嫌な夢と秘密 第21話

「え?」

アイリス様は突然私が言ったことに、全然ピンと来ていないようだ。

「秘密がありますよね?」

「なんのこと?」

「アンナとの秘密です」

「アンナと……って」

アイリス様の表情は、何かに気づいたようにハッとなって唇の端が引きつったように笑顔を作っている。そしてアイリス様の顔が赤くなっていった。

「マリーは何か聞いたの?」

「やっぱり秘密があるんですね」

「……大したことじゃないわ、べつにいいじゃない。聞かない方がいいわ」

「なんでそんなこと言うんですか、アンナとの秘密だからですか?」

私は、悲しくなって徐々に声は小さくなった。


「マリー、アンナのこと気にしているの?なら関係ないわ」

「ではどういうことですか、言ってください」

「嫉妬してるのね」


アイリス様は私の両手を捕まえて正面からまっすぐ見つめられる。ふとその表情は緩んで少し可笑しさを堪えているようだ。


「秘密って何ですか?」

アイリス様の目が泳ぐ。


「マリー」

アイリス様は少し考える顔をして、肩を落として深く息を吐き出した。


「もうしかたがないわね。覚悟はあるの?本当に聞く?」

「はい」

アイリス様の様子が不思議で、私は少し頭をかしげてしまう。

「マリーが決めたんだからね。でもマリーどうしてわかったの?」


「アイリス様とアンナが話しているのを見ました」

「えっ!?もしかして話聞こえてたの?」

「いいえ、話しているところは見たんですが、話していることは聞こえていません」

「そう、何のことか知らないのね。よかった。……今は話づらいから今日の終わりに部屋に来て。その時話すから」

「はいわかりました」

 なぜだろう、アイリス様は秘密を隠したいという雰囲気がないようだ。話したくはなさそうだったのに。

アイリス様が話したくないというより、私が聞かない方がいいそう言うニュアンスに感じるのはどういうことなのか。

でも私だけ知らない秘密にされるよりはいい。夜までの辛抱だ、そうしたらわかる…




 今日は、日が暮れて一日が終わるまで、気になって仕方がなかった。

アイリス様の部屋をノックする。入ってという声がして、緊張しながら中に入る。

 ここに座ってと促されてソファーに横並びに座る。


「覚悟はいいのよね、マリー?」

「はい。」

(……?)なぜだろう、アイリス様は少し楽しそうに見える。むしろ私の方が追い詰められる側のような気がするのは気のせいだろうか。


「本当は、アンナにもマリーにも秘密はバレたくなかった。でもしかたがないわね」

アイリス様は、肩を落とすような仕草をした。


「はい、これよ」

アイリス様は、1冊の本を手渡してきた。

「アンナに知られたのはちょっとした事故なの。少し前にマーガレットから借りたんだけど、借りて帰った時に私もソワソワしっちゃって周りをキョロキョロ見回しながら自分の部屋に急いでたら、角から出てきたアンナとぶつかっちゃって、見られちゃったの。だからアンナはたまたま知ってるだけ、2人だけの秘密にしたのは仕方がなかったの」

 どういうことかいまいち理解できず、私はその本をひざの上に置くとパラとめくってみた。

パッと本はある場所で開いた。

私は何が書いてあるのかとよく見ようと本に顔を近づけ、もう1ページをめくってみる。

さっき本を渡されてから、アイリス様の視線がじーっとこちらに向いている。


!!!!!!!!!!!!


パタン!

私は勢いよく本を閉じで両手で顔を覆って膝に置いてある本の上に突っ伏した。










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