第27話 決闘が終わって……

 俺は突き出している拳を戻して周囲を見回す。

 そして落ちているメタルカイザーソードを拾う。


「あ、はじまるぞ……」


 うんざりしたようなアナテアの声を聞きつつ、俺は大きく息を吸い込み、


「いやあああああっ!!!」


 大声で叫ぶ。


「ちょっとなによこの剣っ! 柄のところがまるで男性器じゃないのっ! こんなものを握らせるなんて卑猥よっ! 女性差別的剣だわっ! いやああああっ! あたしがこれを握るのを見て興奮してたんでしょっ! クソオスに性的搾取をされているわっ! いやあああああっ!」


 周囲の目を気にせずギャンギャンと喚き散らす俺。

 見物人の皆はふたたび呆然となり、喚き散らす俺を見て黙り込んでいた。


 ……それから10分が経ち。


「はっ!?」


 俺が気が付く。

 視線に気付いてそちらを向くと、アナテアとシュリアノ、レーティが俺を冷たい目で見ていた。


「ど、どうなったんだ?」


 とりあえずは生きている。

 そしてフリードの顔面を殴り飛ばした記憶はあるため、恐らくは……。


「勝ったのじゃ」

「うおおおっ! やったーっ!」


 勝利の雄叫びを上げる。


 正直、死ぬことも覚悟していた。

 しかし勝った、逆境をはねのけて勝利を得たんだ。


「わしの言った通り尻から魔法が出たじゃろ」

「い、いやその……あれは魔法を放つつもりじゃなかったんだけど……」


 オナラしたらなぜか魔法まで出たのだが、そのおかげで勝てる切っ掛けを作れた。

 それはよかったものの、あんまり格好良い勝ち方ではなかったのが恥ずかしい。


「ともかくこれで俺に魔王の魂が宿っているってのは無しになったか」

「ええ。決闘に勝ったことで、お父様は魔王の魂は宿っていないというあんたの主張を肯定されたわ。よかったわね」」


 答えたレーティが俺のほうへと歩いて来る。


「ちょっと屈みなさい」

「えっ?」


 なんだろう?


 言われた通り屈むと、


「うごっ!?」


 顔面に拳を食らう。


「あんたわたくしになんてことしてくれてんのよっ! こんな大勢の前でスカートを捲って、パ、パンツを晒してくれるなんてっ!」

「すいません。良いパンツでした。ありがとう」

「なんでお礼よっ!?」


 また殴られた。


「まったく、あんな状況でもお前はいやらしいことを考えているとは破廉恥な奴。しかし残念だったなっ! 今朝にパンツは穿き替えているのだっ! 一晩中穿いたパンツではないっ! がっかりしたかっ! ふははっ!」

「そんなことはない。良いパンツだった。ありがとう」」

「えっ? あ……そう。どういたしまして」


 俺の言葉に、なぜかシュリアノは恥ずかしそうに俯いてしまった。


「そういえば他の人たちは? カナンとかフリードの見物人とか」


 アナテアたち3人以外はいなくなっていた。


「あら覚えてないの? あれだけギャンギャン言い合ってたのに」

「ギャンギャン言い合ってた?」

「ええ。あんたが卑怯なことをしたとか、弟を殴るとか最低とか、わけのわからないことを言う女たちに向かって、男に媚びる馬鹿女とか、男に搾取されて喜んでる売女とか喚いて言い合ってたわよ」

「そ、そう」


 なんだそれは?

 全然、覚えていないんだが……。


「カナンはお前をひと睨みしてから、フリードの飛んで行った方向へ駆けて行ってしまったのう。フリードを助ける気かもしれん」

「奴は生きてるのか?」

「わからん。しかし武神のスキルと装備品で防御力が上がっていたからのう。ぎりぎりで生き残っているかもの」

「そうか……」


 生きていればいずれまた会うことになるだろう。

 今回は勝ったが、次はどうなるかわからない。


「というか、よく神付きスキルを持ったフリードに勝てたわね。どうやったの? あの最後にぶん殴ったのって、あんたのスキルなの?」

「えっ? いやまあ……そうですね。俺のスキルです」

「へー。というかため口でいいわよ。約束だからね」

「は……え、ああ。そういう褒美がありまし……あったな。うん。じゃあ普通に話すよ。レーティ」

「う、うん」


 名前を呼ぶと、レーティはなぜかほんのり頬を染めた。


「それよりも姫様、国王様からの伝言をお伝えしなくては」

「へっ? あ、ああ。そうだったわね」

「国王様からも伝言?」

「ええ。なんかあんたが錯乱しているようだから、落ち着いたら玉座の間へ来るように伝えてくれって」

「玉座の間に?」

「決闘のことで話があるんじゃない?」


 まあそうだろう。


 立ち合いをしてもらい、俺の主張を肯定してもらった件でお礼を言わなければいけないだろうし、呼ばれなくても国王には会うつもりでいた。


 ――――――――――――


 お読みいただきありがとうございます。


 スキル『G』を使用して勝利を得たテンラー。しかしその後の記憶はやはり無い様子です。


 フォロー、☆をいただけたら嬉しいです。

 感想もお待ちしております。


 次回は国王からテンラーに役職が与えられます。

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