第11話 目覚めたら異世界(フリード視点)
……目が覚めると知らない天井が見えた。
「……あ?」
起き上がって周囲を見回す。
知らない部屋だ。自分の部屋ではなかった。
窓から外を見るが、暗くてよく見えない。
「昨日、飲み過ぎたか? いや、確か家でゲームやってたんだよなぁ? そんでそのまま寝たんだったか? なんで知らねー場所にいんだ?」
わけがわからない。
「おーいっ! 誰かいねーのっ! おーいっ!」
大声で呼ぶと、やがて扉がノックされる。
「フリード様、いかがされましたか?」
フリード? って、確か寝る前にやってたゲームの主人公と同じ名前だ。
とりあえずベッドから出て扉を開く。
外に立っていたのは執事服を着た初老の男だった。
「大声が聞こえたので飛んで参りました。どうかなさいまし……おぐっ!?」
拳を男の腹に抉り込む。
「俺が呼んだらよぉ、1秒で来いよ。わかった?」
「も、申し訳ありませんフリード様」
困惑した表情の男の腹から拳を引く。
「で? ここどこ?」
「は?」
男の回答に対し、ふたたび拳を腹へ抉り込む。
「ごふ……っ」
「は? じゃねーよ。ここがどこか聞いてんだよ。なんだ、は? って。ここは、 は? って場所なの? ねえそうなの? 聞いてんだよ」
「い、いえその、ここはローランエン家のお屋敷で、こちらはフリード様のお部屋でございます」
「ローランエン家……。フリード……」
ここはローランエン家、そして自分はフリードと呼ばれる存在。
ローランエン家もフリードも寝る前にやっていたゲームで聞いたものだ。
これはもしかして……。
「あの、どうなさいましたかフリード様?」
「あ、お前もう行っていいわ。さよなら」
「は、はい。失礼致しました……」
困惑した様子で男は足早に去って行く。
部屋の扉を閉め、ロウソクを見つけて火をつける。
それから部屋にあった鏡を眺めた。
「おお、やっぱあのゲームの主人公じゃん」
幼さの残る優男の顔立ちがそこにあった。
「これって……夢だよなぁ。カカッ、ガキくせー夢」
まあおもしろそうではある。
「しっかし、こいつの顔って誰かに似てるんだよなぁ。この人が好さそうなだけののんびりした無能づら……あっ」
思い出した瞬間、フリードはカッカッカッと笑う。
「あの無能にそっくりじゃねーか。そうそうあいつこんな顔してたわー。人が好さそうなトロくせー顔。ゲームやっててなんかこの主人公、つらが無能だなーって思ってたけど、あいつにそっくりなんだよ。納得したわ。カカカカッ」
確か1年くらい前に死んだんだったか。
忙しい時期に死にやがって、死ぬタイミングまで無能な奴だった。
「さあて、せっかく楽しい夢を見てんだ。どうせ夢だしなにしてもいいよな。ヒロインでもレイプしてまわっかー。カーカッカッカッカッ」
意気揚々とした気分でフリードは笑う。と、
「――これって夢じゃないし」
「あ?」
女の声が聞こえて、フリードは周囲を見回す。
「誰だ? どこにいる?」
「ここ」
声のした方向へ目をやると、そこにはいつの間にか女がいてイスに座っていた。
年齢はフリードと同い年ほどか。ピアスやらアクセサリーやらを身体中につけた、長い金髪のギャルっぽい女だった。
「なんだてめえ? いつからそこにいやがった? ああいや、そうか。これは夢だもんな。俺がヒロインでもレイプすっかって言ったから出てきたんだろ?」
女は長い自分の爪を撫でながら、チラとこちらへ目をやる。
「夢じゃないっての。2回も言わせんなタコ」
「ああ?」
やられるために出てきたってのに舐めた口を利く女だ。
しかしこういう女を無理やりやるのもおもしろい。
舌なめずりしたフリードは、女に近づいて触れようとする。
「触んな」
「ぐっ……」
身体が動かない。
指の1本もまったく動かなかった。
なんだ? なんで動かねえ?
自分の夢なのに自由がきかない。
それが不愉快でフリードはイラつく。
「あたしの名前はエクスタ。この世界の女神」
「だからなんだよ? くっそ、なんで動かねえんだ」
「動かしてあげるよ」
「おわっ!?」
急に身体が動き、フリードは前へつんのめり、
「ほい」
「うあっ!」
しかし急にうしろへ引かれて、背中を床へ打ち付ける。
「いって……。夢なのにいてえ……。いてえって……マジかよ」
この痛みは本物だ。
夢じゃない。これは現実だ。
――――――――――――
お読みいただきありがとうございます。
ついにクソ上司がゲーム世界へ転生してきました。テンラーのほうは魔王でしたが、こっちに現れたのは女神ですね。こっちはこっちで、なにか別の目論見がありそうです。
フォロー、☆をいただけたら嬉しいです。
感想もお待ちしております。
次回は女神の目論見が明らかになります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます