第33話 露出魔を発見するが……

 俺たちは4手に分かれて……と言いつつ、やっぱり心配だったので俺はアナテアと一緒に行動していた。


「大丈夫じゃぞ? わしを狙う魔物もまだ来んじゃろうしのう」

「うん。でもやっぱ心配だからさ」

「ふふ、そうかの。まあよい」


 なんだか嬉しそうなアナテアと俺は夜の街を歩く。


「……なあ」

「うん? なんじゃ?」

「あーいや、その、魔物を倒してもアナテアは大丈夫なのかなと思って」

「ああ」


 一言そう呟き、複雑な横顔をアナテアは見せる。


「最初は奴らに申し訳ないという気持ちから、わしは下天して奴ら魔物を導いて人間と仲良く共存させようとした。しかし所詮は恐怖を作るために生まれた連中じゃ。ほとんどはわしの言うことなど聞かず、人間を滅ぼすために魔王の力を利用しようと考えている奴らばかりじゃ。そんな連中には愛想が尽きたし、もうどうでもよいのじゃ」

「そっか……」


 複雑そうな表情から察するに、口で言うほどどうでもよくはないのかもしれない。とはいえ、愛想が尽きたというのも嘘ではないので、複雑な心中が顔に出てしまったのだろうと思った。


「ほとんどってことは、魔物の中にも人間と仲良く共存したいって考えてるのも少しはいるの?」

「少しはの。まあ1割いるかいないか程度じゃから、少数派も少数派じゃな」

「そっか……」


 その1割を憂いて、アナテアは表情を複雑にしたのだと思った。


「――きゃああああっ!」

「えっ?」


 どこかで女性の叫ぶ声が上がる。


「あっちじゃな」

「うん。行ってみよう」


 俺たちは声のしたほうへ向かう。

 と、そこには尻もちをついた若い女性がいた。


「どうしたんですかっ?」

「は、裸の男が……えっ? きゃああっ! テンラーっ!」


 そう叫んだ女性は飛び上がって走り去って行った。


「……俺、なんかしたか?」

「もともと評判が悪いのに加えて、魔王の魂が宿っているというのも疑いが晴れたというわけでもないからのう」

「そ、そうだね」


 まあしかたないかと、俺は気持ちを切り替える。


「裸の男ってことは、露出魔が現れたんだな」

「うむ。しかしもうどこかへ行ってしまったようじゃな」

「うん。さっきの人に特徴とか聞ければよかったんだけど」

「特徴もなにも裸じゃろ」

「ま、まあそうだけど」


 特徴を聞く必要はなかった。


「あ、いたいた」

「うん? あ、レーティ」


 そこへレーティとシュリアノがやってくる。


「見つけたわよ露出魔」

「えっ? そっちも?」

「あら? そっちでも出たの? けど驚いたわ。露出魔が女だったなんてね」

「えっ? 女?」


 確かさっきの女性は裸の男って言ってた気がするが。


「本当に? こっちは男だったけど?」

「そうなの? こっちは若い男が被害に遭ったみたいで、露出魔は女って言ってたわよ。ねえ?」

「はい。裸で何度も外を歩き回るなど、とんでもない変態女です。わたしだって1回しかやったことないんですよ」

「犯人が見つかったわ。こいつよ」

「ははは……」


 まあシュリアノの露出魔経験は置いておいて、どうやら犯人は男女でひとりずついるらしかった。


 ……後日、俺は町を1人で歩く。


 どうやら露出魔は1人のときに現れるらしく、俺は女の露出魔を捕らえるために1人で行動をしていた。


 男のほうはシュリアノに頼んだ。

 露出魔が現れれば、隠れているレーティと2人で捕らえる算段になっている。


 こっちはアナテアが隠れてついて来ていた。


 しかし俺は目立つ。目立つような人間の前には現れないかもしれないので、テンラーとはわからないように変装して町を歩いた。


 さて、うまく現れてくれるかな?


 条件を満たしているからと言っても、必ず現れるとは限らない。露出魔が出てくるかは運に依るところも大きかった。


 暗い街中を1人歩いている。……と、


「たあっ!」

「えっ? うおおっ!」


 突如として目の前に仮面を被った裸の女……いや、大事なところはギリギリで隠しているが、間違い無く露出魔が俺の前へと現れる。


 不意の出来事に俺は呆気に取られてしまうが、


「むんっ!」


 背後から飛び出したアナテアが露出魔を羽交い絞めにして捕らえる。


「は、離せ―っ!」

「離すか馬鹿者」


 露出魔はあっさりアナテアに拘束されている。

 いきなり目の前に現れた素早さはたいしたものだが、腕力のほうはそうでもないようだった。


 アナテアは持っていた縄で露出魔女を縛る。


「これで一件落着……いや、まだ男のほうが残っていたのう」

「うん」


 あっちのほうはどうなったかな?


 露出魔女を連れて合流地点へ行くと、


「お」


 そこではすでにレーティとシュリアノが待っていた。

 側には縛られた誰かもおり、どうやら向こうも……。


「って、あれ?」


 よく見れば縛られた裸の男が2人そこにはいた。


 ――――――――――――


 お読みいただきありがとうございます。


 ひとりかと思いきや、露出魔が3人? 捕まえたので一件落着ではありますが、露出魔が3人も現れるこの町の治安はどうなっているのでしょうか?


 フォロー、☆をいただけたら嬉しいです。

 感想もお待ちしております。


 次回は露出魔の意外な正体が明らかに……。

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