不安

お嬢様のいない日2 第19話

 



 お嬢様の今日のご予定は、ご親友マーガレット様のお屋敷に行くこと。私がお屋敷に来るより前から親しい関係で、時折お互いのお屋敷を行き来している。

 最近でも知らないことをいろいろ教えていただいたようで、意気揚々としてマーガレット様に感謝していらっしゃった。とても楽しそうで微笑ましいこと。マーガレット様の屋敷の書庫は確かに魅力的で、たくさんの書籍があるのを一度見せていただいたことがある。

 私には手にすることはできないから、お嬢様からお話を聞かせていただいたり、マーガレット様のお父様から許可をいただいてお借りしたという書籍を、一緒にいる時に少しだけ見せていただいたりする。それが楽しみだった。


 今日はお屋敷から車で行き、帰りはマーガレット様の方で手配していただいているのでお嬢様は一人で出かけて行かれるそうだ。

 今日もお嬢様がお屋敷にいないので、落ち着いていられると思う反面少しさみしくもある。


 もうそろそろ、お屋敷を出発される頃だろうか…


 お嬢様が出発されるのを見送ろう、そう思って玄関の方へ移動している時だった。


 それは燻ぶっていた感情にまた火をつけてしまいそうな場面だった。

見てしまった・・・・・・


 どうしてなのか、少し遠くから見ている私にはわからないが、明らかにおかしいとしか思えない。

 隅の人目に付かないところで、アンナとお嬢様が話している。それだけなら気になることはあっても、それ以上どうとも思わなかったのだけれど。

今私が目にしているお嬢様は、明らかにおかしい。顔を手で覆って恥ずかしそうにしている。そして、アンナは、なぜというくらいにウキウキとして話しかけている。お嬢様の恥ずかしがる表情なんて、私そんなに見たことないのに。なぜアンナが話しかけたことで、お嬢様はあんなに恥ずかしそうにしてるの?

私の視線に2人は全く気づいていない。


 少し前から、アンナとお嬢様の様子がおかしいと思うことがあったので、胸の中にザワザワとした不安が湧いてくる。

 この間だって、2人で出かけて楽しそうに戻ってくるのを目の当たりにした。

 お嬢様は私だけではなく、アンナとも同じような関係なの?そんな考えが浮かんでくる。

 うそだ…そんなわけない…そう思いたくても疑うのをやめるのは無理だった。

 不安は良くない方へ私の考えを向かわせる。アンナとお嬢様はもっとずっと前からそういう関係だったのかもしれない。

 お嬢様が、時間が欲しいと言ったのも実は私に魅力を感じなかったから止めるための言い訳だったのかもしれない。私ではなくてもよかったのではとさえ思えてくる。私は都合が良い相手だっただけ?


  わたしは、アンナに対して劣等感を感じていたから余計にイヤなことを考えてしまう。

アンナは、ブロンドの髪、女性らしい体つき、覚えが早くてそつなく仕事をこなすところ。どこをとっても羨ましいと思ってしまう。

 それに比べて私といえば、地味な黒っぽいブラウンの髪、特に目を引くところのない体、仕事も経験が多いというだけで覚えがいいわけでもない。

 お嬢様が私の方を向いているのが、一時の気の迷いだったら・・・考えれば考えるほど、そう思えてならない。ぐるぐる頭の中にはお嬢様と私を否定するような考えばかりまわっている。


 そんな私のことを知ることもなく、お嬢様は今日も楽しそうに出かけて行かれた。



 

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