第34話 露出魔の正体

 これは一体どういうことだ?


 露出魔は男女それぞれ1人ずつだったはずでは?


 俺は頭上に?マークを浮かべつつ、レーティとシュリアノのもとへ歩く。


「遅かったわね」

「うん」


 やっぱり2人いる。

 どちらも顔と股間に仮面を被っており、1人は恰幅の良いおっさん体形。もうひとりはまあまあ引き締まっているが、毛深いおっさんっぽい体形だった。


「なんで2人もいるの?」

「知らないわよ。2人出てきたから2人とも捕まえたの」

「そ、そうか」


 俺は改めて2人を見る。


 2人とも裸でシュンとうな垂れており、なんともみっともない姿を晒していた。


「このわたくしの手を煩わせたのだから、これはもう死刑ね。決定」

「ええっ!? い、いやたかが露出魔で死刑は厳し過ぎかと……」

「そうかしら? まあそうね。じゃあお説教かしら?」


 刑に落差があり過ぎである。


「とりあえず城に連れて行って牢屋にでも入れておくか」


 刑は裁判かなんかで決めるんだろう。

 この国の司法がどうなってるのかは知らんけど。


「そうね。ほら行くわよ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ」


 恰幅の良いおっさん露出魔が慌てたような声を上げる。


「なに? 頼まれたって解放はしないわよ。せっかく捕まえたんだから」

「いやその……これを」


 と、男は縛られていない足を顔まで上げ、指で器用に仮面を外す……。


「あ」

「えっ?」

「ふぁっ!?」

「ほう」


 仮面の下から現れたのは見覚えのあるおっさん……国王様であった。


「な、な……」


 目に見えてレーティの顔が引きつる。


「……ああ、はあ」


 なにか叫ぶかと思いきや、レーティは一転して表情を落ち着かせる。


「やっぱり死刑にするわ」

「ちょ、ちょっと待てレーティっ!」

「変態が気安くわたくしの名前を呼ばないでほしいわ」


 汚物でも見るような冷たい視線が国王様を射抜く。


「父上……いえ、国王様にこのようなご趣味があったなんて……」

「ん? お前は……シュリアノか? しばらく会っていなかったから気付かなかったが、大きくなったな。うむ。元気そうでなによりだ」

「そんな恰好で偉そうに父親づらしてんじゃねーわよこの馬鹿親父っ!」

「うごぁっ!?」


 レーティが国王の額へヘッドバットを食らわした。


「し、しかしまさか露出魔のひとりが国王だったなんてな。2人とも自分の親が露出魔だなんて恥ずかしいことだと思うけど……」

「テンラー」

「うん?」


 アナテアに呼ばれてそちらを向く。

 そこには残る露出魔2人の仮面を取ったアナテアが……。


「ひょっ!?」


 仮面を取られた露出魔2人の顔を見た俺は変な声を上げる。

 そこにいたのは間違いなくテンラーの両親であるヤットンとエイナーであった。


「えっ? ち、父上……と母上? えっ? どうして?」


 わけがわからない。

 なぜ厳格な両親が露出魔になっているのか……。


「テンラー……。わかっていると思うが、これには深い事情があるのだ」

「そ、そうなのですか」


 それはそうだろう。

 厳格な両親がこんなことをしているのには、なにか重い事情があるはず。


「うむ。実はな」

「はい」

「裸で町を歩いて他人に見せつけるのはすごく楽しいんだ」

「はい。えっ?」

「だからな、裸で町を歩いて他人に見せつけるのが楽しいんだ。ローランエン家の嫡子であるお前ならわかるだろう?」

「いえわかりません……」


 もしかして俺がわからないだけで、ローランエン家の人間にとってはなにか重要なことなのか? 裸で町を歩いて他人に見せつけることが?


「テンラー、高貴な血が流れているあなたにならわかることよ。裸で町を歩くという解放感。これはたまらなく心地良いことなのよ」


 ……いや、たぶんこの2人はただの変態なのだと思う。


「一体いつからこんなことをなさっているのですか?」

「うーん……」


 父は唸るだけで答えない。母も同様だった。


「お父様はいつからなのよ?」

「うーん……」


 国王もやっぱり唸るだけで答えない。


「なに? 答えたくないの?」

「い、いやそうではない。わからないのだ」

「わからない?」

「そうだ。レーティよ、お前は今までに裸で外を出歩いた回数を覚えているか?」

「ゼロ回よっ!」

「ごあぁっ!」


 ふたたびヘッドバットを食らった国王は仰け反った。


「父上と母上もですか……」

「うん……」

「そうね……」


 2人ともシュンとした様子で頷く。


 もしかして2人の隠された設定ってこれか?

 いるこの露出魔って設定?


 このゲームを作った人間はなにを考えていたのかと疑問に思う。


 ともあれ、これで露出魔騒動は解決。

 なんとも予想外の結末に、テンラーは辟易とした思いであった。


 ――――――――――――


 お読みいただきありがとうございます。


 露出魔の正体は自分の両親と国王様でした。テンラーの両親はともかく、国王が裸で町を歩くのは大問題ですね。


 フォロー、☆をいただけたら嬉しいです。

 感想もお待ちしております。


 次回は新たな脅威が迫ります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る