概要
~カクヨムコンテスト10【短編】参加作品~
戀歌楼。
主に異形を商品として扱う見世である。
もちろん、気に入ったものがいれば身請けすることもできるが、その際は案内人が提示した手付金と簡単な誓約書を交わすこととなる。この見世で取り扱う商品は、どれも欠陥品ばかり。キズモノだったり、どこかイビツだったり、感情が安定していない出戻り品なども多く扱っているため、取り扱いには細心の注意が必要とのこと。
故に誓約書を読んでいただき、同意の上、商品を受け渡す運びとなるのだ。
帝都と呼ばれる魔都の片隅に、ひっそりと佇む娼館、戀歌楼。知るひとぞ知る異形の見世を案内するのは、人形のように美しく妖艶な女主人。
今宵も異形に魅入られた、ひとりの客人がやってくる。
何度も通い、言葉だけ、視線だけ交わし
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!異形の者たちが見世に出る娼館へ出かけてみませんか?
まず和風ファンタジーという枠組みではとらえきれない世界観が魅力的。
明治・大正期の雰囲気を纏いながらも、スチームパンクを思わせる退廃的な未来都市――その片隅にひっそりとたたずむ娼館が舞台。
連作短編の形をとり、一人一人、秘密や問題を抱えた異形の者たちが描き出されます。
嗜虐心をそそられるような、残酷さを漂わせるストーリーもありますが、おしなべて美しく描き出されます。
連作短編という形なので、あなたもお気に入りの子が見つかるかも?
最後にこの娼館の秘密が明かされます。
そこで読者は、レトロフューチャーを想像するような世界観にも納得することに。
デカダンス香る禁断の世界にぜひ足を踏み入れ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!蠱惑的な愛。歪な人形劇。不思議な娼館へようこそ。
戀歌楼の商品は異形。何かしらの欠陥を抱えながらも蠱惑的で美しい少年たち。
そんな異形に魅入られた者との愛の短編連作集。
未来的ながらレトロ。和風な近代都市。
まず、この作品全体の空気感が素晴らしい。
読んですぐに不思議な世界に迷い込んだようです。
登場する金魚。金糸雀。烏。蝶の色彩描写が美しく魅力的です。
異形たちは外見も中身もどこか欠落している。
愛し方がずれていて、そこが背徳的で、蠱惑的でもある。
愛する者への気持ちは痛々しいほど純粋でもある。
もともと作者様のインモラルな愛情が大好物なので、この時点でもう好き!面白い!っという感じなのですが。
最後にもうひとひねりがあって唸りました…続きを読む - ★★★ Excellent!!!愛の底なし沼から抜け出せない!ダークでファンタジックなBL譚にドキドキ
戀歌楼は、客に異形の者を斡旋する娼館。
こんな奇妙な趣向の娼館がからめば、思いもしないことが起きるのは必然。異形の者も、彼らを欲する客も、愛という名の底なし沼に足を踏みいれてしまい……
美しくも奇妙な特徴を持つ異形たちばかり!彼らについて読むだけでも面白いです。そこに客たちとの恋愛が絡んで――どの話も妖艶でダークです。
一見すると幸せな人はひとりもいなくて、彼らの境遇は不幸にすら見えます。ですが、深く彼らの心理を掘り下げると「意外と不幸でもないのかも?」と思えるお話もある気がします。
メリーバッドエンドがお好きな人に、とくにおススメの一作です☆ - ★★★ Excellent!!!異形たちの不思議な物語を綴った、幻想的な連作短編集
異形を商品として扱う娼館、戀歌楼。
不思議な異形たちの、不思議な物語を綴った、連作短編です。
第一章は「金魚すくい」。人の姿に尾びれをもつ金魚の異形、身請けをするのは――その手を赤く染めた男。それは美しく、けれど恐ろしい光景。
最後まで読むことで、「すくう」という言葉のもつ多重の意味をおわかりいただけるかと思います。
第二章「金糸雀のうた」は、金糸雀と烏、二人の異形の想いを綴った短編。
傷つきながらも、番を想い求め続ける、強かでどこか危うい二人の関係性に、切なくなります。
また、「人形」「マナ」など、異形たちや管理人にも何か秘密がありそう。
妖艶でどこか仄暗く、幻想的な世界観が魅力的。…続きを読む