇を照らす一筋の光。
スラムに生きる少年デュランと、富裕層の少女アネモネの出会い。住む世界が異なる二人はそれでも互いに惹かれあい、初々しい愛を育みますが、不条理なほどに過酷な運命と現実の前に引き裂かれていきます。アネモネを守るために罪を犯し転落していくデュランと、引き離されてもなお彼を愛し続けるアネモネ。二人の人生、その生き様が読者の胸に強く強く響きます。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!あまりにも残酷 ―けれども、この物語には水蜜桃のような愛と優しさがある
愛と喪失、希望と絶望といった普遍的な人間ドラマが描かれた秀作です。
主人公、デュランはスラムに生まれ、かつては美しかったが今は心身ともに壊れてしまった母と苦悩の人生を歩んでいます。そんな彼の元に現れた無垢な少女、アネモネ。
かたや地獄と揶揄される”スラム街”。もう一方は”天国”と呼ばれる富裕地区。そんな両極の場所に生まれた二人の逢瀬は切なく、やわらかで甘酸っぱい。やがて訪れるであろう予想通りの暗い未来を目の前にして――
二人の別れの以後に、デュランが堕ちてゆく様は、読むのが辛くなるほど残虐で凄惨なシーンの連続です。もし、この小説が映像化されたら、私は見ることはできないでしょう。ですが、作…続きを読む