第4話 スキル『G』発動。驚きの威力とその後の変化

 シュリアノによる暗殺を回避するため身体を鍛える。

 ……と、その前に朝食だ。


 部屋を出た俺は屋敷の食堂へ向かう。

 食堂へ入ると、すでにそこには3人の者が着席していた。


「遅いぞテンラー」


 厳格な声でそう言ったのはローランエン家の当主で公爵のヤットン・ローランエンだ。彼にはなにか裏設定があるらしいが、俺がゲームをプレイした限りではその設定を知ることができなかった。


「テンラー、早く座りなさい」


 父と同じく厳しい声でそう言ったのは公爵夫人で母のエイナー・ローランエンだ。彼女にも裏設定があるらしいが、それも俺は知らない。


「お、おはよう兄さん」


 そして最後に気弱そうな声であいさつをしてきたのがまだ14歳の弟であるフリードだ。今はまだ気弱で頼りない男だが、今から1年後に転生者が入って性格がガラリと変わる。

 つまりまだこの世界には主人公がおらず、ゲームは始まる前であった。


「おはようございます父上、母上、フリード」


 あいさつをしてテーブルの前に着席する。

 そして食事が始まるも、誰もしゃべることがない。3人とも黙々と食事をしていた。


 ……気まずい。


 しかし話せることもないので、これはこれでよかったのかもしれない。

 ……やがて食事が終わって俺はそそくさと食堂を出て部屋へ戻る。


「戻ったか。おお、食い物じゃ」


 戻る途中で厨房へ寄って、アナテアの食べる物を持って来た。

 食べ物を渡すとアナテアはガツガツと食べ始める。


「よく食べるなぁ」


 俺の3倍は食べているんじゃないか?

 しかし俺が持って来た食べた物の栄養があの巨乳へ行くと思うと、なんだかおっぱいを育てているようで良いことをしている気になれた。


「うん? なんじゃわしの乳をジロジロ見おって。ほれ」

「うおおおっ!」


 ドレスの胸部分をグイと大きく開いて巨乳の谷間を見せつけてくる。

 俺の目はそこへ釘付けとなった。


「お前、中身はいい歳のおっさんじゃろうに、よく谷間くらいでそこまで興奮できるのう。今どきは谷間くらいじゃ中学生でも興奮するか怪しいぞ」

「う、うるさいな。俺はエッチなことに興奮しやすいんだよ。昔から」


 ちょっとしたエロ画像でもすぐにビンビンとなってしまうので、欠点みたいなものである。


「うむ。だからお前はスキル『G』を使うのに適任なのじゃ」

「なんだかなぁ」


 こんな欠点が才能に変わるときが来るとは。

 人生なにが起きるかわからないものだ。いや本当に……。


 アナテアの食事が終わったので、2人して屋敷の外へと出掛ける。

 やって来たのは屋敷のすぐ裏にある林の中だ。


「よし、じゃあまずはこの木を殴り倒すのじゃ」


 アナテアが指差したのは巨大な大木であった。


「いや無理に決まってるでしょ。スーパーマンじゃないんだから」


 横幅が1メートルほどもある大木だ。

 こんなの思い切り殴ったら俺の腕がへし折れる。


「スキル『G』を使うんじゃ。スキルを使えばこんな木など一発で殴り倒せる」

「使えって言われても……」

「スケベな気持ちを最高潮まで高めるのじゃ。そうすればスキル発動の許可を求める音声が頭の中に聞こえるはずじゃ」

「そうなの? じゃあ……」


 うーんと俺はスケベなことを考える。

 ……しかし興奮はできず、スキル発動の音声は聞こえなかった。


「どうじゃ?」

「いや、どうも想像だけでは難しくて……。こういうのって必要じゃん? その、おかずがさ」


 想像だけでスケベな興奮を高めるのは難しい。

 健全に生きている一般的な男性ならば、皆が理解できることである。


「しかたないのう。ならこれでどうじゃ」

「へっ? ふおおおっ!!!」


 ポヨンとした感触が背中に。

 背後から抱きついてきたアナテアの胸を背中に感じた俺の興奮が急激に高まる。


「スキル『G』を発動しますか?」


 脳内に音声が流れ、


「はっ、発動ぉぉぉぉぉっ!! うおおおおおおおっ!!!」


 発動を叫んだ俺は巨木に拳をぶつける。

 ――瞬間、目の前から巨木が姿を消した。


「おおっ!」


 そしてアナテアが背後で声を上げる。


「ま、まさか殴り倒すどころか消し飛ばしてしまうとは……。これは想像以上じゃな。すごいぞテンラー。うん? おいテンラー?」


 俺は小さく震えながら、ゆっくりと口を開く。


「その破廉恥なものをあたしから離しなさい……」

「うん?」


 アナテアが離れ、俺はうしろを振り返る。


「あ、あなた、なんて破廉恥でふしだらな格好をしているのよっ!」


 谷間を見せる格好のアナテアがひどく不快に見える。目を覆いたくなるほどだ。


「ああ、そういえばスキルの使用後は一定時間スケベなことから一切の興味が無くなるんじゃったな。ふむ。まるで別人じゃな」

「その胸をしまってっ! しまいなさいよっ! いやあああっ! 破廉恥よっ! ここにスケベな淫乱破廉恥女がいるわっ! 子供に悪影響よっ! いやああああっ!」

「いや変わり過ぎじゃろ」


 呆れた表情のアナテアを前に、俺は森の中でぎゃんぎゃん喚き続けた。


 ――――――――――――


 お読みいただきありがとうございます。


 ついに発動させたスキル『G』。攻撃力の上昇は想像以上のものでしたが、その後のクールタイムも想像を超えた変化だったようです。


 フォロー、☆をいただけたら嬉しいです。

 感想もお待ちしております。


 攻撃力最強のスキル『G』ですが、連続では使えないため通常の戦闘能力もある程度。身に着けておく必要がありそうです。

 次回は剣術を始めます。はたしてテンラーに剣の才能はあるのか……。


 

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