とても読みやすく、また趣きのある怪異の短編集。最初に『鏡を使った咒』の話があるが、元来、鏡とは呪具であった。その名残が根底に流れている、そんな話の数々は、読む者を此岸に置きながら彼岸の情景を映し出してゆく。異界へと足を踏み入れるような緊張が、まるで鏡面の様に張り詰めている。怖くて不思議、そして何故だかとても懐かしい気持ちになる様な怪異譚の数々。一つ一つが薄暗闇に茫と光る。虚実は問わず。薄く隔たれた皮膜の、うちと外。
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