異形たちの不思議な物語を綴った、幻想的な連作短編集

異形を商品として扱う娼館、戀歌楼。
不思議な異形たちの、不思議な物語を綴った、連作短編です。

第一章は「金魚すくい」。人の姿に尾びれをもつ金魚の異形、身請けをするのは――その手を赤く染めた男。それは美しく、けれど恐ろしい光景。
最後まで読むことで、「すくう」という言葉のもつ多重の意味をおわかりいただけるかと思います。

第二章「金糸雀のうた」は、金糸雀と烏、二人の異形の想いを綴った短編。
傷つきながらも、番を想い求め続ける、強かでどこか危うい二人の関係性に、切なくなります。

また、「人形」「マナ」など、異形たちや管理人にも何か秘密がありそう。
妖艶でどこか仄暗く、幻想的な世界観が魅力的。
画集をながめているかのような、美しい短編集です。

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