まず和風ファンタジーという枠組みではとらえきれない世界観が魅力的。
明治・大正期の雰囲気を纏いながらも、スチームパンクを思わせる退廃的な未来都市――その片隅にひっそりとたたずむ娼館が舞台。
連作短編の形をとり、一人一人、秘密や問題を抱えた異形の者たちが描き出されます。
嗜虐心をそそられるような、残酷さを漂わせるストーリーもありますが、おしなべて美しく描き出されます。
連作短編という形なので、あなたもお気に入りの子が見つかるかも?
最後にこの娼館の秘密が明かされます。
そこで読者は、レトロフューチャーを想像するような世界観にも納得することに。
デカダンス香る禁断の世界にぜひ足を踏み入れてみてください。
戀歌楼の商品は異形。何かしらの欠陥を抱えながらも蠱惑的で美しい少年たち。
そんな異形に魅入られた者との愛の短編連作集。
未来的ながらレトロ。和風な近代都市。
まず、この作品全体の空気感が素晴らしい。
読んですぐに不思議な世界に迷い込んだようです。
登場する金魚。金糸雀。烏。蝶の色彩描写が美しく魅力的です。
異形たちは外見も中身もどこか欠落している。
愛し方がずれていて、そこが背徳的で、蠱惑的でもある。
愛する者への気持ちは痛々しいほど純粋でもある。
もともと作者様のインモラルな愛情が大好物なので、この時点でもう好き!面白い!っという感じなのですが。
最後にもうひとひねりがあって唸りました。
真実を知って、もっとこの歪な異形たちの愛の行方を覗いてみたくなりました。
お客さんと一緒にのめりこんでしまうかも?
ぜひ、訪れてみてほしいです。
背徳的、偏愛、執着愛。一筋縄ではいかないダークな愛が好きな方におすすめです!
戀歌楼は、客に異形の者を斡旋する娼館。
こんな奇妙な趣向の娼館がからめば、思いもしないことが起きるのは必然。異形の者も、彼らを欲する客も、愛という名の底なし沼に足を踏みいれてしまい……
美しくも奇妙な特徴を持つ異形たちばかり!彼らについて読むだけでも面白いです。そこに客たちとの恋愛が絡んで――どの話も妖艶でダークです。
一見すると幸せな人はひとりもいなくて、彼らの境遇は不幸にすら見えます。ですが、深く彼らの心理を掘り下げると「意外と不幸でもないのかも?」と思えるお話もある気がします。
メリーバッドエンドがお好きな人に、とくにおススメの一作です☆
異形を商品として扱う娼館、戀歌楼。
不思議な異形たちの、不思議な物語を綴った、連作短編です。
第一章は「金魚すくい」。人の姿に尾びれをもつ金魚の異形、身請けをするのは――その手を赤く染めた男。それは美しく、けれど恐ろしい光景。
最後まで読むことで、「すくう」という言葉のもつ多重の意味をおわかりいただけるかと思います。
第二章「金糸雀のうた」は、金糸雀と烏、二人の異形の想いを綴った短編。
傷つきながらも、番を想い求め続ける、強かでどこか危うい二人の関係性に、切なくなります。
また、「人形」「マナ」など、異形たちや管理人にも何か秘密がありそう。
妖艶でどこか仄暗く、幻想的な世界観が魅力的。
画集をながめているかのような、美しい短編集です。