二、おねがい
ある時、身請けの話がきた。
ぼくをじぶんだけのものにしたいんだって。
姐さんたちはよろこんでくれたけど、ぼくはすごくいやだった。
だから、たくさんおねがいをした。
それをかなえてくれたのは、あのひとだけだったけど。
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帝都。魔導回路という技術によって、資源が枯渇していた世の中は一気に便利になり、電気も石油も燃料も必要なくなった。帝都はその中心にあり、魔導技師と呼ばれる特別な者たちを優遇した。
魔導はマナと呼ばれるこの地に無限に湧いている精霊力を操る器のこと。特別な媒体にマナを流し回路としての役割を与えるのだが、誰もが扱える技術ではない。
しかしなぜそれが普及したのか、今まで存在しなかったのかは不明である。ある時を境に広まった魔導回路。はじめてそれを世に出した者が誰かさえも知らないまま。気付けばそれは、知らない者はいない技術となっていた。
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ある日、人形のように美しく妖艶な
「南雲様があなたを身請けしたいそうよ。ひと目見て気に入ったそうで、その水槽ごとあなたを引き取ってくれるわ」
身請け。大金を払い、あの誓約書に署名することで契約は完了する。身請けされる側にはそれを拒否する権利はない。
「それって、どこのだれかもわからないひとのところにいくってこと?」
一度しか来ていないお客さんの顔なんて憶えていない。なんなら、十回通われても憶えられないというのに?
「一週間後よ。それまでにちゃんと準備をしておきなさいね」
「じゅんびって、なんの?」
「受け入れる準備に決まっているでしょう? ただの観賞用としてあなたを身請けするとでも? あの方は
それはつまり、ぼくをたべるってこと?
「所有権が移ったら、あとは誓約書のとおり。慎重に扱ってくれるでしょうけど、わからないようにすることなんていくらでもできるもの。あなたがどういう欠陥を持っているかなんて、彼には関係ないでしょうしね」
契約が交わされた時点で返品不可なのだ。
だからぼくはよわいあたまでかんがえた。
だれかぼくをすくってくれないかなって。
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