第16話 盗賊を一掃するテンラーの暴走

 盗賊の数はざっと数えただけで20人ほど。

 数の上では分が悪いのは明らかだ。


「おお、すげー良い女っ!」


 盗賊たちがわらわらとシュリアノの周囲へ集まってくる。


「へっへっへっ、俺たちと遊びたいのか?」

「たっぷり遊んでやるぜ」


 スケベそうな目がシュリアノの身体を見回す。


「ふん。なんだその程度の視姦。わたしを常にいやらしい目で見ている男からの視線にくらべれば、なにも感じ無いも同然。つまらぬ視姦だっ!」


 楽しい視姦などあるのだろうか?

 というか俺って、そんなにいやらしい目でシュリアノを見ていたのか……。


「は? なに言ってんだ? とにかく一緒に来い」


 盗賊の手がシュリアノへ伸びる。


 さすがにもう隠れているわけにはいかない。


 助けなければと俺が茂みから出て行こうとする。……と、


「あん? え……」


 伸ばした男の手が地面へ落ちる。

 見ると、シュリアノの短剣が男の手を斬り落としていた。


「ぎゃあああっ! お、俺の腕がっ! この女っ!」


 盗賊たちが一斉に襲い掛かる。が、


「あ……が」

「ぐが……」

「べ……」


 いつの間にか短剣を両手に持ったシュリアノの攻撃によって、盗賊たちの首から血しぶきが上がる。


 そうだ思い出した。


 シュリアノは短剣二刀流の使い手で、戦闘ではかなり強いキャラクターだ。王都近辺いる盗賊なんかに負けるはずはなかった。


「おいっ!」


 クマみたいな大男である盗賊のボスがシュリアノへ叫ぶ。

 そのでかい手には剣が握られており、剣先は子供へ向けられていた。


「武器を捨てなねーちゃん。ガキが殺されたくなければな」

「う、うう……うわーんっ」


 ニヤニヤ笑いながら、男は泣き叫ぶ子供へ剣先を突き付けている。


 とことんクズだ。

 いや、相手は盗賊だ。この展開は十分にありえたか。


 シュリアノはまだ武器を捨てていないが、どうするべきか迷っている様子だ。しかし彼女の性格を考えれば、いずれ捨てることになるだろう。


 その前にと、俺は視線でアナテアに考えを伝えて、茂みに隠れながら2人で大男のほうへ近づいて行く。やがてほぼ寸前まで近づいた。


「おい早く武器を捨てやがれっ! ガキをぶっ殺すぞっ!」


 今だっ!


 俺は剣を突きの状態に構えて茂みから飛び出す。


「なにっ!? ぐあっ!?」


 男の足に剣が刺さる。


「あっ、しまったっ!?」


 腹へ刺すつもりだった。

 しかし狙いがずれて足に刺してしまった。


「こ、この野郎っ!」


 大男が俺の頭上へ剣を振り上げる。


「テンラーっ!」


 シュリアノがこちらへ向かって駆けて来て、


「おわっ!?」


 こける。そして……


 ポヨン


 巨乳が俺の背へ柔らかく触れた。


「うふぉおおっ!」


 瞬間、俺の性的興奮が上昇していき、


「スキル『G』を発動しますか?」

「発動ぉぉぉぉぉっ!!!」


 叫んだ俺はまっすぐ拳を伸ばして大男の腹を打つ。と、


 ドンっ!


 大男の膝から上が消し飛ぶ。


 その瞬間、周囲は静寂に包まれた。


「な……えっ? ボ、ボス? き、消えた? えっ?」


 困惑する盗賊たち。

 その隙にアナテアが茂みから出てきて、捕まっている人たちを盗賊から離す。


「て、てめえなにしやがったっ!」


 盗賊のひとりが俺へ襲い掛かかってくる。が、


「いやあああああっ!!!」

「えっ? ぐはっ……」


 叫んだ俺は剣を振り回して盗賊をぶった斬る。


「痴漢よっ! 汚いクソオスがあたしに痴漢しようとしてるわっ!」

「な、なんだこいつ……ぎゃっ!?」

「いやあああああっ!!! 触らないでぇぇぇっ!!!」

「ぐあっ!?」

「なによこの森っ! 痴漢だらけじゃないっ! クソオスは追い出して女性専用森林にしなさいよっ! いやあああああっ! クソオスがあたしを性的な目で見てるわっ! 汚らわしいぃぃぃっ!」

「ひいいっ! ぎゃああっ!?」


 喚きながら盗賊をバッタバッタと斬り殺していく。

 やがて盗賊をすべて斬り殺し、周りは盗賊の死体だらけになる。しかしそれでも喚き続ける俺を、アナテアたちは冷めた目で眺めていた。


 ――――――――――


 お読みいただきありがとうございます。


 スキル『G』使用後に暴走して盗賊を一掃してしまうテンラー。クールタイムとは……。


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 感想もお待ちしております。


 次回はふたたび姫様の登場です。

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