源氏の棟梁・源為義(みなもとのためよし)と異形の美女・玉藻(たまも)との間に生まれた八郎は、幼くして母とは引き離され、父からは故も判らず疎まれながらも、忠臣・須藤重季の導きで、容貌巨きくたくましい若君に育っていく。
源為朝(みなもとのためとも)は、平安末期の武将です。
保元の乱で崇徳上皇側につき、後白河天皇側に敗れて後、伊豆諸島に流され、そこでも大暴れ。
源頼朝や義経、平清盛などと比べるとマイナーながらも、けた外れの豪傑である事は間違いありません。
そんな歴史上の人物を主人公に据えながら、ストーリーは自由奔放、文章は読みやすくて明瞭明快。
歴史ものに馴染みの薄い読者にも楽しめるエンターテイメントに仕上がっています。
古今無類の快男児がここに登場。
カクヨムコンテスト10参加作品
(6話まで)
齢四十をすぎてなお豪放磊落、乱暴者である源為義は、絶世の美女の白拍子・玉藻に一目で心を奪われ、妾にする。やがて二人の間に生まれた子・八郎は、幼いながらも自分を馬鹿にした兄をボコボコにするという、どこか危うさを秘めた子だった。
しかも、八郎が生まれるまでの期間は、まっとうな妊娠であれば早すぎる。為義は心のどこかで疑いを持っていた。
玉藻の美しさはやがて上皇に届き、昇殿することとなる。しかし、玉藻は自分の子・八郎に「すべてを憎め」という恐ろしい教育を施していたのだった。
感想:格調高い文でありながら、スルスルと内容が入って来て、非常に読みやすい。
登場人物の細やかな心情の動き、人物の顔の造形が丁寧に描写されていて、そのような表現はくどくなりがちであるが、そういったことが一切ない。
まるで大河ドラマを見ているかのように、その舞台の空気感までも感じられる。
オススメです👘
『異聞・鎮西八郎為朝伝』は、平安時代末期の波乱に満ちた時代を舞台に、人間の本質と宿命に迫る壮大な物語です。
特に魅了されたのは、八郎為朝という人物の複雑な心理描写とその成長過程。圧倒的な力を持ちながらも、父への反発や母への想いに揺れる姿が胸を打ちます。玉藻の妖艶さと哀しみを湛えたキャラクターも、物語に深みを与えており、ただの歴史浪漫にとどまらず、親子の葛藤や絆が現代にも通じる普遍的なテーマとして心に響きました。須藤九郎重季の献身が八郎を支え、成長させる過程も感動的。
豪快な戦や宮廷の陰謀に彩られたこの物語、歴史の荒波を超えていく人間ドラマの迫力に圧倒されつつも、どこか親しみを感じずにはいられません。
大河ドラマ『光る君へ』で「刀伊の入寇」が取り上げられ、「嵐が来るわ」で武士の時代の到来が仄めかされていましたけれども。
本作はそれから100年余後の源氏の武将、為朝の話です。
源氏といえば関東のイメージだったのですが、九州にも行っていたのに驚きました。
私が無知なだけですが、楽しく勉強させていただいています。
妖婦・玉藻の息子として生まれ、父親に疎んじられて育った八郎。
乱暴者だったのでどうなふうに育つのか、実は恐ろしかったのですが、賢い部下など、よき人々に支えられ、元服後、鎮西に向かうまでに至ります。
ラノベというには、重厚な歴史小説ですが、知識と文章力に唸らされる作品です。
大昔に人がどういうふうに生きていたか。
私は、正直あんまり想像できません。
歴史モノ、時代モノ、伝奇モノ。
過去の日本を舞台とした物語を読んではじめて、なんか知った感じになるものです。
特に人物が血肉を備えているように人間らしく描かれ、行動するさまを見せられるときに、やっと過去の出来事が人間の行いの関わりの中で起こったのだと思える。
そんな私は、かなりの歴史弱者です。
本作の主人公、鎮西八郎はその能力の他はまったく人間らしいのです。
彼の行動を眺めつつ、後に続くように読み進めるならば、自然と物語の中、深みのある歴史の変遷の渦中へ連れて行かれることになるでしょう。
まだ本作を見ぬ方はEvelyn謹製(敬称略)源為朝の伝奇の世界へ訪れましょう!
ワクワクしますよ。