第32話 露出魔を捕まえに行こう

「遅いじゃない。わたくしを待たせるなんて良い度胸だわ」

「ご、ごめん」


 正直、レーティはもっとのんびり来るかと思ってた。

 実は一番やる気があったりして……。


「あれ? 窓の外にあったゴミは?」


 昨日、窓の外へ放り出したゴミが消えていた。


「ああ。放り込んだ連中を調べて片付けさせてやったわ。当然でしょ」

「おお」


 さすがはお姫様だ。頼もしい。


「それで今日はどうするの? 露出魔を探す?」

「そ、そうだなぁ……」


 と、俺は昨日の本を持ち上げて中を開く。


「そういえばこういう通報とか相談ってどこからここへくるんだろ?」


 露出魔やら野良猫が増えて困ってるやら。


 警察なら交番や警察署への通報や相談という形でくるんだろうけど。


「騎士団からよ」

「えっ? 騎士団から?」

「そうよ。なんで魔物対策室へ魔物関係無い仕事がくるのか調べたのよね。そしたら騎士団にきた通報とか困りごとの相談をこっちに回してるのがわかったのよ」

「なるほど。そういうことか……」


 本来ならば騎士団がやらなければいけない仕事をこっちに回してたんだ。


 イムドラントが言っていたのはこういうことか。


「そもそもこんなの騎士団の仕事なのかのう」

「庶民に良い顔して、受けるだけ受けちゃうのよ。やりもしないくせに」

「そんでこっちに回してくるのか」


 これでは騎士団の下請けだ。


「だから突き返してもいいわよ。断ったらわたくし名前を出してもいいわ」

「うーん……」


 それでもいいが、


「けどやることもないし、とりあえずやってみようか」

「そう? まあいいけど」

「うん」


 しかしまずなにをしたらいいんだろう?


 本の中で一番、日付が古いのはこの露出魔だからやっぱりこれかな。


「ここのところ夜に露出魔が出るか。誰かなにか知ってることある?」


 そう聞くとシュリアノが手を上げる。


「パンツは穿いてるらしいぞ」

「ふーん」


 じゃあ全裸ではないのか。


「顔に」」

「えっ? 顔に?」

「顔に穿いてると聞いた」


 顔の場合は穿いてるというのだろうか?

 それはともかくかなりの変態だ。


「はっ!? お前今、わたしのパンツを顔に穿きたいと思っただろっ!」

「今じゃない。常に思ってる」

「くっ、さすがはテンラーだ。今日もわたしの負けだな」


 なんか知らんが勝った。


「というか、露出魔ってあんたなんじゃないの?」

「いや、パンツは被りたいけど、裸は見せたくないよ。恥ずかしいし」

「パンツを被りたいって言うのも恥ずかしいと思うけど……」

「そうかな? そうかも」


 けど巨乳美少女のパンツはみんな被りたいと思う。


「要は顔にパンツ被った奴が夜の町を徘徊してるんでしょ? だったら夜に町を巡回して見つけたら捕まえればいいじゃない」

「そうだね」


 まあそうするしかないだろう。


 そう決めた俺たちは、夜に町へ出て巡回をすることにした。


 ……そして夜になり、俺たちは4人で町へ集まる。


「まったく、なんで王女のわたくしが夜に出てきて露出魔なんか捕まえなきゃいけないのよ。めんどうくさいわねー」


 そうは言いつつ、動きやすい服で来るのだから真面目だと思う。


「しかし夜はやっぱり暗いな」


 街灯も無いので真っ暗だ。

 これでは露出魔を見つけるのも難しい。


「明かりの魔法を使えばよい」


 と、アナテアは人差し指を立て、その上に光り輝く玉を出す。


「あら? あんた魔法なんて使えるのね。魔法学校に通ってたのかしら?」

「まあそんなとこじゃ。テンラーも使えるの?」

「ああうん」


 俺も同じ魔法を使って周囲を照らす。


「なるほど、あんたの魔法はこの子に習ったのね。決闘で魔法を使っていたから、いつ魔法学校に通ってるのかもと思ってたけど」

「う、うん」


 この世界で魔法を使っている人の大半は魔法学校で習うらしい。俺みたいに個人から教えてもらうことも可能だが、本来は使用に免許が必要なのでみんな学校で習って卒業と同時にその免許をもらう。


 つまり俺は違法に魔法に使っているのだ。免許の提示を求められたら捕まるかもしれないが、しかしそんなに厳しくないので大丈夫。……と、アナテアは言ってた。


「じゃあ2手に分かれましょうか。わたくしがテンラーと行くから、あんたはシュリアノと行きなさい」

「えっ? 俺がレーティと?」

「なに? 嫌なの?」

「いや、そんなことはないよ」


 しかし俺がアナテアと離れて大丈夫かな。

 そこが不安だった。


「待つのじゃ。この光る玉は魔法の使えない者に譲渡することもできる。これを全員分、用意して4手に分かれて探したほうがいいじゃろう」

「あ、そうなんだ」


 それは知らなかった。


「あらそう。ふん。じゃあそれでいいわ」

「?」


 なにかレーティは不機嫌にそう言った。


 ――――――――――――


 お読みいただきありがとうございます。


 露出魔探しへ出発。やっぱり魔物とはなにも関係ありませんが、初仕事なのでしっかりやりましょう。


 フォロー、☆をいただけたら嬉しいです。

 感想もお待ちしております。


 次回は露出魔出現……。

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