第20話 超レア武器を手に入れる

「メタルカイザーソードという剣です。こちらは珍しい魔物を素材に作られた切れ味抜群の剣でして、素晴らしく頑丈でもありますので研ぐ必要もありません」

「いや、こんな高価な剣はもらえませんよっ!」


 買えば……というか、売っているものでは無い。

 メタルカイザーソードは確か、ラストダンジョンで強力な中ボスが稀に落とすことでしか手に入らない、超レアな武器だったはず……。


「命を助けていただいたお礼と考えれば安いものです。それにあのとき皆さまに助けていただかなければ、これは盗賊の物になっていました。惜しくはありません。どうぞお受け取りくださいませ」

「う、うーん……」

「礼を拒否するのは失礼じゃぞ。もらっておくとよい」

「そ、そうか……。そうだな」


 それもそうかと、俺はメタルカイザーソードを受け取る。


「ありがとう。大切に使わせていただきます」

「いいえ。それでは私はこれで。しばらくはこの国に滞在しておりますので、なにかありましたら私、商人のカイレフを宿にお訪ねください」


 そう言ってカイレフは武器屋を出て行く。


 思わぬ形でとんでもない武器が手に入ってしまった。

 先のことはわからないが、当分は武器に困ることはなさそうである。


 ……フリードが『武神』のスキルを手に入れてからしばらく経つ。


 なにか仕掛けてくるかと思いきや、その様子は無い。あのときに奴が言っていた舞台というのは気になるものの、とりあえず襲って来ることはなさそうで、今は平穏に過ごしせていた。


「はあ……はあ……やるわね」


 相変わらず俺はレーティと実戦形式での修練に励む。

 最近は目が慣れてきたのか、動きもだいぶ見えるようになってきた。


「じゃあ……これはどうっ!」


 レーティがスキル『瞬』を使って消える。


「っ!?」


 瞬間、俺は上を見上げる。

 そこには剣を振り上げたレーティの姿があった。


 落下とともに剣は降り降りるものの、その刃は俺の横を通り過ぎる。


「はあ……完璧に反応したわね。たいしたものよ」


 初めは俺を殺すと息巻いていたレーティだが、この頃は俺を褒め称えるようになっていた。


「正直、見直したわ。あんたってただの下衆ゴミ野郎かと思ってたけど、根気はあるじゃない。わたくしが攻撃を当てられないのを知っていたとしても、動きに反応できるようになったのは見事だわ」

「えっ? そ、それをご存じだったのですか?」

「途中で気付いたのよ。たぶん、わたくしは血を見るのがこわいの。だから無意識に攻撃をはずしてしまう。こうして何度もはずせば気付くわ」


 ゲームでは確か、フリードから指摘されて気付いたのだったか。

 まさか自力で気付くとは思わなかった。


「あんたのこと見直した。いつか冒険へ出るときは、従者として連れて行ってあげてもいいわよ」

「姫様とですか? いやぁ……はは」

「なんでそんな嫌そうな顔をするのよっ! やっぱ殺すわあんたっ!」

「か、勘弁してください」


 頬を膨らませて剣を振り上げるレーティに対し、俺は苦笑いで許しを請うた。


 レーティとの修練を終えた俺は、アナテアとともに屋敷へ帰る。と、


「ん?」


 屋敷の前がなにやら騒がしい。

 大勢の人が門の前に群がっていた。


「なんじゃろうな?」

「さあ? おわっ!?」


 不意に腕を掴まれた俺は、路地へと引きづり込まれる。

 なにかと思い腕を掴んだ誰かを見ると、そこにはシュリアノがいた。


「なんだシュリアノか。どうしたんだ?」

「うん。とりあえず今は屋敷へ近づくな。まずいことになっている」

「まずいこと? って、どうしたんだ?」

「ああ。昼頃に町でフリードのレアスキル発現を祝う祭りが催されたんだが……」


 そういえば序盤にそんなイベントがあったか。

 確かそこでフリードは、魔王の復活を阻止するべく旅に出るとか宣言してたはず。


 しかし今の中身はハラボンだ。

 そんな立派なことは口にしないだろうが……。


「フリードがそこで、テンラーに魔王の魂が宿っていると言い放ったんだ」

「えっ?」

「それを知った民衆が祭りの終わりに屋敷へ詰めかけてな。テンラーを捕らえて始末すると騒いでいるのだ」


 ……なるほど。これが奴の言っていた舞台か。


 俺をとことん悪者にして始末する。

 たいした正義の主人公様だ。


「しかしずいぶん簡単にフリードの言葉を信じるんだな」

「神付きのスキルを発現した者は女神の寵愛を受けた英雄とされるからな。発言力が増すというものだ。加えて、元のテンラーの評判が悪いのもあるかもな」


 そんな設定だったか。

 ゲームをやっているときはなんとも思わなかったが、根拠も無く大勢を信じ込ませることができるのは脅威だと思う。


「だが。これはとんでもないことになったのう。まさかテンラーの身体に魔王の魂が宿っているなどと吹聴するとは」

「ああ。けど……」


 俺はアナテアを見る。


「アナテアに魔王の魂が宿っているとは言われなくてよかった」

「えっ?」

「かわいい女の子が攻められるのは辛いからな。俺が攻められるなら、俺が我慢をすればいいだけだ」

「テンラー……。すまんなわしのために。いや、わしのせいで……」

「今さら気にしちゃいないよ。しかしあいつが俺を殺すために動き出したとなると、これからは気が抜けないな」


 卑怯なことでも平気でしてくるだろう。

 しばらくは眠るときも警戒が必要そうだが……。


「いや、ちょっと待てよ」


 なにも向こうからの襲撃を待つ必要は無い。

 こちらから攻めて、優位な状況で戦うのが得策だ。


 しかし寝込みを襲うなどの卑怯な方法は、向こうのほうが上手だ。返り討ちに遭うかもしれないし、なにより成功しても俺は殺人犯として捕まってしまう。


 とはいえ、こっちが正々堂々と1対1の勝負を挑んだところで、どんな罠を仕掛けてくるかわかったものじゃない。


 なにか安全に、奴と1対1で戦える方法はないものか……。


「……そうだ」


 1つだけ方法がある。

 しかしうまくいくだろうか?


 ともかくやってみるかと、俺は考えを実行することにした。


 ――――――――――


 お読みいただきありがとうございます。


 超レア武器のメタルカイザーソードをゲット。               

 着々と対フリードの準備が整っていきますが、フリードのほうも動いてきましたね。悪のレッテルを貼られてしまったテンラーはフリードの思惑通り悪として討伐されてしまうのか……。


 フォロー、☆をいただけたら嬉しいです。

 感想もお待ちしております。


 次回はテンラーの思いついた方法が明らかに……。

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